生活習慣病について
■生活習慣病とは
高血圧・高脂血症・糖尿病など、食習慣の欧米化や現代社会でのストレスが引き金になって起こる病気を生活習慣病といいます。
生活習慣病は、それ自体ではなかなか症状が現れにくく、従って治療しようという意欲を持ちにくい病気です。中には指摘されても病気と考えない人もいます。このように、軽症のうちに治療に取り組みにくいため、脳卒中や心筋梗塞などの生命にかかわる状態になってはじめて、きちんと治療しなかったことを後悔する方が多いのが、この病気の特徴です。また、治療していても「薬さえ飲んでいれば診察など受けなくても大丈夫」と安心し、きちんと医師の説明を聞かなかったり、「もうよくなったから・・・」と治療を自己判断で中止してしまったりする方も多いようです。
しかし、こういった生活習慣病は薬を飲む・飲まないに関わらず、一生付き合っていく病気と捉えたほうがいいのです。また、合併症を起こさず元気に寿命を全うしたいと思う方は、病気について安易なアドバイスや間違った情報に流されることなく、かかりつけ医と十分話し合って治療続けることが大切です。
■患者さんにも勉強していただきたい生活習慣病
たとえば、血圧が高ければ下げる薬(降圧剤)を飲めばそれでいいのでしょうか。答えは「いいえ」です。
降圧剤を処方するだけなら、何科の医師でも、新米医師にさえできます。当院では、患者さんごとの背景を十分に検討し、たくさんある薬の中からこれがいいと考えられるものを処方しています。患者さんの背景とは、家系、生活パターン、仕事の内容、高血圧以外の病気の有無などです。
そして、なぜこの薬なのか、どこまで血圧を下げればいいのかなどを説明し、適正な状態になるまで十分話し合いながら治療していきます。
ですから、責任をもって治療するためには、きちんと説明を聞いていただく必要があります。薬局ではないのですから、「薬さえくれればいいから」という患者さんでは困ります。あくまでご自分の病気であることを認識し、私たちは治療のサポートをするだけであって、治療の主役は患者さん自身なのだ、ということをご理解いただきたいと思います。
そのうえで、5年後、10年後に、できる限りいい状態で過ごしていただくことが私たちの願いです。
■特に気をつけたい糖尿病
糖尿病の人口は年々増加し、いわゆる予備軍を含めると大変な数になります。一方、医学の進歩は目覚しく、近年「糖尿病は境界型の時点ですでに治療すべきだ」といわれています。ごく軽症の糖尿病を発見し治療する、あるいは境界型といわれる方を積極的に治療し糖尿病への移行を防ぐことが大切です。
せっかく、早期に以上が見つかっても、検査や治療を拒む方が多いのは、自覚症状がないからなのでしょうが、糖尿病は全身の血管や神経を蝕む恐ろしい病気です。早期の治療が5年、10年後を大きく左右するものであることを認識していただきたいと思います。
また、当院にいらっしゃる方で、何年も他の大病院にかかっているのに、「糖尿病手帳」をもらっていない、自分の状態を知らないという方が少なからずいらっしゃいます。混んだ外来で血糖値がいい・悪いだけを聞いて、食事に気をつけるように言われておしまいなのかもしれません。しかし、患者さん自身からもっとアプローチして、十分な説明を納得できるまで聞いてほしい、せめてHbA1cの値と現在の合併症については説明できるくらいであってほしいと思います。
コントロールが悪いと、無自覚のうちに心筋梗塞を起こして突然死する、合併症が悪化して失明したり、透析になったりする、結核などの感染症にかかりやすいなど、糖尿病からくる病気は多彩です。しつこい便秘や嘔吐発作など、一見糖尿病とは関係ないように思われる症状も、実は糖尿病から来ていることがあります。ですから、診察のたびに主治医と十分話し合ってほしいものです。