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『更年期障害』について


先日、更年期障害に関する重大な発表が日本産婦人科医会からなされました。非常にタイムリーなので今回から何回かにかけて更年期障害に関するお話をしましょう。

その発表の内容とは米国のNIH(国立衛生研究所)が1993年から8年計画で進めてきた”健康な閉経女性に対するホルモン補充療法(HRT)の有効性と危険性に関する治験”を突如中止すると言うものでした。

この治験は50才から79才までの16608名を対象として行われ、結合型エストロジェン0.625mg/日と酢酸メドロキシプロゲスチン1.25mg/日を併用投与した8506名とプラセボ(偽薬)を投与した8102名をダブルブラインド法で比較検討したものです。

5.2年間観察された中間期結果としてHRT投与の有効性としては大腿骨頚部骨折は26%、大腸癌は37%、全癌の発生数は24%と優位に減少しました。一方、危険性としてはプラセボ投与群に比し乳癌は26%、心臓発作は29%、脳卒中は41%増加しました。

以上の結果からHRTによるリスク(危険性)がベネフィット(有効性)を上回っているとの判断を下し治験を予定より早く中止することになったものです。

しかしこの結果を具体的に発生数から考えてみると、1万人の女性が1年間あたり乳癌が30人から38人と8名増加し、心臓発作は30人から37人と7人増加、脳卒中は21人から29人と8名増加しているにすぎません

また総死亡率は有意差がみられず、一人一人の女性における影響は極めて少ないとも考えられますが長期間の多数の女性に及ぼす影響を考慮したものと考えられます。

当クリニックでもPOF(早発閉経)の方にはHRTを投与しておりますが、とくに乳癌の安全性に関しては留意しており2001年8月医学専門雑誌”cancer"に小葉癌が2.6倍増加するという報告が掲載されたこともあって経緯を見守ってきました。

しかし今回の結果から一応HRTの長期投与は控えていく意向です。HRTが検討すべき点としてエストロジェンの少量投与や貼布剤や、乳腺には作用しないSERMの併用も考えられますが今後も経過を見守って行きたいと思います。

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