診療時間外

医療法人社団 慶響会
東京ボイスクリニック品川耳鼻いんこう科

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病院紹介

耳鼻咽喉科部門

1.耳疾患
外耳炎、急性中耳炎、慢性中耳炎、小児急性中耳炎、小児滲出性中耳炎、めまい、耳鳴り、難聴など。

2.鼻・副鼻腔疾患
花粉症、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、鼻出血、嗅覚障害など。

3.のどの疾患
かぜ、扁桃肥大、扁桃炎、咽頭炎、喉頭炎、気管支炎、咽喉頭異常感、頸部腫瘤、胃食道逆流症など。

4.その他
補聴器フィッティングなど。
 
ボイスクリニック部門

声嗄れ(こえがれ)、声のかすれや、発声時・歌唱時ののどの違和感、のどの不快感などの「声の悩み、のどの悩み」の診断と治療を専門に行うのがボイスクリニックです。
声嗄れ、のどの違和感の原因疾患が声帯癌や咽頭癌の場合もあれば、ネブライザー吸入や耳鼻いんこう科的処置といった短期間の外来通院加療で治る炎症性の疾患の場合もあります。


1.検診
1) voice userの喉頭検診
歌手、俳優、アナウンサーなどのvoice userの声帯病変の有無につき喉頭内視鏡、音声検査、音響分析などを使用し、検診を行います。また、言語聴覚士による病的な声の使用の有無などに関しても併せて検診し、声の衛生指導に繋げます。

2) 喉頭がん検診
音声障害の原因の一つである喉頭がんは早期発見ではほぼ100%の治癒率ですが、進行性の場合は喉頭全摘出術となり、喉頭機能の完全喪失となってしまいます。検診のもつ意義は極めて大きいものとなっています。発声機能温存のためには喉頭がんの早期発見が極めて重要です。

2.音声障害に関する診断と治療
1) Voice userの音声障害に対する治療
ⅰ)喉頭ストロボスコピーによる声帯病変の診断
ⅱ)医学的な声の衛生指導(言語聴覚士):声帯病変の治療および予防
ⅲ)保存的治療:内服治療、吸入治療、音声治療(言語聴覚士による発声法の治療)
ⅳ)音声外科的治療(声の改善手術):ラリンゴマイクロサージェリー

2) 当クリニックのラリンゴマイクロサージェリーの特徴
保存的治療に反応不良な声帯結節や、声帯ポリープ、声帯嚢胞などに対して全身麻酔による声帯手術であるラリンゴマイクロサージェリーを行っています。
慶應大学病院のサテライトクリニックである日吉メディカルクリニックとの医療連携により、通常数日から1週間の入院が必要であるラリンゴマイクロサージェリーを日帰り手術(デイサージェリー)で行っています。現在首都圏で日帰りのラリンゴマイクロサージェリーに対応しているのは当クリニックのみであり、時間的、経済的な負担を軽減した上で、責任をもった一貫治療を行っています。

3) 声帯内ヒアルロン酸注入術
エイジングに伴う声帯萎縮症等に対し日本で初めて声帯内ヒアルロン酸注入術を施行致しました。
 
3. 音声障害に関する研究
音声認証、分析、合成などを行う株式会社【アニモ】(富士通ベンチャー企業)との共同研究を行っています。
 
主な医療設備

デジタル喉頭ストロボ(永島医科:LS-H10)
デジタル制御・高輝度LED採用の最新ストロボスコープにより、声帯振動をスローモーション画像で観察し、特に職業歌手の様々な発声モードによる微小病変を検出します。
ビデオプロセッサ(PENTAX Medical: EPK-i7010)
ビデオプロセッサから供給される光の帯域を制限することにより、粘膜表面の血管や構造の視認性が向上し、通常光では見つからない微小浸潤癌の診断に役立てます。
鼻咽喉電子スコープ(PENTAX Medical: VNL11-J10)
ø3.5mmの汎用内視鏡では圧倒的な高画質を実現しています。
鼻咽喉電子スコープ(PENTAX Medical: VNL8-J10)
ø2.4mmの細径内視鏡で乳幼児の鼻咽喉の観察も安全に行います。
処置用鼻咽喉電子スコープ(PENTAX Medical: VNL15-J10T)
φ4.8㎜の内視鏡にφ2.0㎜のチャンネルを装備し,異物摘出術や生検などの手術を行います。
デジタルカメラヘッド(PENTAX MEDICAL: PVK-J10)
新たに開発された光学ズーム機能により硬性鏡画像データも画質劣化のないデジタル化が実現しました。
発声機能検査装置(永島医科:PS-3000)
声の高さ、強さ、効率などを計測します。
音響分析装置(ペンタックス:コンピュータスピーチラボCSL4500)
音声をデジタル信号処理することにより診断と治療評価に役立てます。
言語聴覚室
専用の施設で音声の検査や訓練を行います。
聴力検査装置(リオン:AT-64A)
外部の音を入れない遮音室をつくります。
インピーダンスオージオメーター(リオン:RS-22)
鼓膜や中耳腔の状態を調べる検査です。
 
