水虫の菌について
毎年、じめじめした蒸し暑い季節の訪れとともに気になる水虫。
日本人の約5人に1人が悩むともいわれる水虫は、カビの仲間「白癬菌」が原因ですが、足以外にも感染し、部位によって次のように呼ばれます。
<頭部に感染した場合>…「しらくも」
<胴体に感染した場合>…「たむし」
菌は、剥がれ落ちた皮膚である垢や毛、爪などに多いタンパク質「ケラチン」を餌にしていて、感染した人の垢や毛が落ちていれば、そこから感染が広がります。
「しらくも」は、かつては別の菌が原因で、患者は子どもや高齢者が中心でしたが、現在では「トンズランス菌」を原因とするも多くなったと考えられています。
【感染力の強いトンズランス菌】
2000年頃に海外から日本に侵入し、柔道やレスリングなどの格闘技の交流試合を通じて選手間で広がりました。
- 頭部や顔、首などに感染しやすい
- 感染力が強く、数分間の試合でも、相手が感染していれば接触した部分からうつる
- 感染した人と2週間程度一緒に暮らすと、落ちた垢などからうつる危険性が高まる
- 合宿などの集団生活の場合、競技者の約10人に1人の割合で感染していると見られる
【格闘技以外にも感染が増加】
柔道などの選手が試合で感染して菌を家に持ち帰り、自宅で子どもにうつり、その子が学校で他の子どもと遊んでいるうちにうつす、といったように、柔道などをやらない人の間でも感染するケースが増えてきています。
【トンズランス菌の症状】
- 首や顔などに感染した場合
→紅い斑点が出るため、異変を見つけやすい - 頭部に感染した場合
→一見ではわかりにくく、気づかないまま感染を広げる可能性あり - 感染力が強い反面、症状は比較的軽い
- ふけやかさぶたが少し出来る、毛穴に菌が入り込んて黒い点が出来る等の症状に留まる患者が多い
- 中には、頭皮が盛り上がって膿が出たり、脱毛が起きたりすることもあり、円形脱毛症と診断されて治らずに悩んでいた例もある
【検査と治療】
- 感染が疑われた場合は、ブラシ検査を実施し、菌の特定を行う
- たむしの場合→塗り薬を使用(免疫機能低下を防ぐため、ステロイド入りは使用しない)
- 頭部感染→菌が少ない場合は抗菌剤入りシャンプーを使用
- 菌が多い場合→飲み薬を使用
【治療で大切なこと】
適切な治療なら1週間ほどで症状は消えるが、この段階では菌がまだ皮膚の毛穴に潜んでいます。症状が消えても治療を中断せず、薬を1~2ヶ月程度使い続けて、しっかりと治すことが重要です。
【感染を予防するには】
- 掃除
運動する場所や自分の部屋などは、電気掃除機でよく掃除する - 洗濯
柔道着などをこまめに洗濯する - シャワー
運動後、シャワーを浴びて、体を石鹸でよく洗う
シャワーがない場合は、ぬれたタオルで体をよく拭く - 鏡でチェック
鏡で全身を見て、斑点がないか確認。あれば試合や練習を休む
※2012年5月25日(金)日本経済新聞夕刊記事参照