神経芽腫 シンケイガシュ

初診に適した診療科目

神経芽腫はどんな病気?

神経芽腫とは小児がんの一種で、腎臓の上にある副腎や、頸から骨盤までの脊椎の両側にある交感神経節から発生する悪性の腫瘍です。
体の様々な部位にある神経組織に発症する可能性がありますが、半数以上が副腎髄質などの腹部でみられます。
頸部(けいぶ)、胸部、骨盤部などに発症する場合もあります。まれな例では脳に神経芽腫が生じることもあります。

腫瘍は自然に小さくなっていくものもあれば悪性度が高いものもあります。
神経芽腫と診断された時点で約7割の割合で他の臓器などへの転移が見られます。

神経芽腫は乳児に最も多く見られるがんとしても知られており、全体の約9割が5歳未満の小児です。
1歳半未満の乳児にも発症する場合がありますが、この年齢であれば腫瘍が進行期であっても自然退縮が見られることもあり、予後が良好な場合が多いとされています。

発症の原因は明らかになっていませんが、神経芽腫が発生しやすい家系も存在すると考えられています。

主な症状

神経芽腫を発症した場合、最初にできた部位や転移の有無などによって現れる症状も異なります。
腹部に生じた場合、初期症状として現れるのはお腹が大きくなる、お腹の膨張感、腹痛などが現れます。
胸部や首に生じた場合にはせき、腫瘍が気道を圧迫することで呼吸困難なども現れます。全身症状として、不定の発熱、貧血、食欲不振、嘔吐、腹痛、下痢、やせ、高血圧などが見られます。

また転移した部位によってもさまざまな症状を呈します。
骨に転移が見られる場合、骨痛、脱力感、疲労感、貧血、蒼白、あざや斑点を生じる場合があります。これはがんが骨髄に達することで赤血球や血小板が減ることで起きる症状です。
その他にも皮膚に転移した場合にはしこりができたり、脊髄に転移した場合には腕や脚に力が入らなくなるなどの症状も現れます。

首にできた腫瘍が顔面の神経を圧迫するホルネル症候群を発症するケースがまれにあります。これによって瞼が下がったり瞳孔が小さくなるなど特徴的な症状が現れます。

主な原因

神経芽腫を発症する原因は明らかになっていません。
腫瘍の多くが自然に発症するものですが、一部には神経芽腫が発生しやすい家系があり、遺伝子の突然変異が親から子供へ遺伝する場合があると考えられています。
遺伝子突然変異を持つ患者を調べると神経芽腫を低年齢で発症している、副腎髄質に複数の腫瘍が見られるなどの共通点があります。
しかし現在のところ突然変異がなぜ起こるのかについては明らかになっていません。このように遺伝子的な要因も関係していると考える説もあります。

神経芽腫は0~4歳で診断されるケースがほとんどを占めます。0歳での発症が最も多いとされています。小児がんの中でも比較的多いとされる腫瘍であり、白血病、脳腫瘍、リンパ腫についで4番目に多いとされています。小児がん全体に占める神経芽腫の割合は約10%です。

0歳児など年齢が低い時期に診断を受けた神経芽腫の場合、比較的予後は良好なケースが多いです。がんの転移がない年少の小児の予後が最も良いとされています。

主な検査と診断

神経芽腫の診断には骨髄検査、尿検査、CT検査、MRI検査、生検組織診断などが行われます。
神経芽腫は早期に診断するのは非常に難しい疾患ですが、早期発見につながる例としては出生前超音波検査によって胎児の頃に発見された場合が挙げられます。
また、腫瘍が大きくなるとしこりを手で触れて確認できるため、出生後の検診などで神経芽腫の疑いがあると判断されるケースもあります。

腹部のCT検査やMRI検査などの画僧検査は神経芽腫が疑われる場合に行われ、腫瘍の有無を確認することができます。
腫瘍が見つかったらその細胞を採取して生理検査が行われます。また尿検査では尿に含まれるホルモンの値を測定することができます。
神経芽腫は交感神経節細胞に由来する腫瘍細胞のために、カテコールアミンという物質を産生する性質があります。9割以上の患者さんで尿中にVMA、HVAと呼ばれるカテコールアミン代謝産物が多く排泄されていることを確認できます。

主な治療方法

神経芽腫の治療は、早期に発見され腫瘍摘出が可能な場合は腫瘍摘出術が行われます。
この時がんに転移が見られなければ手術による切除で完治も期待できます。

抗がん剤などの化学療法薬の投与は症状の程度によって判断されます。
症状が軽度であれば強度の弱い抗がん剤治療を行い、特に症状が重い場合には幹細胞移植を伴う大量化学療法が行われます。
この方法で治療が行われた後には、再発を防ぐための薬の投与と免疫療法も併せて行うことが重要です。近年この免疫療法が注目されており、これはがんに対抗する体の免疫系を活性化を目的として行われる治療です。

腫瘍の切除手術ができず、さらにリスクが高い小児に対しては放射線療法が選択される場合もあります。
手術によって取り切れなかった部分に放射線療法を行うなど、それぞれの治療法を必要に応じて組わせて治療が行われます。
治療に必要な強度を低リスク、中間リスク、高リスク3段階に分け、それによって治療法を決定するのが一般的です。そのためには腫瘍の一部を採取して行う生検が必要です。