今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『骨盤のゆがみ』をご紹介させて頂きます。
女性に質問です。あなたの骨盤は、ゆがんでいますか?
こう聞かれて、思わず腰に手がいってしまった方、ご注意ください。でも、注意するのは「骨盤のゆがみ」ではありません。「骨盤心配症」です。
というのも、「骨盤矯正」「骨盤エクササイズ」「骨盤ダイエット」…ネットには「コツバン」があふれています。そのどれもが、「骨盤の異変は、女性に多いです」と警告しています。それで、現代の女性は「コツバン」に敏感になりすぎてしまい、不要な「心配症」に悩まされているのです。
人の体は、完全な左右対称にはなっていません。どの体の部位にも、少なからずゆがみがあり、その大半は心配の要らないものです。骨盤のゆがみも、同じことがいえます。いたずらに骨盤のゆがみを心配させるような情報は、「骨盤ビジネス」と呼ばれているくらいです。

骨盤のゆがみ

しかし、本当に骨盤のゆがみに悩まされている人はいます。つまり、骨盤の悩みを解消するには、正しい治療を選択する必要があります。そのために「骨盤」と「ゆがみ」について正しい知識を身に付けてください。

整形外科? 整体院?

まず知っておいてほしいことは、骨盤のゆがみを治す場所は、2つあるということです。ひとつは整形外科医がいる医療機関です。もうひとつは整体院などの非医療機関です。骨盤のゆがみの治療は、緊急性が低いため、非医療機関でも多く扱っています。それぞれ一長一短があります。

整形外科のメリットは、なんといっても、レントゲン検査が受けられることです。骨盤は「見ること」ができません。ゆがみも、体の外からは目視できません。そこで「透視」ができるレントゲン検査が威力を発揮するのです。
非医療機関にはレントゲン検査の装置がありませんので、整形外科は、診断において圧倒的なアドバンテージがあるといえます。

整形外科のデメリットは、診断を行う人と、実際の施術を行う人が、別の人という点でしょう。「骨盤のゆがみ」でとどまっている場合、手術などの大きな治療はしませんので、実際の施術は理学療法士や作業療法士といったリハビリの先生が行います。

もちろん、理学療法士たちはその道のプロですので、施術のレベルの話ではありません。ここでいうデメリットとは、苦痛を早く除去してほしい患者が、「医師の診断→レントゲン検査→リハビリ室の理学療法士」という3ステップを踏まないとならない、ということです。

これを解消するのが、整体院などの非医療機関です。「骨盤のゆがみ」の矯正はお手の物ですから、すぐに施術に入ってくれます。また、「骨盤のゆがみ」は、整形外科分野では「深刻な病気」の部類に入りませんが、整骨院では「メーンの患者さん」になります。

しかし、非医療機関は「玉石混交」という大きなデメリットがあります。治療成績が良い整体院は確かに存在します。しかし、ホームページを見ると、派手なデザインだったり、「すぐに痛みがなくなった」という大げさな体験談が掲載されていたりして「?」が付きます。それは、非医療機関は、行政の監視の目が緩いからです。

骨盤のゆがみ

医療機関の理学療法士の中には、整体院の治療法を疑問視する人もいて「骨盤のゆがみは、手で触れただけでは分かりません。レントゲンで確認もしていないのに、よくそんなことが言えるなと思っています」と言います。

骨盤のゆがみの症状

次に、骨盤のゆがみの症状をみてみましょう。
痛みは「仙骨」周辺で起きることが多いです。仙骨は、正確には「腰椎の先の骨」と表現されますが、それより「背骨をずーっと下までたどっていってたどり着いた一番下の逆三角形の骨」といった方が分かりやすいのではないでしょうか。

仙骨の軽い痛みを放置すると、腰痛やしびれに進んでしまいます。それでも治療に取り掛からないと「一生もの」になってしまうことがあります。猫背がひどくなったり、O脚になったりします。その状態になると元に戻すことは大変です。治療は長期化し、リハビリも楽なメニューではなくなります。お尻の肉が垂れたり、太ももがぶよぶよしたりといった、美容上の問題も生じます。

