日本では毎年約30万件の人工妊娠中絶が行われています。
（ちなみに交通事故による死者は１万人程度。）

この30万、という数字は厚生労働省に報告された数字に過ぎず、統計に出てこない、いわゆる「ヤミ」中絶も相当数ある、といわれています。

何故こんなにも多いのでしょうか？

やはり、正しい知識の欠如が根底にあるはずです。
避妊に関する正しい知識を広めるのは産婦人科医の社会的役割だと思います。


<低用量ピルについて>
「ピルは自分自身の排卵、月経をコントロールする手段です。」

低用量ピル（ＯＣ：oral contraceptives）とは経口避妊薬のことです。1日1回服用することにより排卵を抑制します。低用量ピルには、コンドームよりも高い避妊効果があります。正しく服用すれば、100％避妊できます。

ピルと同じくらい確実な避妊法としては、IUD（子宮内に特殊な器具を挿入し受精卵の着床を防ぐ）や不妊手術があります。ただし、これらの方法は出産経験の無い人にはおすすめできません。
最も確実で安全性の高い低用量ピルを使って、「望まない妊娠」からあなた自身を守ってください。

ピルの効果は確実な避妊だけではありません。ホルモンのバランスが整えられるため、生理にまつわるトラブルも大幅に減ります。ピル服用中は子宮内膜の増殖も抑えられますから、生理の量、生理痛、ともに少なくなります。
他のメリットとしては、ＰＭＳ（生理前のイライラや気分の落ち込み）が軽くなる、生理不順が治る、ニキビが改善する、などです。子宮内膜症の治療薬としても用いられている国もあります。


<モーニングアフターピル>
「この方法を正しく用いれば中絶手術は不要になります。望まない妊娠を避け、あなたとあなたの人生を守ってください。」

普段きちんとコンドームを使っていても、「破れていた事に気づかなかった」「途中で外れた」と、いうアクシデントは誰にでも起こりうるものです。そんな時、この方法を知っていれば望まない妊娠を避けることができます。

事後避妊薬、緊急避妊薬、Emergency　contraception、Plan B、とも呼ばれます。欧米では広く用いられている方法です。

普段コンドームを使っているならば、いざというときのために手元にストックしておいてもいいかもしれません。
ホルモン剤を多量に投与することにより、受精卵の着床を防ぎます。一旦、着床してしまうと効果がありませんから、避妊に失敗してからなるべく早く（72時間以内）に服用する必要があります。

しかし、モーニングアフターピルは “あくまでも緊急避妊”であり、最後の手段です。ホルモン量も多いため、人によってはかなり気分が悪くなります。女性の体に負担のかからない、より確実な避妊法として低用量ピルをおすすめします。