聴神経鞘腫はどんな病気?

聴神経鞘腫とは聴神経に腫瘍ができる疾患です。
主に聴力低下や耳鳴り、三叉神経鞘腫では顔の知覚低下などが症状として現れます。
時には、神経刺激症状(痛みなど)が起こることもあります。腫瘍がある程度大きくなると、付近に顔面神経が走行しているため顔面神経麻痺を伴うこともあります。
顔面神経麻痺では、顔がたるみ反対側がひきつったように非対称になり、まぶたが閉じられない状態が典型的です。

また、三叉神経が侵されると、顔面の知覚低下が起こったり、舌咽(ぜついん)神経や迷走神経が侵されると、食べ物の飲み込みが悪くなったり、声がかれたりする場合もあります。さらに腫瘍が大きくなると脳幹や小脳を圧迫されれば、運動失調や手足の運動麻痺、さらには意識障害が起こり昏睡に陥ることもあります。脳幹への圧迫が強くなると髄液の流れが悪くなり水頭症を起こすので、頭痛・嘔吐などの頭蓋内圧亢進(ずがいないあつこうしん)症状をきたし、命に関わることもあります。

腫瘍が小さい場合、手術よりも放射線療法が選択される場合もあります。

聴神経鞘腫の主な症状は?

聴神経鞘腫は初期の段階では耳鳴りや難聴、めまいやふらつきが代表的な症状として挙げられます。
症状については腫瘍の大きさによっても異なり、腫瘍が大きくなることで内耳神経だけでなく小脳などに機能障害が生じます。
さらに脳圧が上昇する段階でで現れる症状も多いです。腫瘍の成長速度が遅いため脳へ影響が出るまでにも時間がかかります。
そのため症状が現れにくい、症状に気が付きにくいという特徴がある疾患です。

腫瘍が大きくなり、神経を圧迫すると顔面神経、三叉神経などにも影響を及ぼし顔面神経まひや顔面けいれんを引き起こします。
顔面神経まひの症状にはまぶたの開閉がうまくできない、口が閉じられないなどが挙げられます。顔面けいれんは自分の意志とは無関係に顔の一部がけいれんを起こすものです。舌咽神経や三叉神経の障害によって物の飲み込みが悪くなる、ろれつがまわらなくなるなどの症状もあります。

さらに悪化すると水頭症を発症したり、脳圧の上昇によって吐き気や頭痛、歩行障害や意識障害など重篤な症状も引き起こします。

聴神経鞘腫の主な原因は?

聴神経鞘腫は聴神経に腫瘍ができることで発症しますが、発生に至る原因は正確には解明されていません。
現状では、たんぱく質を作る遺伝子の異常や、遺伝的な要因も関わっているのではないかとされています。

神経鞘腫とは、神経を取り巻く鞘から発生する腫瘍を指します。
聴神経は、聴力に関わる蝸牛神経と平衡感覚に関わる前庭神経に大きく分類され、聴神経鞘腫の多くは前庭神経から発生します。
代表的なものでは、左右両側に聴神経腫瘍ができる神経線維腫症II型などの種類があります。この神経線維腫症II型は遺伝子の異常を要因とする説や、遺伝性によるものとする説があります。

聴神経鞘腫は原発性脳腫瘍全体の約1割を占めており、比較的多い腫瘍とも言えます。一般的には腫瘍の成長速度は速くないとされていますが、急激に増大する時期もあるため注意が必要です。聴力障害によって発見に至る場合が多いです。経過観察によって増大の程度を探り、治療のタイミングを見極める必要があります。

聴神経鞘腫の主な検査と診断方法は?

聴神経鞘腫では主にCT検査やMRI検査などの画像検査が行われます。
特にMRI検査では腫瘍の有無やその場所、大きさだけでなく脳の損傷の程度まで確認することができるため診断の助けとなります。
どちらも造影剤を用いて行うことで小さな病変でも描出が可能です。
さらに内耳神経障害の評価のために聴力検査や眼振検査などが必要に応じて行われます。以前はレントゲン検査を用いた内耳道の評価も行われていましたが、CTやMRIの精度が向上したことにより近年ではあまり行われていません。

初期症状として多い耳鳴りや難聴のため聴力検査などで問題が見つかり、MRIなどの画像検査によって腫瘍が発見されるケースが多いです。確実な診断には病理検査が必要です。組織の一部を採取し、腫瘍化した細胞の有無を顕微鏡で確認する検査です。また、手術で腫瘍を取り除いたとしても再発のリスクがあります。手術を終えた後も1年に1回程度定期的にMRI検査を受けて腫瘍の状態を観察することも重要です。

聴神経鞘腫の主な治療方法は?

聴神経鞘腫の治療は、経過観察、放射線治療、開頭手術のいずれかが選択される場合が多いです。

まず聴神経鞘腫は良性の確率が高く、腫瘍の成長も比較的緩やかという特徴があります。
経過観察中に腫瘍が小さくなっていくことも珍しくなく、腫瘍の状態によってはあまり治療を急ぐ必要がないこともあります。無症状の腫瘍の多くは経過観察となります。

一方、腫瘍が大きい場合には早期の治療が必要になり、放射線治療か手術が選択されます。
放射線治療は腫瘍に放射線を照射することで腫瘍が大きくなるのを防ぐ、腫瘍を小さくする効果が期待できます。
大きな腫瘍に対応しきれない点と、腫瘍が小さくなるまでに時間がかかる点が短所と言えます。

腫瘍が3cm以上であったり、放射線治療での改善が見込めない場合には手術での摘出が検討されます。
また、症状が重く水頭症や脳圧上昇がある場合には緊急手術が行われることもあります。髄液のドレナージや脳圧を下げるための開頭減圧術などの方法があります。

聴神経鞘腫の初診に適した診療科目