ゆがみの3タイプあります。
①「反る」タイプです。立ち上がってみて、わざと猫背を作ってみてください。お尻がポコッと出ると思います。それを俗に「出っ尻(でっちり)」といいます。下腹部が出ることもあります。骨盤がゆがむと、自然とこの体勢になってしまうのです。

②「左右に開く」タイプです。いわゆる「骨盤が開いた」状態です。筋肉が低下したことが原因で開いてしまうため、このことを「骨盤がゆるむ」と表現することがあります。お尻が大きく、しかも、四角くなります。O脚を引き起こすのもこのタイプです。

骨盤のゆがみ

③「上下のずれ」です。腰のくびれの高さが、左右で違ってきます。これも「ゆるみ」の一種です。片方のお尻の筋肉が弱まり、垂れるのでくびれも下に落ちるのです。筋肉の落ち込みに、骨盤が引っ張られて生じます。

骨盤のゆがみの原因

それでは、なぜ骨盤はゆがむのでしょうか。最も大きな原因は、出産です。ほかには、事故で腰をぶつけたり、長年の悪い姿勢があります。つまり、瞬間的か長期的かの違いはありますが、不自然な強い力が加わったときに、ゆがんでしまうのです。

「強い力が加われば、骨盤に限らず、ゆがむのは当然だろう」と思われるでしょうか。しかしそこには、「骨盤ならでは事情」があります。骨盤はいくつかの骨で構成されていて、そのうち「ゆがみ」に大きく関係するのは、「仙骨」と「腸骨」です。
「仙骨」は「背骨の一番下の逆三角形をした骨」です。「腸骨」は、「仙骨」を中心に、左右に広がっている広い骨です。「両手を腰に当てて」と言われて取るポーズで、手が当たっているのが腸骨です。

仙骨と腸骨は、チョウチョのような形をしています。仙骨が胴体で、腸骨が左右の羽です。そして、仙骨も腸骨も、大きく頑丈な骨です。それはそうですよね。上半身と下半身をつなぐ「連結部の骨」なのですから。

骨盤のゆがみ

しかし、この「大きく頑丈な」仙骨と腸骨をつなぐのは、仙腸関節という小さな関節なのです。あとは、筋肉と靭帯という、骨と比べると軟らかい素材のモノが支えているだけです。なので、「強い力」が加わると、簡単にゆがみが生じてしまうのです。
しかしこの性質は、ある意味やむをえないかもしれません。人が座ったり、立ったり、体をひねったり、よじったりできるのは、骨盤に柔軟性があるからです。仙腸関節がガッチリ固定されていたら、「人が動く」という行為はもっと大変になってしまうでしょう。

自宅でできる骨盤体操

それでは最後に、症状が軽い人向けに、自宅で簡単にできる骨盤矯正の方法を紹介します。

<猫と犬の姿勢>
床に膝と手の平をついて、四つん這いの状態になります。その状態から、背中を持ち上げて、「猫の伸び」のスタイルを取ります。イメージとしては、腰に巻いたベルトにロープを縛り、天井に向かって引っ張る感じです。
次に「犬の伸び」です。やはり四つん這いの状態から、お尻を突き上げるポーズです。それにともない、お腹が床に近付き、腕はピンと伸びます。
猫の状態で30秒、犬の状態で30秒を1セットとして、1日3セットをめどに行ってください。

<椅子体操>
椅子に座り、両手を腰に当てます。その状態から「へそ」を前後に動かします。それだけです。
気を付けていただきたいのは、「骨盤をクイックイッ」とやることです。骨盤が動いていることを、両手で確認しながらやってください。上半身を前に倒したり、後ろに倒したりするだけでは、骨盤を鍛えられません。

●まとめ
骨盤のゆがみは、のちのちきいてきます。50代、60代になってから鍛え直すことは、大きな苦労を伴います。異変を感じたら、まずは早めに整形外科にかかりましょう。その上で、医療機関でリハビリをするのか、整体院などで施術を受けるのか決めた方がよいでしょう。医師や理学療法士、整骨院のアドバイスをしっかりきいて、予防につとめてください。

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