心因性難聴 シンインセイナンチョウ

初診に適した診療科目

心因性難聴はどんな病気?

心因性難聴とは、外耳、中耳、内耳、蝸牛神経、脳幹などに障害がみられないにもかかわらず、心理的な要因から聴力に何らかの異常がみられる状態を指します。
一般的に難聴は聴覚障害とも呼ばれており、耳の聴こえが低下している状態を指します。

要因として最も多いとされるのが心理的なストレスです。
発症が多いのが6~12歳頃の学童期で、中でも小学校の高学年頃に発症するケースが多いとされています。
これには友人や教師との人間関係や家族関係、環境不適応などさまざまなストレスの要因が関わる時期であるためと考えられています。
15歳以上~成人の例もあり、男女比ではやや女性に多い傾向があります。

難聴は自覚症状がないケースも珍しくなく、聴力検査で難聴レベルの結果が出てはじめて発見されるケースもあります。
自覚症状の訴えから発見されるケースは全体の約2割程度とされています。難聴以外にも耳鳴りやめまいなど幅広い身体症状が現れる疾患でもあります。

主な症状

心因性難聴は、特に小児においては自覚症状がない場合も多いです。
心因性の難聴は脳内までの音の伝わりには問題がなく、脳内で音と認識されないために音が聞こえないという症状であり、難聴以外にも様々な身体症状があります。
現れる症状に一貫性がない点も特徴と言えます。

難聴以外の症状としては、本来難聴では少ない過度の耳痛や視覚異常(らせん状視野狭窄)、頭鳴、聴覚過敏が現れたり、頭痛、腹痛、食欲不振、倦怠感などの心身症状を伴う場合もあります。
まれな症状には失調歩行や脱力、排尿困難などがあり、幅広い身体症状を合併する疾患と言えます。

また、心因性難聴の患者の場合、心因性身体症状の合併や過去にそれら既往歴があることも多いです。

成人の場合には難聴の自覚があり日常生活において不自由を感じて受診するケースが多いです。ただ症状を自覚してすぐに受診するケースよりも、発症経過があいまいで、やや時間がたってから受診するケースも多いです。

主な原因

心因性難聴では、脳内までの音の伝わりには何も問題がなく、器質的な障害がないため検査で異常は見られません。
このことからも原因が心理的な要因であることが明らかです。
心因性難聴で最も多いとされる原因は精神的ストレスとされており、様々な要因が関わりあって発症します。
具体的にはもともとの性格や精神的な弱さなどの内因的要素と、学校や会社の対人関係、いじめ、家庭不和、親子関係などの社会環境的要素などが挙げられます。
また、性格傾向だけでなく学習障害などの発達障害も心因性難聴の要因となりうるという報告もあります。

また学童期の小児であればいじめやクラス替え、転校、進学などの学校と関わる要因も大きく影響を与えている可能性があります。学校生活以外では両親の離婚、塾での過度の勉強、両親の無関心などもストレスの要因になることもあります。

治療においても原因と考えられる心理的ストレスを取り除くことが重要と考えられています。

主な検査と診断

心因性難聴は学校などで行われている聴覚検査によって異常が発見されるケースが多いです。
ヘッドホンのような機械を耳に装着し、音が聞こえたら自分でボタンを押す自覚的検査が一般的です。
この検査で異常が見られた場合には、さらに詳しく調べるための検査が行われます。

自記オージオメトリーと呼ばれる検査方法では、内耳の働きを測定することで聴力をある程度推定することができます。
また、聴性脳幹反応(ABR)と呼ばれる検査では、音刺激による脳波を測定することで他覚的に聴力を測定できます。
これら二つは他覚的検査と呼ばれ、心因性難聴は学校健診のような自覚的検査で異常があり、かつ他覚的検査で異常がないと判断されることで診断されます。
それそれの検査において、測定できる音のレベルにも制限があるためひとつの検査によって診断をくだすのは困難です。
心因性難聴の診断においては必要に応じてさまざまな検査を行い、多角的に検証することが重要です。

主な治療方法

心因性難聴の治療において早期回復を目指すには、まずは患者自身に難聴を起こすような病気がないことを理解してもらうことが重要とされています。
病気への理解が深まり、将来に対する不安が取り除かれることで早期が期待できます。

さらに原因となっているストレスの要因を取り除くことも重要です。カウンセリングなどで家庭環境や生活状況を丁寧に確認し、まずはストレスの原因を特定します。状況の改善のためには家族、学校関係者など周囲の人の協力が不可欠です。また、改善のための行動が患者のストレスとなっていないかにも注意しながら進める必要があります。

長期にわたって症状が改善されないなど、状況に応じて心理カウンセラーや精神科医も含めて治療を行うこともあります。精神科的には薬物療法や心理療法が用いられることが多いです。治療過程で再発したり、治癒経過に時間がかかることも多いですが、治療は特に慎重に進められます。治療中は1~3ヵ月を目安に定期的な聴力検査も行われます。