今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『親の大腸がん歴について』をご紹介させて頂きます。
大腸がんには、「これをやれば発症リスクが下がる」予防法があります。それは、
・肉を多く食べ過ぎない
・野菜をたくさん食べる
・アルコールを飲み過ぎない
・禁煙する
・運動をする
・肥満を解消する
の6項目です。これらはいずれも、その効果が医学的に証明されているのです。

がん

しかし残念ながら、これらを徹底しても、大腸がんを防げない人がいます。それは「大腸がんの遺伝を引き継いだ人」です。医師や病院などが行う大腸がんの予防啓発では、「親や親族に大腸がんになった人がいないかどうか確かめましょう」と呼びかけています。これは、大腸がんが遺伝によって発症する可能性があることが証明されているからなのです。

APC遺伝子とは

人の遺伝子には、大腸がんの発症を抑制する「APC遺伝子」があります。しかしある人は、このAPC遺伝子が変異してしまい、がんの発症が抑制されなくなっています。そのため、大腸に無数のポリープができることがあるのです。
この病気を「家族性腺腫性ポリポーシス」といいます。

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「家族性」とは、「遺伝する可能性がある」という意味です。「腺腫」とは「ポリープ」のことです。「ポリポーシス」とは「100個以上から数万個のポリープができている状態」を意味します。
ポリポーシスを発症した大腸を内視鏡で見ると、「無数のイクラが大腸の内面に張り付いている」ような状況になっています。

怖いポリープ

一般的にポリープというと、「恐くないもの」と「恐いもの」に分類されます。大腸の内視鏡検査をして、数個のポリープが見つかっても、検査の結果、医師から「良性のポリープなので、わざわざ切除はしなくてよいでしょう」と言われることがあります。これは「がん化しないポリープ」=「恐くないポリープ」ということです。

しかし、「家族性腺腫性ポリポーシス」のポリープは、「かなり恐いポリープ」といわれています。それは、これを発症した人のうち、40歳代までに大腸がんを発症する率は50%、そして、生涯を通じての大腸がん発症率はほぼ100%だからです。

ほぼ100%の確率で大腸がんになるので、もしこの病気が見つかったら、30歳までに手術をして、大腸をすべて取り除きます。
20~30代で発見される方が多いそうです。「家族性腺腫性ポリポーシスである」という確定診断を下すためには、内視鏡検査による大量のポリープの発見に加え、遺伝子検査を行います。つまりAPC遺伝子に異変がないかどうか調べるのです。

禁煙

さらに残酷なことに、「家族性腺腫性ポリポーシス」が見つかり、大腸がんを全摘出したとしても、その後に胃がんなどを発症する可能性が残るということです。

さて、ここで冒頭の話に戻ります。「親や親族に、大腸がんの患者がいないかどうか、把握しておきましょう」という警告の意味は、このAPC遺伝子の検査をしましょう、ということです。子供でもこの検査を受けることができます。
「ほぼ100%大腸がんになる」ということは、死を意味するわけではありません。早めに治療に着手することが大切なのです。

遺伝子検査といった「遺伝に関わること」は、倫理の問題になりやすいのですが、この病気に関しては、純粋に医療の検討が必要です。
家族性腺腫性ポリポーシスは、下血や下痢、腹痛という症状が出ます。「下血・下痢・腹痛+家族に大腸がん歴あり」の方は、少なくとも大腸内視鏡の検査を、できればAPC遺伝子検査をしておいた方がいいでしょう。

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