大学病院に戻ってしばらく経った頃、病棟医長を拝命しました。この時期は、統合失調症、双極性障害、うつ病、摂食障害、パーソナリティ障害等の重症な方々と出会い、交流する貴重な機会となりました。
体重が20kgを切る拒食症の患者さんや、何度も自殺企図を繰り返す患者さんの心の中にも、人とつながり助けを求める部分(ここでは「幼い子ども」と呼びましょう)が生きています。
その「幼い子ども」が治療者とつながることを妨害する、強力な別の部分(ここでは「恐いボス」と呼びましょう)も存在します。「幼い子ども」が治療者に助けを求めようとすると、「恐いボス」はその動きを察知し妨害しようとします。「幼い子ども」を心の中で閉じ込めて、治療者と触れ合わないようにさせるのです。「恐いボス」がどのような場面でどのように働くのかを理解し、治療者が助けを求めている部分としっかり触れ合うことが要となります。
こうした患者さんの内側の各部分の関係が、治療チーム全体の関係によって包容されることが必要です。したがって、治療チームの中で生きた対話が繰り返され、それらが患者さんを理解することに戻されるプロセスが大切になります。これらのことを深く学んだのがこの時代です。