頬粘膜がん

頬粘膜がんはどんな病気?

頬粘膜がんとは上下口唇の粘膜面、頬の粘膜面、臼後部や上下頬歯肉溝などの頬粘膜に発生するがんで、口腔がんの一種です。
口腔がんには頬粘膜がの他にも舌がん 、上顎歯肉がん、下顎歯肉がん、口底がん、硬口蓋こうこうがいがんなどの種類があります。
頬粘膜がんは口腔がんの中でも舌がん、歯肉がんに次いで多く発症が見られます。口腔がん全体の約10%に見られるとされています。
一方で国や地域によっては頬粘膜がんの発症頻度が異なる傾向があり、これは生活習慣の違いが関連していると考えられています。

頬粘膜がんを発症する原因として挙げられるのが、頬粘膜に発症しやすい扁平苔癬と呼ばれる粘膜疾患です。扁平苔癬自体は良性ですが、歯科金属やC型肝炎、薬物などを要因として発症し、頬粘膜がんを引き起こす場合があります。

治療方法としては手術、放射線療法、化学療法などを単独や組み合わせて行われます。
治療後に口が開けづらい、唾液の出口が詰まりやすくなることも多く、治療方法はこのような機能や審美的な問題も併せて検討されます。

主な症状

頬粘膜がんを発症すると、病変部位が固くなる、ただれる、腫れるなどの症状が現れます。
これらは口内炎の症状とよく似ています。
さらに出血しやすくなったり口臭がきつくなる、痛みを生じるといったケースもあります。
さらに進行すると口が開きにくいなどの開口障害を引き起こしたり、頸部リンパ節への転移がみられれば頸部のリンパ節が腫れる場合もあります。

がんの前駆症状としては粘膜が白くなる白板症、扁平苔癬なども挙げられます。これらに続いて頬粘膜がんを発症するケースも珍しくありません。
また頬粘膜がんは外側に出っ張っている外向型や掘れ込んでいる内向型に大きく分類できますが、その中で固さがあり、見た目が良くないものは特に注意が必要です。

頬粘膜がんなどの口腔がんは直接肉眼で観察でき、手指で触診することもできるためセルフチェックを行うことも早期発見に繋がります。抜歯後の傷の治りが悪い場合や出血しやすい場所があるなども頬粘膜がんが疑われるチェックポイントとして挙げられています。

主な原因

頬粘膜がんを発症する原因は喫煙、飲酒、口内環境の乱れなどが代表的です。
中でも特に頬粘膜がんを発症するリスクが高いのは喫煙習慣のある人です。
また、飲酒も頬粘膜がんを発症するリスクの高い習慣と言えます。喫煙と飲酒を同時に行っている場合、最もリスクが高い状態と言えます。
50歳以上の男性で毎日の喫煙と飲酒をしている場合、特に注意が必要です。

口内環境の乱れは具体的には清掃不良やむし歯の放置、入れ歯の使用、被せものの破損などが挙げられます。
特に入れ歯が合っていない場合や被せものが破損している状態は、口の粘膜に慢性的な刺激を生じたり、舌や頬を傷つける可能性があります。
これが結果として頬粘膜がんを引き起こす場合があります。口の中に溜まった歯垢や歯石も頬粘膜がんを引き起こす要因となります。

その他にも栄養不良など生活習慣に関わるリスク要因も多いため、日ごろから食生活、歯磨き習慣、適切な歯科治療などが予防のためにも重要です。

主な検査と診断

頬粘膜がんの確定診断には組織学的診断による生検が必要です。がんと確定した場合には、X線検査、CT検査、MRI検査、超音波検査、PET検査などの画像診断も追加で行い、総合的にがんの進行度を決定することが治療のためにも重要です。

生検は腫瘍の一部を採取して顕微鏡で確認する検査です。生検の簡便な検査法として擦過細胞診と呼ばれる検査も有効です。
これは比較的簡単に行うことができる検査で、歯科の専門機関で定期的に調べてもらうことも可能です。擦過細胞診は頬粘膜がんの早期発見にも役立ちます。

またCT検査、MRI検査、PET検査、超音波検査ではがんの大きさや浸潤、頸部リンパ節転移、多臓器への転移の有無について確認することができます。
これらの検査によって病変をさらに詳しく調べることが治療方針を検討する際に役立ちます。

また、食道、胃などの消化器系のがんを併発しているケースが多いため上部消化管内視鏡検査によってその有無を確認します。このような重複がんの例も少なくありません。

主な治療方法

頬粘膜がんの治療は手術による切除が標準的です。病変部位や転移などを調べて計画的な治療が行われます。
手術による切除を行った場合、切除後の開口障害が生じます。
そのため他の場所から組織を移植する皮膚移植などの手術も同時に行われる場合がほとんどです。
首のリンパ節に転移が見られる場合は頸部郭清術と呼ばれる方法で行われ、周囲の脂肪とともにリンパ節を摘出します。

全身状態が悪い、遠隔転移があるなどの理由で手術ができない場合には放射線療法、化学療法なども検討されます。
多くの場合はそれらを組み合わせた治療が行われます。また頬粘膜がんの治療前や治療中はもちろん、治療後も口腔の環境を整えて継続的な口腔ケアを行うことも重要です。
特に治療後は粘膜炎、唾液分泌量の低下などによって口内環境が乱れやすい状態になっています。
口内環境の悪化は、術後感染、肺炎、手術創の治療不全などの要因となる可能性があります。
摂食や嚥下のリハビリテーションなども含めたケアを行っていく必要があります。

頬粘膜がんの初診に適した診療科目

頬粘膜がんに関連する病名