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医療法人社団 敬水会
江戸川橋鈴木クリニック

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パンフレット

いつも腎臓の専門誌を読んでいるのですが、だいたいNature NephrologyとJASNというのが信頼度が高いです。もちろんニューイングランドジャーナルはさらに上になるのですが一般紙で、腎臓だけを扱っているわけではないので。で、そこに一番読まれている論文という一覧が毎月更新されています。50あると2つぐらい透析の研究があります。そこでよく読まれている透析の研究のひとつはリンのことで、リンが高くても低くても相対的に予後が悪いという論文です。
よく見る図だなと思うと、日本ではパンフレットになって患者さんに配られているのですね。たまたまそういうパンフレットをもらったので気づきました。でも詳細に見ると誤解があるかもしれません。例えばパンフレットにはリンが6-7になると27%死亡率が上がるというようなことが書いてあります。しかし論文では死亡率が上がるといえるのはリンが10をこえた場合で述べています。実際27%といっても統計学的に差があるといえる信頼区間にないので論文では取り上げていないのです。だから、27%平均値は上がっているが差があるとはいえないというのが正しいところではないでしょうか。逆にリンが10を超えれば明らかに有意差を持って死亡率は上がるといえます。またこういう比較はもともと%と%を比べたので分母が違います。極端ですが、一人死亡した場合、分母が10人であるのと1000人では意味が違ってくるわけです。つまりリンが10を超えるような人は分母が小さいので同じ死亡率といっても人数では同じかもしれません。
そういうことで、たくさん同じようなデータを別の観点から解析した多くの論文があって意味が出てくるという風に考えています。ちなみに日本人にあわせるために日本人のデータを集めることが大事であることも強調されています。しかしこれは聞いた話ですが、治験会社など、統計の専門家が病院に入って集めてきたデータとアンケート方式で透析学会などが集めてきたデータでは差があるそうです。日本のデータは信用できないといわれているんだそうです。多分、データを提出するほうもなるべくいいデータだけを提出するようにしているのでしょうね。