下垂体性小人症・成長ホルモン分泌不全性低身長症 カスイタイセイコビトショウ セイチョウホルモンブンピツフゼンセイテイシンチョウショウ

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下垂体性小人症・成長ホルモン分泌不全性低身長症はどんな病気?

成長ホルモン分泌不全性低身長症とは脳のなかにある下垂体という器官から分泌される成長ホルモンの量が少ないために、成長率が悪くなり低身長になる病気です。
かつては下垂体性小人症とも呼ばれていました。
脳の奥には下垂体と呼ばれる成長ホルモンを分泌する部分があります。成長ホルモンが分泌されると肝臓や骨に働きかけ、それによって身長が伸びる仕組みになっています。

低身長の約7割が両親の身長が低いことによる体質によるものとされています。また、その他にも脳腫瘍、クッシング症候群、骨・軟骨に関わる病気、慢性腎不全、甲状腺機能低下、栄養不足、ステロイド剤の長期内服などさまざまな原因があり、成長ホルモン不足による低身長は全体の約10%程度とされています。

男女比は3:1と男児がやや多い傾向にあります。子どもの身長を定期的にグラフにして身長曲線に沿って観察することが早期発見につながります。早期に診断して治療を開始することで身長をある程度伸ばすことができます。

主な症状

成長ホルモン分泌不全性低身長症の症状は、知能には問題がなく成長率の低下と低身長のみと言えます。
ただ、先天的に重症の成長ホルモン分泌不全がある場合には、新生児期に低血糖が認められることがあります。
また、まれに下垂体から分泌されている他のホルモンの分泌不全を伴うことがあり、甲状腺機能低下症、性腺機能低下症、副腎機能低下症、尿崩症(にょうほうしょう)などを伴うことがあります。

特発性の場合、出生時の体重は正常で、幼児期くらいから著しく成長が遅れていくという点が特徴です。
一方病気の発病がきっかけとなる後天性の場合は、正常に成長していた子どもが発病から急に身長が伸びなくなる点が特徴です。身長は低いものの、体格はバランスを保ちながら成長していきます。骨の発達が遅れてしまうため、骨年齢も遅れたり、成長ホルモン以外の分泌障害がある場合には、欠落したホルモンが関連する症状も併発します。例えば性腺ホルモンが障害されれば性的成熟が遅れる傾向があります。

主な原因

成長ホルモン分泌不全性低身長症は何らかの原因で成長ホルモンの分泌が低下したり欠如した場合に起こります。
成長ホルモンは脳の奥の下垂体と呼ばれる場所から分泌され、肝臓や骨に働きかけることで身長を伸ばす役割を担っています。

成長ホルモン分泌不全性低身長症の約95%は原因が明らかでなく、特発性と呼ばれます。約5%は、脳腫瘍(頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)が多い)などの器質的な原因で起こります。特発性の原因として多いとされているのが骨盤位(逆子)分娩などの分娩時の異常です。周産期に産道内を通過する際に起こる頭部の変形が影響を与えるものと考えられています。

低身長の定義は年齢・性別ごとのデータを用いたSDスコアで判断できます。(現在の身長-標準身長)÷SDで求められる値で、SDスコアが-2.0SD未満を低身長としています。年齢・性別ごとの基準と比較して年間の身長増加が-1.5SD未満の状態が続く場合には成長ホルモン分泌不全性低身長症の可能性があるとされています。

主な検査と診断

成長ホルモン分泌不全性低身長症の検査、診断には身長測定の他、レントゲン、成長ホルモン分泌負荷試験などが用いられます。
身長測定では平均身長との差を確認します。両親の身長の情報も診断に欠かせない情報です。
また、成長ホルモン分泌不全性低身長症は骨年齢が実年齢より低くなる点が特徴であるため、手首のレントゲンによって骨年齢を確認します。他の要因で起こる低身長の可能性も確認するため、必要に応じてMRI検査やCT検査、染色体検査、脳波検査、頭部エックス線検査など下垂体と周辺の画像診断も行われます。

成長ホルモン分泌不全性低身長症が疑われ、確定診断に用いられるのが成長ホルモン分泌負荷試験です。入院で行われる検査で、成長ホルモンが体内でどの程度分泌されているのかを確認することができます。2種類以上の負荷検査で基準を下回るとき診断がくだされます。この検査では数値によって完全欠損症、部分欠損症かも判断できますが、6歳前後で検査を行うのが推奨されています。

主な治療方法

成長ホルモン分泌不全性低身長症の治療には下垂体ホルモン製剤が用いられます。週6~7回自宅で皮下注射を行うことで、成長ホルモンを補給することができます。
方法の指導を受けて家族や本人が1日1回、ペン型の専用注射器で臀部、腹部、太もも、上腕などに注射します。副反応として注射部位の発赤、股関節や膝の痛みが現れることもあります。

この治療中に甲状腺ホルモンが低下するケースがあり、必要があれば甲状腺ホルモン内服も並行して行われます。骨年齢が10歳以下の時点で治療を開始することが推奨されており、早期に開始するほど効果も見込めます。10歳を過ぎてからの治療ではあまり効果が期待できないとされています。定期的な検査によって治療を継続していくことが大切で、重症の場合には成人になっても量を少量にして補充を継続することもあります。これにより生活習慣病の予防や生活の質の向上が見込めます。

比較的高額な治療となるため医療費助成制度がありますが、助成を受けられる身長の基準は-2.5SD未満となっています。