胃肉腫

初診に適した診療科目

胃肉腫はどんな病気?

胃肉腫とは胃の粘膜下に悪性の腫瘍が発生する疾患です。
胃肉腫の約2/3が悪性リンパ系胃肉腫、約1/3が胃平滑筋肉腫という種類に分類できます。
また胃に生じる悪性腫瘍は、胃の中でも一番内側の粘膜部分に生じる上皮性がん、粘膜以外の細胞からできる非上皮性がんに分けられますが、胃肉腫は非上皮性がんに含まれます。
胃にできる悪性腫瘍全体のうち、約5%ほどの珍しいがんと言えます。
胃肉腫には胃のリンパ組織ががん化する悪性リンパ腫、粘膜の下の間葉系細胞ががん化した平滑筋肉腫などがあります。悪性リンパ腫は本来、血液の病気とも言えます。

胃肉腫は初期の段階ではほとんどが無症状で、症状が進行すると胃の痛み、不快感、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹部膨満感などが症状として現れます。無症状な時点で胃がん検診の際に発見されるケースも多いです。

治療においては腫瘍の部分だけを切除して胃を残す場合が多いですが、まれに胃自体を大きく切除する必要がある場合もあります。

主な症状

胃肉腫の症状は初期段階では無症状である場合が多いです。
発症に気が付かず、症状が進行すると腫瘍が大きくなり胃の痛み、不快感、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹部膨満感などの症状が現れます。
これらの症状はごく一般的な消化器症状と言えます。吐血や下血を起こし検査を受けて発見されるケースもあれば、無症状の段階でも健康診断の結果から発見されるケースもあります。
腫瘍から出血してる場合、貧血やタール便などの症状が現れますがこれは上部消化管出血と同様の症状と言えます。
挙げた症状は胃肉腫特有の症状とは言えず、さまざまな疾患の症状と類似しています。そのため初期の段階で発症に気が付くことは難しく、自覚症状から胃肉腫と診断されるケースはまれです。

腫瘍が大きくなると胃から飛び出した腫瘍が膨らみを持ち、手で触れることができるようになる場合もあります。他の臓器も圧迫するため便秘や膨満感に繋がります。また重篤なケースでは腫瘍が大きくなって破裂したり胃の外に出血を生じることもあります。

主な原因

胃肉腫を発症する原因は現在のところ明らかになっていません。
遺伝子に何らかの突然変異を生じるためと考えられています。
間葉系腫瘍の中で神経の特徴も平滑筋の特徴も持たないものを調べてみると、約90%に細胞を増殖させる遺伝子機能を伴う突然変異が見られました。
この遺伝子はc-kit遺伝子と呼ばれており、何らかの原因からこの遺伝子が変異して細胞増殖が過剰になることが、胃肉腫を発症する要因と深く関連していると考えられています。


また遺伝子の変異によって細胞が異常に増殖して胃肉腫を生じるとする説の他にも、ピロリ菌の感染、暴飲暴食、喫煙なども胃肉腫を発症する要因のひとつではないかとする説もあります。
特にピロリ菌は胃がんの発症要因としても知られています。

胃肉腫の中でも悪性リンパ腫は潰瘍やびらんが現れ、多発性であるケースが多いです。また平滑筋肉腫の場合、肝臓への転移を起こす可能性があります。このように胃肉腫の種類によっても特徴はさまざまです。

主な検査と診断

胃肉腫の診断には、問診、内視鏡検査、病理検査、内視鏡エコー検査などが行われます。
問診では自覚症状などを確認します。
内視鏡検査は胃肉腫の診断に不可欠な検査で、直接胃の中を見ながら腫瘍の有無を確認することができます。
また、この検査によって腫瘍が見つかった場合、そのまま病変部の組織を採取する場合もあります。
この組織をさらに詳しく調べることで病理学的に肉腫の組織を断定できるため、確定診断が可能です。特に悪性リンパ腫の場合、腫瘍が明らかなケースも多いためこの方法がよく用いられます。

病変が胃の粘膜の下に平滑筋肉腫の場合、初期段階であると内視鏡では見えにくい場合も多く、見逃されてしまうケースもあります。この場合、内視鏡エコー検査を行って胃の粘膜の下の方まで丁寧に病変の有無を確認します。平滑筋肉腫の場合、手術までに確定診断に至らないケースも多く、手術後に組織検査を行うことも少なくありません。病変が発見できない場合には造影剤を用いた上部消化管造影検査を行う場合もあります。粘膜下からの圧排が認められることがあります。

主な治療方法

胃肉腫の治療方法は悪性リンパ腫と平滑筋肉腫かによっても異なります。
悪性リンパ腫の場合、抗がん剤治療、ピロリ菌の除菌、放射線治療などが行われます。
内視鏡を用いた組織検査を行うことで、リンパ腫の種類が特定でき、これらのうちどの治療が適しているかを判断できます。
MALTリンパ腫であればピロリ菌の除菌、Hodgkinリンパ腫であれば放射線治療となります。必要に応じてこれらを組み合わせて行う場合もあります。

平滑筋肉腫の場合は、レーザー照射療法、エタノール局注療法、手術による切除などの選択肢があります。
特にレーザー照射療法とエタノール局注療法は腫瘍の大きさが2~3cm未満の場合に適応される方法です。大きさがそれを超える場合、手術による切除が必要です。
腫瘍の部分のみの切除を指す胃局所切除術か、胃自体を大きく切除するのかは腫瘍ができている位置によっても左右されます。
胃の入り口や出口、その周囲に腫瘍ができた場合、噴門側胃切除術や幽門側胃切除術などの方法が検討されます。