主な紹介先医療機関

慶應義塾大学病院
防衛医科大学校病院
国際医療福祉大学三田病院
国際医療福祉大学東京ボイスセンター
日本大学病院
日本大学医学部附属板橋病院
東邦大学医療センター大森病院
東京慈恵会医大附属病院
昭和大学病院
昭和大学歯科病院
北里大学病院
北里大学北里研究所病院
NTT東日本関東病院
東京都済生会中央病院
聖母病院
山王病院
松脇クリニック品川
ほか
 
声について
  
声が出る仕組み

喉仏の中に2枚の声帯という弦楽器の弦に相当する部分があり、吸気(息を吸う)時には声帯が開き、声を出すときには声帯が閉じ、呼気(吐く息)の力で声帯を振動させることで喉頭原音(声のもと)が作られます。
喉頭原音は声帯から唇までの声道(声の通り道)の共鳴により修飾され、声が産生されます。
一人一人の声に特徴があるのは声道の共鳴の違いによるもので、親子の声が似ている事も顔や体のつくりが似ていることと同様に声道の共鳴が似ているためと考えられています。



 
声帯の層構造

 
声帯は内側に筋肉(声帯筋)があり、外側を粘膜(声帯粘膜)で覆っています。
またその声帯を周囲の筋肉(喉頭筋)が前、横、後ろ、斜めに引っ張ったり弛ませたりすることで振動部分である声帯粘膜の長さや緊張度、太さを微妙に調節しさまざまな声を出します。
ボディー(内側の筋層)とカバー(外側の粘膜層)の二層構造の物理的性質が喉頭筋の働きにより変化し、さまざまな振動モードを生じることから本理論をボディーカバーセオリーといいます。
 
声の高さの調節

喉頭筋のうち前方にある前筋が声帯を前後に引っ張ることでカバー(粘膜層)は緊張し声が高くなります。
一方、ボディー(声帯筋)はこれに拮抗する働きで、収縮するとカバーは弛みます。声の高さはこのように前筋と声帯筋の2つの筋肉の微妙な力関係で調節されています。
また、声帯は前端と後端で付着する軟骨が異なります。
前方に湾曲した頚椎(首の骨)に沿って喉頭が下降すると後端が先に前に倒れることで声帯は大きく弛みます。
このことは声を低くすることに有効に働くと考えられています。


 
声の大きさの調節

声の大きさは声門下圧(声帯を振動させようとする力)に比例します。声門下圧は呼気流率を大きくする(たくさん息を吐く)または、声門抵抗を上げる(両側の声帯を強く締める)ことで大きくなります。 一般的に声の大きさの調節は地声では声門抵抗により、裏声では呼気流率により行われています(次項参照)。
 
声の音色の調節

声の音色は声帯の状態だけではなく声道の状態で修飾されます。カゼをひいた時は共鳴腔のむくみなどの影響で鼻声やこもった声になります。
声帯での調節には主として地声と裏声があります。地声では声帯筋の働きで振動部分が厚く大きくなり、倍音に富んだ音となります。

倍音とはある基本音の整数倍の周波数成分をいいます。全ての楽器に様々の倍音が含まれ、倍音の混ざる比率で音色が決まります。倍音を持たない音を純音といいます。
裏声では声帯筋がほとんど活動しなくなり、前筋によってカバーは薄く伸び、倍音の乏しい純音に近い音色に変わります。
いわゆるミックスボイスは地声と裏声を技術的に融合させる発声法ですが裏声発声で共鳴をより強くさせることで音色を変える技術もあるようです。
 
