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医療法人社団 敬水会
江戸川橋鈴木クリニック

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クロート

製薬会社から教育を頼まれて、しばらくいろいろ勉強しておりました。私は発表するときなど特に相手の目線で話そうとするので、覚えておいてほしいことだけ印象的にしようとしています。大学にいたとき学生さんに人気があって最優秀教員賞というのをもらいました。その賞状が置いてあるからか、製薬会社さんがときどき話をしてほしいと依頼されます。
今回はklothoクロートというのがよくわからないので解説してほしいとうことでした。少しだけ共同研究で関っていたので、大まかには知っております。これは蛋白質で、細胞膜からひょろっと長くでているものです。1997にたまたまこの蛋白質がなくなるとリンが高くなり骨が減って3週間以上たつとどんどん死んでしまうマウスができて報告されました。そこで、老化に関る蛋白質だと考えられ、いまでもそう信じている人も多くいます。題名が老化に似た症状を示すマウスということなので、題名だけ見ると早合点します。リンを調節しているホルモンであることは間違いなのですが、老化といわれると老化自体がそんなに簡単ではないので似ているとしかいえません。で、リンが高いと老化するというのが一人歩きしたかもしれませんが、透析の方と限らずリンが悪者になっている論文がこのところおおく出てきました。どんな人でも、リンの高い食事をしていると寿命が短いというものです。本当かどうかはまだわかりませんし、身体の中で、リンが高いと教えてくれるシグナル蛋白質は見つかっていません。(カルシウムが高いと知らせる蛋白質はあるのに)ただ、私がアメリカにいた1980年ごろでもリンは悪者で、ハンバーガーを食べるとリンが上がって日内リズムが狂うから、この野菜スティックをあげるよといって、にんじんスティックを友達からもらったことがあります。実際ジョンクフードばかり食べているのは身体によくないですね。これを日本ではファーストフードというのかといってからかわれましたし。
クロートは細胞膜から出ている部分に活性があり、これを注射するとマウスが長生きであるという論文も誤解を招いているかもしれません。2008にクロートが増えている患者さんが見つかって、長生きどころかクル病という骨の病気で苦しんでいる子供でした。いまではリンとカルシウムを調節しているホルモンであるというところで基礎的な役割がはっきりしてきたところです。