本記事の監修医師

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篠原クリニック
篠原 隆雄 院長先生

【クリニック所在地】
〒140-0004 東京都品川区南品川3-6-36 南品川フラッツ101
※青物横丁駅近く
Tel.03-5919-4976
 
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今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『ヒートショック』をご紹介させて頂きます。

ヒートショックとは、急激な温度変化が体に悪影響を与えることを意味します。例えば暖かい居間から、寒い浴室やトイレに行くと急激に体温が変化し、血圧が上昇します。入浴の場合には、熱い湯船につかることによって今度は血管が拡張し、血圧が下がります。トイレは、寒いトイレでお尻を出して用を足すと血圧が寒さで上昇し、排便などで息むとさらに血圧が上がります。このような急激な血圧の変化は、失神や心筋梗塞、脳梗塞を起こす可能性があり、命に関わる危険性があります。特に高齢者では入浴中の溺死が多く、ヒートショックによるものと考えられており消費者庁も注意喚起を促しています。またヒートショックによる死亡者数は年間1万人以上で、この数は交通事故による死亡者数の2倍となっています。つまりヒートショックに対する理解を深め、対策をすることで防げる病気、死亡があるということです。今回はヒートショックの説明と予防法についてまとめます。

ヒートショック

ヒートショックとは

ヒートショックは家庭内の急激な温度差による身体への悪影響のことで、入浴中の高齢者の死亡原因の1つと言われています。実際に家庭内で高齢者が死亡する原因の4分の1を占めることがわかっていますが、病死と判断されていることもあるため実際にはもっと多いと考えられます。
日本の人口動態統計による分析では、家庭内の浴槽での溺死者数は10年間で約7割増加し、平成26年には4866人でした。このうち90%以上は65歳以上の高齢者ですが、残りの10%は65歳未満の若い人です。消費者庁が行った55歳以上の消費者を対象にしたアンケートでは、持病がない元気な人でも入浴事故が起こることを知っている人は34%で、十分に周知されていないことがわかっています。
急激に温度が下がると体は皮膚の下にある血管を収縮させ、熱が体の外に放出されないように調整します。この体の反応により血管が収縮し、血液の流れが悪くなり血管の壁に圧力がかかります。動脈硬化の進行している高齢者では、血管の壁に強い圧力がかかることで高血圧になり脳出血や脳梗塞心筋梗塞を起こします。また、血圧が上昇した後に長時間熱い湯船につかることで今度は血管が拡張して血圧が低下すると脳への血流も低下し、意識を失い失神を起こします。このようになると風呂で意識を失い、知らないうちに溺れて命を失う可能性があります。浴槽での溺死が欧米に比べて多い理由の1つに日本人の熱いお湯に首まで長くつかる入浴文化があると指摘されています。

ヒートショック

ヒートショックによる死亡を防ぐには

はどのような人や環境にいる人が特にヒートショックに気を付けた方が良いのでしょうか。具体的には、65歳以上、糖尿病や高血圧などの持病がある方、肥満やメタボリックシンドロームの方、狭心症心筋梗塞脳出血脳梗塞の既往のある方、不整脈がある方、一番風呂または深夜に入浴する方、飲酒後や食直後、薬を内服直後の入浴、熱いお風呂(42℃以上)に首までつかり長湯する習慣がある方、自宅の浴室や脱衣所に暖房設備がなく20℃未満になる、浴室がタイル張りで窓がある、居間と浴室、トイレなどが離れている家などがヒートショックを起こす危険因子として挙げられます。当てはまるものが多い人ほど要注意です。次に、どのようにすればヒートショックを防ぐことができるか具体的な方法についてまとめます。
ヒートショックは温度差が大きいほど起こる確率が高く、10度以上の気温差が良くないと言われています。そのためには浴室やトイレを暖めたり、湯船の温度を高くしすぎない方が良いです。

【対策法】
ー入浴時での対策法ー
①入浴前に脱衣所や浴室を暖める
②湯温は41℃以下、つかる時間は10分までを目安にする
③首までつからずに、半身浴にする
④深夜の入浴を避ける
⑤浴槽から急に立ち上がらない
⑥アルコールが抜けるまで、また食直後の入浴は避ける
⑦入浴する前に同居者に一声かけておく
⑧服を着たまま風呂のふたを開けて、洗い場にお湯を撒いて風呂場を温める。
⑨入浴前後はカフェインレスの水分を取るようにする
⑩飲酒後の入浴は出来るだけ避ける。

ートイレでの対策法時ー
①トイレに暖房器具があれば、暖房器具を付けて、温まったところで用を足す。

これらの予防法は、温度差が10度以上にならないようにする、血圧の急上昇・低下を防ぐ、何かあった時にすぐに気付いてもらう方法です。半身浴にすると肩が冷えるかもしれないので、温かいタオルをかけるなど工夫してみましょう。

【参考】
「厚生労働省 人口動態調査」
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001137964

「消費者庁 News Release」
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/160120kouhyou_2.pdf