声枯れの原因となる病気

呼気(吐く息)の力で声帯を振動させることで喉頭原音(声のもと)が作られ、喉頭原音が声帯から唇までの声道(声の通り道)の共鳴により修飾され、声が産生されます。
この仕組みのいずれかに支障をきたすと声がれ、声のかすれや声が出ない、声が出にくい、あるいは発声中、歌唱中ののどの違和感や痛みといった音声障害(声の病気)が発症します。
上咽頭炎​

<参照ページ>
「慢性上咽頭炎とBスポット療法,EAT(イート:上咽頭擦過療法)について」もご参照ください)
上咽頭は上の図の赤く囲んだ部分で鼻の後方に位置し,微生物や有害物質の侵入を防御する部位のひとつです。急性上咽頭炎は感冒などの上気道炎や咽喉頭炎に急性炎症として合併し、局所の疼痛や灼熱感として自覚しますが、慢性化すると長期にわたる咳嗽や咽喉頭異常感などいわゆる不定愁訴の原因となります。
 
当院ではこの疾患について、多くの症例の診療にあたっており、院長は上咽頭炎による嗄声(声がれ),発声困難(声が出しにくい)、共鳴障害(声が響かない)、のどの異常感,痰がからむ、声が続かない、声が裏返る、咽頭痛、咽頭乾燥感、咳、音程不安定といった症状に対し【Bスポット療法】(上咽頭擦過療法(Epipharyngeal Abrasive Therapy; 【EAT; イート】)を施行し、78%の改善率を示したことを原著論文で報告しました(音声言語医学,58(4):333-338, 2017)。
 
上咽頭炎は自律神経機能との関連性を有すると考えられています。自律神経とは心臓、胃腸、体温調節など本人の意思と無関係に生命活動を支える神経系をいいます。
上咽頭炎による音声障害の病態は自律神経障害による喉頭潤滑障害(粘液分泌低下により高速振動する声帯が潤っていない状態)と上咽頭そのものの腫れや粘度の高い分泌物の付着による共鳴障害と考察しています。
 
声帯は潤いが不足し乾燥すると、硬くなります。発声に力が必要となり、発声困難感を感じます。弱い声は出せなくなります。地声と裏声を融合させた中声区では地声要素の上限が低下すると裏返りやすくなります。また、高さの調節は声帯の伸縮で行うため音程が不安定となります。それらの症状は長く話したり、歌ったりすることで声帯の乾燥が進行し、より一層悪化します。
また、声帯の乾燥は緊張やストレスで悪化し、飲水やリラックスで改善します。会話や歌唱では口呼吸となるためその場の湿度が影響します。よって声はこれらの条件が重なり合い、大きく変動します。
上咽頭の共鳴の障害では響の悪いこもった声、声が届きにくい、聞き返されるといった症状が多く認められます。
本疾患が疑われる症例は日常診療の上で最も多く、当クリニックでは診療上重視している疾患です。思い当たる症状のある方はご相談ください。
 
声帯ポリープ

声帯に生じる炎症性の腫瘤(こぶ)で、通常片側に発生します。
一過性の声の乱用が原因で、急激な発声が誘因となり、声帯粘膜の血管が破れて血液が流出し固まり、ポリープを形成するという説が有力とされます。

自然治癒の場合もありますが、改善しない場合はラリンゴマイクロサージェリー(喉頭顕微鏡下手術)となります。
当院では慶応大学日吉キャンパスにある【日吉メディカルクリニック】 でラリンゴマイクロサージェリーをうけていただきます。
日帰り手術ですので時間的、経済的な負担が軽減されます。術後の経過観察まで責任を持って一貫治療を行っています。

 
声帯結節

声帯に生じる炎症性の腫瘤(こぶ)で、通常は両側に発生します。
発声時の声帯粘膜の慢性的な機械的摩擦による粘膜上皮の肥厚と直下の炎症性浮腫(むくみ)で“ペンだこ”に例えられます。

