いぼ痔(痔核) イボジ

初診に適した診療科目

いぼ痔(痔核)はどんな病気?

いぼ痔は医学用語では「痔核(じかく)」と呼び、肛門の病気の約半数を占めます。直腸と肛門の境界である歯状線より口側にできたものを「内痔核」、歯状線より外側にできたものを「外痔核」といいます。
 肛門から2~3cm奥には内痔静脈叢(そう)と呼ばれる血管の集合した部位と、肛門を閉鎖するためのクッション組織があります。この静脈叢が過度に膨らみ、何かしらの症状を伴う状態が、内痔核の始まりです。
 排便時のいきみや、長時間の座位や立位で圧力をかけていると膨らみが成長し、周囲の支持している組織の緩みも加わり、排便時に肛門の外へ顔をのぞかせるまでに大きくなってきます。この状態を「脱肛」といいます。
 初期では肛門から出た内痔核は、排便後に肛門のなかに戻っていくのが自然なのですが、さらに大きくなると、手で押し込んでやらないと戻らなくなります。そして、さらに悪化すると、手でも戻せなくなって、常に肛門の外に出たままになります。

主な症状

いぼ痔の症状は主に「出血」「痛み」「脱肛(痔核の脱出)」です。内痔核と外痔核で症状は少し異なります。
 内痔核の初期症状は、肛門の違和感や出血(伴わない場合もあります)です。その後、徐々に痔核の脱出症状がでてきます。痛みは初期にはある場合もありますが、長期に患っている場合痛みが消失する場合もあります。
 
外痔核は肛門の周囲にぷっくりした膨らみを触れ、痛みを伴います。

主な原因

いぼ痔が発生する原因は、同じ姿勢が長い・力む事が多い・排便の時間が長い・辛いものの食べ過ぎ・アルコールの飲み過ぎ・妊娠・出産が挙げられます。これらの原因があると肛門周囲に血が溜まりやすくなり、いぼ痔の元となる静脈瘤が発生します。一方、主たる原因が無くても、いぼ痔ができる場合もあります。
 その後は排便による刺激などで症状が悪化してくる場合があり、特に便秘での気張りすぎや長時間の排便時間は注意が必要です。

主な検査と診断

 まずは何時から症状が出たのか、原因があったのか、便秘や下痢といった排便状況について問診します。
 
検査法はズボンやパンツをひざの辺りまで下ろし、診察台に寝ます。医師は手袋をはめ、ゼリーなどを塗り、触診を行います。力を抜いてリラックスすることが大切です。さらに詳しく調べる場合は、肛門鏡を用い少し肛門を開いて肛門内の状態や痔の脱出の程度を確認します。約12分程度の診察時間です。

いぼ痔の分類
 痔核の出てくる程度により4段階に分類します。Ⅰ度からⅣ度に分類され、数字が大きくなるほど痔核の脱出の程度が強いです。
 
・痔核のGoligher分類
Ⅰ度: 排便時にうっ血し、膨隆する
Ⅱ度: 排便時に内痔核が脱出するが、排便後に自然還納する
Ⅲ度: 脱出を納めるのに用手的還納を要する
Ⅳ度: 痔核が大きく外痔核まで一塊化しているため完全には還納できない

主な治療方法

・保存的療法
 食物繊維の摂取やお薬などを使って便通を改善し、便秘・いきみ・下痢を避けることが、痔核の保存的治療の基本です。痛みや出血などの局所の血流障害を伴う痔核には、温める温浴療法も効果的です。
薬物療法としては、肛門の炎症や痛みを和らげる座薬や飲み薬などがあり、痛みや出血の改善に効果がみられます。しかしながら一定期間使用しても痔核が小さくならず、出血が続く場合は、保存的療法の限界と考えて下さい。
 
・手術の適応
 「排便のたびに脱肛する」「指で押し込んでもすぐ出てくる」「歩いているときに脱肛する」「出たまま戻らない」など、Ⅲ度からⅣ度に達する内痔核では日常生活が困難となるため、手術が必要となります特に、座薬などを使っても効果があまりなかったり、何度も再発する場合は、手術適応となります。
長い期間、痔を患っている場合、座薬の効果が乏しいことが多いです。
 
・硬化療法(こうかりょうほう)
 内痔核に対してALTA(Aluminum Pstassium Sulfate Hydrate Tannic Acid)という薬剤(製品名:ジオン)を注射することで、痔核を固めてしぼませる痔核硬化療法です。適応は前述のGoligher分類でⅡ度とⅢ度です。
ALTAを内痔核に注射することで、炎症・硬化が起こります。徐々に内痔核が縮小し、出血や肛門からの脱出がなくなります。
切除しませんので痛みが無く、早期に社会生活への復帰が可能です。内痔核のみに有効で、外痔核を伴う場合や脱出成分が多い場合は行いません。再発率は術後5年で10~20%程度、術後10年で15~40%程度と報告されています。また頻度は少ないですが、潰瘍形成からの出血や肛門狭窄が報告されています。
またこのALTA注射薬を使用できるのは講習を受けた資格保持の肛門科専門医師に限られています。
 
・結紮切除術(けっさつせつじょじゅつ)
 痔核根治術である結紮切除術は、痔核の成分を切除する最も標準的な痔の手術です。適応は前述のGoligher分類でⅢとⅣ度です。
肛門部の皮膚を含める形で肛門外より肛門内に向かって痔核を切除します。痔核は表面の浅い層にあるので、肛門の筋肉である肛門括約筋(かつやくきん)を傷つけることはありません。切除後は、内痔核のあった付近は縫い合わせをし、皮膚に近い部位は縫合せず自然治癒に任せます。
 
・切除術と硬化療法の併用療法
 ALTA硬化療法は内痔核に対する治療方法ですが、内痔核に外痔核が合併している場合も多いです。この場合、内痔核には硬化療法を行ない、外痔核は手術で切除する併用療法を行なう場合があります。またサイズが大きく脱出の程度が強い内痔核には切除術を行ない、切除するほどではない痔核には硬化療法を併用する場合もあります。