過敏性肺炎 カビンセイハイエン

初診に適した診療科目

過敏性肺炎はどんな病気?

過敏性肺炎とは、抗原の反復吸入によって起こるアレルギー性肺炎を指します。
肺に過敏反応を引き起こす物質はさまざまですが粉塵や化学物質が原因となることがほとんどで、中でも特に多いのはトリコスポロンと呼ばれるカビの一種です。
通常の肺炎とは異なり、感染症は原因となりません。原因となる物質を繰り返し吸い込むと、肺にある肺胞や細気管支の内部や周辺に炎症を生じます。
症状が現れた物質を再度吸い込むと、多くの場合数時間以内に発熱、せき、悪寒、息切れなどの症状が現れます。

急性のタイプと慢性のタイプに分類され、急性では原因抗原から離れることができれば回復しますが、慢性になると病変と症状が続き、進行するケースもあります。

アレルギー性疾患という一面があるため治療はアレルギー物質を避けることが第一となります。
過敏反応を引き起す物質は血液検査によって特定されたり、専門家がその場所を調べて原因を特定する場合もあります。

主な症状

過敏性肺炎を発症した場合、肺炎に関連する乾いた咳、息切れ、呼吸困難、発熱などが代表的な症状として挙げられます。
急性のものは特定の抗原の曝露から数時間後に咳や発熱、呼吸困難などを発症します。
また慢性の過敏性肺炎の場合、長い時間かけてアレルゲンとなる物質と接触を繰り返すことで肺に瘢痕化をきたします。
運動時の息切れ、せき、疲労、体重減少などの症状が代表的で、これらの症状も数ヵ月~数年と長い時間をかけて徐々に進行していきます。急性と慢性の間にあたるのが亜急性の過敏性肺炎です。乾いたせきや息切れが数日から数週間かけて徐々に進行します。

体内にアレルゲンが取り込まれると症状は悪化し、アレルゲンを遠ざければ症状は改善します。
例えば入院によってアレルゲンを避けて症状が改善しても、退院して再びアレルゲンに近い環境に戻ってしまえば症状も再度現れるという状況が起こります。
このような経過をたどることも珍しくありません。

主な原因

過敏性肺炎は細菌や真菌、動物性タンパク、化学物質など、100種類以上が原因となりうると言われています。
特に微生物やタンパク質を含む有機粉塵、化学物質などを原因として発症するケースが多く、トリコスポロンと呼ばれるカビの一種は特に多い原因として挙げられるものです。
トリコスポロンは高温多湿の環境中で発生しやすいという特徴があり、夏場に水気の多い場所で過ごすことで発症するケースが多いです。
このことからトリコスポロンによる過敏性肺炎は夏型過敏性肺炎と呼ばれます。

また加湿器にひそむカビを原因とする場合は加湿器肺、干し草にひそむ好熱性放線菌を原因とする場合は農夫肺などと呼ばれます。
また生きた鳥や枕、ふとんに含まれる鳥の羽毛に由来する粉塵を原因に発症する愛鳥家肺などもあります。

アレルゲンとなる物質を吸い込むと一部のリンパ球が抗体を産生し、この抗体が組織を攻撃することで肺が損傷します。その後何度も同じ物質にさらされると炎症反応が慢性化していきます。

主な検査と診断

過敏性肺炎の診断には、問診、画像検査、血液検査などが行われます。
問診では症状の悪化と改善を何度も繰り返すといった特徴的な経過などから過敏性肺炎の可能性が疑われます。
聴診によって乾いた異常呼吸音が聞かれた場合にも、過敏性肺炎が疑われます。感染症による肺炎の場合痰が絡む咳が多く、過敏性肺炎の場合は乾いた咳が多いという特徴から推測できます。

画像検査では胸部単純レントゲン写真や胸部CT検査などが行われます。
特徴としてはスリガラス陰影と呼ばれる所見です。また原因となる物質を確認したり、他の疾患の可能性を除外するために血液検査も行われます。実際に原因となるアレルゲンを用いる抗原吸入誘発試験のほか、環境誘発試験、抗原回避試験などの検査も必要に応じて行われます。これらの試験は呼吸状況が悪化する恐れもあるため、必ず専門の医療機関にて行われます。

上記の検査によっても診断が確定できない場合には、肺から組織片を採取して顕微鏡で調べる肺生検が行われます。

主な治療方法

過敏性肺炎の治療において最も重要なことは抗原の吸入を避けることですが、環境を変えることが難しい場合には徹底することが困難な場合も多々あります。
家庭環境が原因の場合は、掃除や消毒、木の腐った部分を除去し、風通しをよくするなどの環境改善が可能です。
一方職場を変えられない場合には環境を変えることは難しいと言えますが、防御マスクの装着などが一定の効果を示す場合もあります。
さらにアレルゲンの粉塵を除去したり低減することや、換気設備の設置によって予防の効果も期待できます。これらの予防策を徹底しても改善が見られないケースは一定数存在します。

過敏性肺炎の急性発作を起こし、特に症状が重い場合にはコルチコステロイドの投与が症状の緩和に有効で重度の炎症を軽減してくれる働きを持ちます。
また中等症、重症では、発熱、呼吸困難、低酸素血症などの症状があるため、ステロイド薬の経口・点滴投与や酸素吸入が必要になることがあります。

感染症が原因である肺炎で使用される抗生物質や抗ウイルス薬は過敏性肺炎においてはほぼ効果がなく、治療法は全く異なります。