今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『大人のADHD(注意欠如多動性障害)を知ろう!』をご紹介させて頂きます。

過去に「落ち着きがない」「仕事が完成できない」と指摘されたことがある人は、次の「30秒チェック」をやってみてください。「まったくない」「時々」「頻繁」で付けてみてください。

①仕事や勉強をするとき、難しい壁は乗り越えることができたのに、仕上げが甘かったり、最後まで仕上げられなかったりする。

②事前に計画を立てる必要がある作業で、計画で決めた通りに作業することができない。

③約束や用事を忘れる。

④検討や準備に時間がかかる課題を避けたり、そのような課題に取り組むまでに時間がかかったりする。

⑤長時間座っていなければならないときに、手や足を動かしたり、体をもぞもぞさせたりする。

⑥突如、何かに駆り立てられるように活動的になったり、何かをしないではいられなくなったりする。
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大人にも増えている

これは世界保健機関(WHO)などが作成した「注意欠如多動性障害(ADHD)」を調べるものです。「頻繁」が4つ以上付くとADHDの疑いがあるので、近くの「精神科」「神経科」または「心療内科」を受診することが勧められています。また「時々」が多い人も念のためクリニックにかかるとよいかもしれません。
「不注意」や「多動性」や「衝動性」と聞くと「子供の問題?」と感じる人も多いと思いますが、最近では「大人のADHD」がクローズアップされています。

診断することが重要

この症状は「職場でうまく業績を上げられない人が実はADHDだった」という形で認知されるようになりました。「能力がないから仕事ができない」のではなく、「ADHDなので仕事ができない」ということが分かってきたのです。
ADHDと診断されれば、後はほかの病気とまったく同じです。すなわち「治療」をするのです。本人へのアプローチのほか、周囲の理解を深めたり、または薬物療法も効果的とされています。
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ADHDの症状

ADHDの特徴は「特に問題はないが、小さな問題を頻繁に起こす」ことです。大人のADHDは、職場の同僚や上司、または家族などが気付いてあげることもできます。落ち着かない、貧乏ゆすりが多いというのは、ADHDに最も特徴的な症状です。また、いわゆる「空気」が読めず、思ったことをすぐに言葉にしてしまう人や、衝動買いが止まらない人もADHDかもしれません。
また単純なミスや頻繁な物忘れによって仕事が中断してしまうような人が、周囲にいませんか。有能なのに、計画性がなかったり、時間の管理が下手だったり、段取りが付けられないことで、上司の評価が低い人も、ADHDの治療を受けることで改善することが期待できます。
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ADHDの原因

ADHDは「病気」や「障害」と同じなので、原因があります。「性格」や「やる気」の問題ではないのです。
脳には「注意すること」「したい行動を我慢すること」を調整する部分があります。それを「前頭前野(ぜんとうぜんや)」といい、文字通り脳の前方にあります。ADHDの人は、この前頭前野の働きが、小さすぎたり大きすぎたりしているのです。

また脳の神経伝達物質が影響していると指摘する医師もいます。神経伝達物質は2つの役割があります。脳の命令を臓器や器官に伝える仕事と、臓器や器官が仕入れた情報を脳に伝える仕事です。
ADHDの人に関係する神経伝達物質は、ドパミンとノルアドレナリンの2つです。ADHDの人はこの2つの神経伝達物質が不足しているのです。つまり「脳の命令が伝わりにくく」「脳に届く情報が足りない」状態になるため、ADHDに特有の症状が起きるのです。

ADHDの治療

現代の医学をもってしても、ADHDを完全に治すことはできません。しかし日常生活を困難にしている行動を取り除くことは期待できます。治療の目標は「自信を取り戻すこと」と「充実した社会生活を送ること」になります。
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周囲の協力を得よう

まずしなければならないことは、周囲の人の理解を得ることです。信頼できる人に、診断結果を伝えましょう。その際、診察のときに医師から聞いたアドバイスを、サポーターに話してください。
医師がADHDの人にするアドバイスは、次のようなものがあります。
・あなたが上司や先輩から仕事の指示を受ける立場であれば、その指示は「短く」「簡潔」なものにしてもらう。
・計算の仕事や大量の書類整理の仕事では、必ず補助者か、もしくはチェックする人を付けてもらう。ADHDの人は、スキルがないわけではなく、「最後の詰め」が苦手なだけです。

自分でできること

自分で取り組めることもあります。そのひとつが、イライラをきちんと把握することです。イライラするのはADHDがそうさせているのです。心が落ち着いていないときに仕事を継続しても、成果が上がらないどころか、失敗につながります。そこで「あ、私はいまイライラしている」と感じたら、1人になれる時間を作りましょう。

また、必要な道具の準備や書類の整理をしっかり行ってください。「直前になっての準備」はしないようにしてください。外出の直前や、仕事に着手する直前に準備をすると、症状の悪化を招きます。
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薬物療法

周囲との人間関係と、自身の生活習慣の見直しができたら、薬が処方されます。ADHDでは「アトモキセチン」と「メチルフェニデート」という薬が使われます。不足しがちなノルアドレナリンやドパミンを増やす効果が期待できます。

まとめ

ご自身で「私はADHDではなさそう」と思った方でも、この症状を学ぶことは意味があります。職場や学校で生じている人間関係のギクシャクが、解決できるかもしれないからです。
いわゆる「調和を乱す行動」をしている人を叱ったり、チームから外したりするのではなく、「ADHDかも?」と考えてサポートすることをお薦めします。
例えば風邪を引いた人を叱ったり、仲間外れにしたりしないですよね。ADHDも同じです。必要なのは医療とサポートなのです。

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