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配偶者を失うと、脳卒中になるリスクが26%高くなる?!

婚姻状況は、健康に影響を与える重要な要因の1つといわれています。既婚者が、非婚者とくらべて健康状態が良いことは以前から知られていることです。また、婚姻状況の変化は、循環器疾患の発症リスクを上昇させることも明らかになっています。

先ごろ、離婚や死別によって配偶者を失った人は、そうではない既婚者にくらべて、「脳卒中になるリスクが26%高くなる」という研究結果が紹介されました。

発表したのは、国立がん研究センターなどのグループです。
国立がん研究センターは、岩手・秋田・長野・茨城・新潟・高知・長崎・沖縄・宮古(沖縄)の9地域に住む、既婚者40~69歳(研究開始時)の男性2万4162人と、女性2万5626人を平均約15年間追跡しました。

調査の結果、婚姻状況の変化(既婚から非婚)と脳卒中発症との強い関連が示されたようです。「婚姻状況の変化は、生活習慣や精神状態の変化をつくり、発症リスクを高めているようだ」と研究ブループは分析しています。
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特に、脳出血のリスクで強い関連

脳卒中は1つの病気でありません。正式には「脳血管障害」と言う名前で呼ばれ、脳の血管が破れるか詰まるかして、脳に血液が届かなくなり、脳の神経細胞に障害がおこる病気です。血管が破れる「脳梗塞」と、血管が詰まる「脳出血」「くも膜下出血」に大きく分かれます。

男女合わせて約5万人を平均約15年間追跡するあいだに、2134人の脳卒中発症が確認されています。そして、離婚や死別によって配偶者を失った人ほど、脳卒中を発症するリスクが高い傾向が確認されました。

婚姻状況が変わらない人を1とした場合、離婚や死別によって配偶者を失った人が脳卒中を発症するリスクは、男女ともに1.26倍と高い結果です。特に、脳出血のリスクで強い関連がみられています。
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なぜ、脳卒中リスクを上昇させるのか?

調査では、配偶者を失うと(1)飲酒量が増える(2)野菜や果物の摂取が減る、など生活の変化が報告されています。また、心理的ストレスが高まり「生活を楽しめなくなっている」と答える人も多くいるようです。

いずれも、生活習慣や精神状態の急な変化が、脳卒中の発症リスクを上昇させると考えられています。
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子供と同居」「親と同居」も影響あり!

さらに研究チームが、配偶者を失った人の「子供と同居している/していない」を確認したところ、同居している人は、していない人にくらべ、脳卒中になるリスクが、男性で44%、女性で45%高くなっています。親の役目が、配偶者を失った影響をより重くしている可能性が考えられています。

また「親と同居している/していない」を見てみると、違う傾向があらわれています。男性の場合、配偶者を失うことによる脳卒中の発症リスクへの影響は、親と同居していることにより軽減されます。一方、女性はその影響が約33%増しているのです。
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経済的な状況の変化もリスク高

「就労している/していない」の違いを見ると、無職の女性の脳卒中の発症リスクは「高い」という研究結果が発表されています。特に婚姻変化(離婚・死別)を経験した無職の女性の発症リスクは、婚姻変化のない有職の女性の約3倍であることが分かりました。

女性のなかには、配偶者を失ったことで経済的に苦しい状況になることが本人の健康にも影響しているのではないかと考えられます。

今後、さらなる高齢化社会にむけて、脳卒中の発症予防は社会全体の大事なテーマの1つといえるでしょう。配偶者を失くした人の「生活習慣の変化」や「精神的ストレスの蓄積」を十分気にしながら、周囲や医療機関が積極的に支援する姿勢が望まれます。そのことを、国立がん研究センターの調査は明確に示しています。

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