甲状腺機能亢進症(バセドウ病)と妊娠 コウジョウセンキノウコウシンショウ バセドウビョウ トニンシン

初診に適した診療科目

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)と妊娠はどんな病気?

甲状腺機能亢進症は、甲状腺から甲状腺ホルモンが多量に分泌され、全身の代謝が高まる病気です。
甲状腺が働きすぎることで甲状腺ホルモンの値が高くなり、身体の中でも重要な機能が速く働きすぎてしまうことによるものです。20~50歳代に発症することが多く、中でも30~40歳代が最も多いとされています。男女比は男性1人に対して女性5~6人と、女性に多く女性では10〜20人に1人の割合で発症すると言われています。

典型的な症状としては脈が速くなる、疲れやすくなる、眼球が前方に突出するなどのが挙げられます。その他にも手足の震え、血圧の上昇、不整脈、過剰な発汗、神経質や不安、睡眠障害、体重減少がなども症状として現れることがあります。


甲状腺機能亢進症の原因としてはバセドウ病が最も多いとされています。バセドウ病は自己免疫疾患の一種で、更年期障害などと間違われやすい病気と言われています。症状によって薬物療法、手術療法、アイソトープ治療などの治療が行われます。

主な症状

甲状腺機能亢進症になると疲れやすくなり、動悸(どうき)を1日中感じるようになります。
また手が震えて字が書きにくくなったり、症状が進行すると足や全身が震えるようになります。イライラして怒りっぽくなり、排便の回数が増える、眼球が突出する、動悸息切れ、脈が早くなる、体重減少なども症状のひとつです。

妊娠前と妊娠中の注意点として、一般的に妊娠8~12週頃に甲状腺の機能が亢進する時期があります。これはつわりの症状が強い人によく見られる一時的な機能異常で、時間が経つと完治する場合がほとんどです。一方でバセドウ病の方や甲状腺機能が亢進している状態の方が妊娠し、その状態が持続すると流産・早産・妊娠中毒症になるリスクが高くなるといわれています。

典型的な症状がなく、更年期障害や体調不良とも症状が似ているため疾患に気づかずにいる隠れ甲状腺疾患も多いとされています。適切な治療を受けることで日常生活に支障が出ないようにすることもできます。そのためには早期発見が大切です。

主な原因

甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンが過剰につくられることによって機能亢進症が起こります。
原因としては、一般的に最もよく見られるのがバセドウ病で、中毒性多結節性甲状腺腫、甲状腺炎、中毒性結節なども挙げられます。
また、この病気は家族に同じ病気の人が多いことでもわかるように、遺伝的素因も関係しています。まれに薬やヨウ素が原因となる場合もあります。

バセドウ病は免疫系が抗体を産生し自身の組織を攻撃してしまう自己免疫疾患の1種です。自己抗体によって甲状腺が刺激されることで甲状腺ホルモンが過剰になり血液中に分泌されます。甲状腺が腫大が特徴です。

中毒性多結節性甲状腺腫は過剰な甲状腺ホルモンが結節で作られ分泌されます。高齢者に多く見られるのが特徴です。

甲状腺の炎症が起きる甲状腺炎には亜急性甲状腺炎や無痛性リンパ球性甲状腺炎、橋本甲状腺炎などがあります。まず炎症により甲状腺機能亢進症が起こり、その後蓄えたホルモンが使い切られることで甲状腺機能低下症になり、最終的には正常値に戻るという変遷をたどります。

主な検査と診断

甲状腺機能亢進症は診察所見により心拍数の増加、血圧の上昇、症状を確認し、血液検査や超音波検査などが行われます。

甲状腺機能亢進症が疑われる場合には甲状腺機能検査が行われます。甲状腺機能検査では甲状腺の機能が亢進している際に数値が低くなるTSH値に注目するため、まず初めにTSHの測定を行うのが一般的です。この結果TSH値が正常か高くなるケースもあります。

バセドウ病が原因であると疑われる場合には甲状腺刺激抗体があるかを確認します。甲状腺結節が原因であると疑われる場合には甲状腺の画像検査も用いられます。結節の活動性が亢進し、ホルモンが過剰に作られていないかを確認でき、バセドウ病の診断にも助けとなります。甲状腺結節の画像検査では腺の一部ではなく全体の活動が亢進していることも確認でき、甲状腺炎なら炎症によって腺の活動が低下していることを確認できます。

超音波検査では甲状腺の大きさはもちろん血流、腫瘍がないかについても確認することができCT検査やMRI検査は脳の下垂体を詳しく評価する際に用いられます。

主な治療方法

甲状腺機能亢進症は何が原因で起きているかによって治療法も異なります。多くの場合は治療が可能で、症状が落ち着いたり大幅に緩和するなどの効果が期待できます。
治療をせずにいると心臓や他の臓器にストレスを与えるリスクが高いです。

例えば下垂体からのTSH分泌が亢進している場合には下垂体に対する手術が選択されます。また、甲状腺自体に直接の原因がある場合は内服薬、ラジオアイソトープ治療、手術療法によって甲状腺の機能を直接的に抑える治療方法が採用されます。

若年患者に対しては、甲状腺の一部か全部を除去する甲状腺摘出術が行われることも多いです。甲状腺腫が大きい、治療薬にアレルギーがある、重い副作用があるなどの場合に選択されます。手術を行うと約9割の人は甲状腺機能亢進症が制御されまずが、まれに手術後に甲状腺機能の低下が起こるケースもあります。

バセドウ病の、眼の症状に対しては点眼薬や就寝時の頭の位置を高くするなどの方法があります。かゆみや硬くなった皮膚の症状に対してはクリームや軟膏を用いますが自然に回復することも多いです。