子宮位置異常はどんな病気?
子宮位置異常とは、子宮の位置が正常とされる前傾前屈からずれたまま戻らない症状を指します。子宮を保持している部分がゆるんだり、子宮が周囲組織と癒着することで起こります。
子宮を下方から支える役割を果たしているのが骨盤底にある筋肉群や、筋膜、隔膜の緊張力などです。
子宮をつり上げる役割を果たしているのは、基靱帯、仙骨子宮靱帯、膀胱子宮靱帯、子宮広靱帯、子宮円靱帯などの靱帯が中心となります。
子宮位置異常にはその位置によっていくつかの種類があります。子宮位置異常の中で最も多く見られるのが子宮後傾後屈です。
その他にも病的子宮前屈、子宮脱などが挙げられます。
子宮の状態によっては目立った症状が現れない場合も多く、その場合は特別な治療は行われません。
ただ子宮位置異常の原因として何らかの疾患が隠れているケースがあり、その場合には原因となる疾患の治療が行われます。
例えば子宮後傾後屈が子宮内膜症や性感染症を原因に生じているケースなどがあります。
子宮位置異常の主な症状は?
子宮位置異常には、子宮後屈、子宮下垂などを代表に病的子宮前屈、子宮脱などの種類がありそれによって症状も異なります。子宮後屈とは通常おなかの方向に傾いているはずの子宮が背中側に向かって傾いている状態を指します。
子宮の後壁が何らかの要因によって直腸などと癒着することで後ろに引っぱられることで起こります。
子宮後屈そのものによって起こる症状は特に無い場合がほとんどですが、原因となっている病気によって不妊症、腰痛、月経痛などの症状が現れることもあります。
子宮下垂や子宮脱は子宮が腟の入り口まで下がったり、腟から飛び出してしまう状態を指します。
多くは骨盤を下から支える骨盤底の機能がうまく働くなることで起こります。
自覚症状がないケースが多いとされていますが、下垂が進行すると性器に違和感を感じたり、尿の出が悪くなる、歩行時に苦痛を伴う場合があります。
病的子宮前屈は子宮体の軸が前かがみになる状態を指します。月経異常、不妊、月経痛、頻尿などが症状として現れます。
子宮位置異常の主な原因は?
子宮位置異常は先天的な原因で発症するものから、何らかの疾患に合併する形で現れる後天的なものまでさまざまです。もともと子宮には可動性があり、周囲にある膀胱や直腸の状態によて位置は変動しています。
生理的可動範囲を超えて子宮が動き、本来の位置に戻れない状態を子宮位置異常と呼びます。
多くは先天的な原因によって発症しているとされています。
子宮後屈は移動性と癒着性に分類されており、移動性の場合には性器の発育不全や内臓下垂などの無力性体質、産褥期の早期労働を原因に発症することがあります。
癒着性の場合、卵巣、卵管、骨盤腹膜などの炎症や、子宮内膜症などが原因として現れることが多いです。
子宮下垂と子宮脱は骨盤底の機能不全が主な原因とされており、特に子宮脱が加齢による筋肉の萎縮や筋力の衰えが影響を及ぼしていると考えられています。
病的子宮前屈は先天性子宮発育不全を伴って発症したり、後天的な子宮や周囲の炎症性疾患を原因とします。
子宮位置異常の主な検査と診断方法は?
子宮位置異常は、問診、内診、超音波検査によって子宮の位置を確認することで診断されます。症状が無い場合は発見されないままというケースも多く、他の疾患の検査や妊婦検診などの際に偶然発見されるケースもあります。
子宮の位置の異常は、内診や超音波検査を行えば比較的容易に確認できます。
内診では、腟に指を入れて子宮の位置や大きさ、形、硬さ、周囲の組織との癒着までを確認することができます。
内診によって子宮位置異常が疑われた場合、超音波検査によってより正確な位置を把握します。
子宮位置異常が発見された場合、それが癒着性か、他の疾患を原因に発症している可能性が無いかをさらに詳しく調べる必要があります。
特に子宮後屈の原因となることが多い子宮内膜症や子宮周囲の炎症疾患などには特に注意が必要です。
それらの疾患の可能性を探るため、必要に応じて血液検査や細胞診、組織診などの病理検査、CT検査、MRI検査などの画像検査が行われます。
子宮位置異常の主な治療方法は?
子宮位置異常は、まず無症状な場合には特別な治療は行われないことが多いです。また治療が必要な場合にも、原因となる疾患の治療が優先されます。治療が必要な例としては、子宮内膜症や子宮周囲の炎症疾患などによって生じた癒着性の子宮後屈などです。
この場合は癒着の原因となる子宮内膜症、子宮周囲の炎症疾患に対して治療が行われます。
その結果症状が改善されない場合には子宮の位置を正常な場所に戻す手術が検討されます。
子宮下垂や子宮脱の場合、症状が軽度であれば膣の中にペッサリーと呼ばれる器具を挿入するすることでそれ以上子宮が下がってくることを防ぎます。
症状が重い場合には手術による治療が選択されます。支持組織を補強し、子宮を吊り上げることで改善が見込めます。
出産後に生じる子宮下垂なら出産後に肛門や腟周囲の筋肉を鍛える運動をすることも予防の上で効果的です。
病的子宮前屈の場合、現れる症状に対する対症療法が選択されますが、根治を目的とした手術が行われる場合もあります。
子宮位置異常の初診に適した診療科目
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