音声を日常的に酷使している職業、すなわち歌手、教師、アナウンサーなどに好発し、女性に多く、子どもの場合は、よく声を使う活発な低学年の児童に好発し、男子に多くみられます。
保存的な治療で改善しない場合はラリンゴマイクロサージェリーが行われます。
院長は声帯結節に対する各治療法の有効性の比較を原著論文で報告しています(音声言語医学49(3):149-154,2008)。
声帯嚢胞

声帯にできる嚢胞(袋状の病変)です。
組織学的には類表皮嚢胞(上皮が迷入したもの)と貯留嚢胞(喉頭腺の粘液が貯留したもの)に分類されます。
院長は声帯嚢胞と音声酷使との関連性と組織学的分類による臨床像の相違を原著論文で報告しています(音声言語医学51(4):311-317,2010)。
自然治癒の場合もありますが、通常ラリンゴマイクロサージェリーが必要です。

 
喉頭がん

喉頭に発生するがんで、飲酒や喫煙が喉頭癌の発生と密接に関連しています。
初期の癌では内視鏡手術や放射線療法を行いますが、進行癌では外切開による手術療法を行います。
全摘出術を行うと一生自分の声を失うことになりますので早期診断が極めて重要です。
すみやかに適切な施設をご紹介いたします。

 
反回神経麻痺

声帯を動かす神経が何らかの原因で麻痺した状態で、発声時に2本の声帯が真ん中であわさらず呼気が漏れて十分な振動が起きないため声がれがおこります。
物を飲み込む時には誤嚥の可能性があり、両側が麻痺すると呼吸困難が出現します。
反回神経は大脳より発し、心臓レベルまで下降し、食道・気管周囲を上行し喉頭に入ります。

よって原因疾患として脳腫瘍、甲状腺癌、食道癌、気管癌、肺癌、大動脈瘤など重篤な疾患による場合があり、原因疾患の検索と治療を優先し適切な施設をご紹介いたします。
当クリニックでは反回神経麻痺症例に対し外来で受けていただける声帯内ヒアルロン酸注入術を施行しています。
この手術は院長が本邦で初めて施行した術式で、原著論文で報告しています(喉頭,20(2):133-137,2008)。
入院による外切開手術が必要な場合は適切な施設をご紹介いたします。


 
声帯萎縮

声帯が萎縮して容積が減少し、発声時に2本の声帯間に隙間が残り、吐く息が漏れて十分な振動が起きないため声がれがおこります。特に男性の高齢化で起きやすいとされています。
当院では本疾患に対し外来で受けていただける声帯内ヒアルロン酸注入術を施行しています。


 
声の老化

声の生成に関連する呼気(吐く息)、声帯、声道(声帯から唇まで)全てにおいて加齢変化がおきます。
呼気は呼吸筋力、肺組織の弾性収縮力の低下により弱まり、発声持続時間や声の大きさに影響します。
声帯は男性では萎縮し細くなり、女性では浮腫(むくみ)により太くなります。
男性は男性ホルモン、女性は女性ホルモンの低下によるもので、男性の声は高く、女性の声は低くなることが多いとされます。
声帯を潤す粘液の分泌は低下し声帯振動に影響します。
声道に関連する口の開閉、舌、唇の動きの衰えにより言葉の不明瞭化、歯切れのよさの低下などがおきます。
全ての運動系のトレーニングと同様に普段から会話し歌うことがこれらの防止につながることが証明されています。
当クリニックでは言語聴覚士による声の衛生指導や発声訓練を行います。
声帯萎縮による改善不良の場合は声帯内ヒアルロン酸注入術を施行しています。
 
慢性上咽頭炎とBスポット療法,上咽頭擦過療法(EAT;イート)について 

<参照ページ>
声がれの原因となる病気「上咽頭炎」のページもご参照ください
慢性上咽頭炎は定義が定まっていない疾患であり、その病態に関してはいまだに仮説の域を出ない側面もあります。
ここでは現在推察されている慢性上咽頭炎とその関連疾患について概説します。
 
上咽頭炎とは


上咽頭は上の図の赤く囲んだ部分で鼻の後方に位置します。鼻から吸った空気が下方に向きを変える部位であり、外界から侵入する細菌やウイルスなどの病原体や有害物質に常時暴露されています。
その防御のため上咽頭はリンパ球が表面に露出しており、常に免疫系の細胞が活性化している特殊な部位であるといえます。
 
