膝蓋骨脱臼 シツガイコツダッキュウ

初診に適した診療科目

膝蓋骨脱臼はどんな病気?

膝蓋骨脱臼とは、お皿のような形状をしている膝蓋骨が、本来の位置からずれている状態を指します。
膝蓋骨は本来大腿骨正面の溝にはまるような場所に位置しており、この溝からはずれてしまうことを脱臼、溝からずれてしまうことを亜脱臼と言います。
膝の構造や形態的な特徴から、ほとんどの場合膝蓋骨が外側に脱臼する外側脱臼です。
膝関節に痛みや腫れなどの症状が現れます。反復性脱臼と呼ばれる脱臼を繰り返す状態になると、痛みや腫れなどの症状はあまり現れなくなる一方で、膝の不安定感を強く感じるようになります。若い女性に多く発症が見られ、スポーツ活動中に生じるケースが多いです。

具体的にはジャンプの着地など筋肉が強く収縮した際や、膝が伸びた状態でねじるような力が加わった際などに生じます。

脱臼が起こっても多くの場合骨は自然に元の位置に戻ります。
しかしその際に軟骨や骨の損傷を生じることがあります。また膝蓋骨脱臼は一度起こると再脱臼が起こりやすい点も特徴と言えます。
治療には保存療法や手術、予防を目的としたリハビリテーションなども行われます。

主な症状

膝蓋骨脱臼を発症すると、膝痛、膝に力が入らない、膝がガクッとするなどの特徴的な症状が現れます。
特に受傷時に膝に生じる痛みは激痛で、その他にも腫脹、関節血腫、歩行障害、膝の可動制限などの症状も現れます。
また膝蓋骨が不安定になることから、膝に感じる不安定感は膝蓋骨脱臼の特徴的な症状の一つです。
また、日常的に見られる症状としては膝関節前面の疼痛、膝蓋骨内側の自発痛、圧痛などが挙げられます。
膝蓋骨脱臼を発症すると、スポーツ活動などに影響を与えるだけでなく、日常生活を送る上でも支障を来す症状も多いと言えます。

また膝蓋骨脱臼は再発しやすく、繰り返し脱臼や亜脱臼が起こるケースも頻繁にみられます。
この場合、膝蓋骨の下にある軟骨が柔らかくなる軟骨軟化症や、軟骨がすり減って関節に変形が生じる変形性関節症などに移行するケースもあります。
また脱臼だけでなく骨折を伴うケースでは、小さな骨片が移動することで膝以外の部位に痛みを生じることもあります。

主な原因

膝蓋骨脱臼は、太ももの筋肉が強く収縮するなど直接的な力がを原因に発症するケースと、先天的な原因によって発症するケースとがあります。
ジャンプの着地などで、膝を伸ばす太ももの筋肉が強く収縮したときに発症するケースは特に多いです。
膝蓋骨は大腿骨に対して外側に脱臼することがほとんどで、ほとんどの場合は自然に整復されます。

また先天的な原因としては大腿骨にある膝蓋骨関節面の溝が浅いなどの膝蓋骨や大腿骨の形の異常、脛骨粗面が膝の中心より外にある、大腿四頭筋の作用する方向と膝蓋靭帯の方向が異なっているなどが挙げられます。
また初回の脱臼は10代の若い女性が生じることが多く、その後20~50%程度の方が繰り返し脱臼をきたす反復性脱臼に至ることがあります。
膝蓋骨の不安定感や膝蓋骨周囲の痛み・だるさが続く膝蓋骨亜脱臼症候群も膝蓋骨脱臼と関連する疾患と言えます。
また膝蓋骨の脱臼や整復の際に、膝蓋骨や大腿骨の関節面の一部が骨折する場合があります。

主な検査と診断

膝蓋骨脱臼は診察によって受傷機転や膝蓋骨内側の痛み、腫れ、膝蓋骨の不安定性、不安感が見られることから疑われます。触診などで比較的容易に診断することが可能です。

その後、脱臼の有無を確認するためにX線検査、CT検査、MRI検査などが行われます。骨折の有無を確認するために、必ずX線検査が行われます。
骨軟骨骨折を伴う場合は、関節血腫を生じ、膝蓋骨の外方に不安定性が見られるのが特徴です。
脱臼の場合、膝蓋骨が大腿関節面の外側に脱転しているのが確認でき、亜脱臼の場合は大腿骨外側に引っかかったり変位していることが確認できます。
CT検査では関節の骨格上の不具合なども確認することができます。MRI検査では靭帯の断裂や軟骨の欠損など、より詳細に病変部位を確認することができます。

膝蓋骨脱臼は自然に元の位置に戻るケースも多いため、骨折などが見られない場合にはこれらの検査を行っても診断に至らないこともあります。
また生まれつき脱臼しやすい状態にある恒久性脱臼などは、幼児期頃に発見されるケースも多いです。

主な治療方法

膝蓋骨脱臼のできるだけ早期に医療機関で徒手整復を行い、脱臼した骨を元に戻すことが重要です。
整復後はギプスや装具固定によって安静を保ちます。回復する前にあまりに早くスポーツなどに復帰すると、慢性的な関節の緩みの原因となります。
再発しやすい状態に陥るため、復帰時期は医師の指示に従うことが重要です。
日常でもしばらくはサポーター装具やテーピングを用いることで外側方向の力を抑止する効果が期待できます。

これらの保存療法で改善が見られない場合や反復性脱臼の状態にある場合、大きな骨折を伴う場合、日常生活に支障を来している場合などには手術が検討されます。
主に内側関節包の縫縮、外側関節包の切離などの方法が状態に応じて選択されます。
膝蓋骨と大腿骨をつないでいる内側の靭帯を再建する方法もあり、これには自身の膝屈筋腱を使用します。

長期に渡り脱臼を繰り返している場合には筋力低下も見られるため、筋力を強化する術後のリハビリテーションが重要になります。