何らかの原因で上咽頭に炎症が起こった状態が上咽頭炎です。急性上咽頭炎と慢性上咽頭炎があり、急性上咽頭炎はいわゆるカゼの一症状です。慢性上咽頭炎とは、上咽頭炎が長引いたり、良くなったり悪くなったりを繰り返す場合を指します。
 
慢性上咽頭炎の臨床症状 

上咽頭炎に関与しうる症状と疾患は以下の3つに大別されます。
 
1.上咽頭の局所の炎症そのものによる症状
のどの痛み、違和感、乾燥感、つまった感じ、鼻の奥の違和感・乾燥感、後鼻漏(粘っこいものが鼻とのどの間にはり付く、鼻がのどに下りる)、痰がからみやすい、咳払いが多い、鼻の奥がにおう,、耳閉感など。

2.自律神経に関連した症状と疾患
頭痛、全身倦怠感、めまい、睡眠障害、起立性調節障害、慢性疲労症候群、線維筋痛症、機能性胃腸症、過敏性腸症候群、記憶力・集中力の低下など。

自律神経とは心臓、胃腸、体温調節など本人の意思と無関係に生命活動を支える神経系をいいます。
上咽頭の知覚神経は自律神経中枢と関連があるため、慢性炎症が自律神経を介して多彩な症状を誘発する可能性を示唆しています。
また、脳の水分調節、浄化、形状維持を行う脳脊髄液の一部は頚部リンパ節に到達します。上咽頭炎による上咽頭の鬱血、頚部リンパ流のうっ滞が脳脊髄液の循環障害を起こし、多彩な症状を引き起こす可能性も考えられています。

3.免疫以上に伴う疾患症状
IgA腎症、ネフローゼ症候群、掌蹠膿疱症、関節炎、アトピー性皮膚炎、慢性湿疹、喘息など。
 
慢性上咽頭炎の臨床症状 

院長は上咽頭炎による嗄声(声がれ)、発声困難(声が出しにくい)、共鳴障害(声が響かない)、発声時の異常感、痰がからむ、声が続かない、声が裏返る、音程不安定、咽頭痛、咽頭乾燥感、咳といった症状に対しBスポット療法(EAT;イート:上咽頭擦過療法)を行い、78%の改善率を示したことを原著論文で報告しました(音声言語医学,58(4):333-338, 2017)。
 
上咽頭炎の診断

上咽頭は口から覗いても見えない部分にあるため、上咽頭炎は鼻からの内視鏡を行わない限り診断が困難です。
上咽腔炎の診断は経鼻内視鏡による観察を行い、さらに鼻から細い綿棒で上咽腔を擦ります。上咽腔炎であれば容易に出血し痛みを感じます。


 
  上咽頭炎の治療法:【Bスポット療法】,【上咽頭擦過療法(EAT;イート)】                                 

治療は上咽頭に塩化亜鉛を直接塗布・擦過します。東京医科歯科大学初代耳鼻咽喉科教授の堀口申作先生によって考案されました。
当時、上咽頭は鼻咽腔(びいんくう)と呼ばれていたためBiinkuuの頭文字をとって【Bスポット療法】と命名されました。国際的に通用する治療名として近年、上咽頭擦過療法(Epipharyngeal Abrasive Therapy; 【EAT; イート】)と呼ばれることが提唱されました。
塩化亜鉛にはタンパク質を変性させ、組織や血管を収縮させる粘膜収斂作用があります。

治療効果は個人差が大きく、原因となる疾患、治したい症状とその程度などによって大きく異なります。
治療効果が早く出たケースでも週1回の治療で10回程度行っています。完全治癒は難しく,当クリニックのデータでは78%の患者さんに改善傾向を認めました。

慢性上咽頭炎は耳鼻咽喉科の教科書に記載がないため、ほとんどの耳鼻咽喉科医にその概念がなく、診断が極めて困難な疾患の一つとなっています。
しかしながら、本疾患が疑われる症例は日常診療の上で最も多く、当クリニックでは診療上重視している疾患です。思い当たる症状のある方はご相談ください。