見当識障害 ケントウシキショウガイ

初診に適した診療科目

見当識障害はどんな病気?

見当識障害とは、相手や周囲の状況、時間、場所など自分自身が置かれている状況を正しく認識できなくなる障害です。脳血管障害、アルツハイマー病、統合失調症、認知症の患者などに多く見られる傾向があります。
主に引っ越しや入院など環境が大きく変化したタイミングで発症しやすいとされています。認知症の場合、まず物忘れの症状が現れ、それに続く形で見当識障害が生じるケースが多いとされています。

見当識障害を発症すると自分が置かれている状況が正しく認識できなくなるため徘徊したり、季節が分からなくなるため気温の高い夏場に服を着こんで脱水症状に陥るなど、関連してさまざまな症状を引き起こします。

対策として行動を制限してしまうことは逆効果です。時間の認識にはカレンダーを活用したり、散歩によって適度な運動を行うなど、日常生活のコミュニケーションによって現実への認識を深めることが重要です。リアリティオリエンテーションと呼ばれる訓練の方法も有効とされています。

主な症状

見当識障害は、現れ方はさまざまですが、時間や季節、場所、人物に対しての状況把握ができなくなる点が代表的な症状と言えます。
具体的には、時間が季節が間違えて認識することから、遅刻が増えたり、外出の準備ができないなどの症状が現れ、自分の誕生日や年齢も分からない状態になる場合があります。また、その季節に適した服装を選ぶことも困難になります。
場所の認識ができない点では、通い慣れた道順が分からずに迷ってしまう、歩いて行けないような遠い場所まで歩いて行こうとする、家の中でも部屋の場所を間違えてしまうなどの症状が現れます。
部屋の場所が分からないために、トイレにたどり着けずに失禁してしまったり、別の場所で排泄してしまうケースもあります。

人物が分からなくなる症状は、見当識障害がある程度進行している場合に現れることが多いです。
家族や親戚、友人など身近な人を認識できなくなったり、自分と相手との関係が分からなくなることで実子と孫を間違えるなどの症状が挙げられます。

主な原因

見当識障害を発症する原因として最も代表的な疾患が認知症です。
認知症によって認知機能が低下することで見当識障害が現れます。
その他、脳梗塞などの脳血管障害、アルツハイマー病、統合失調症なども発症の原因となります。
特に発症の原因となることが多い認知症は、脳の働きの低下、環境、体験、気質などが関連して発症すると考えられています。認知症には発症に関わる遺伝子の存在が確認されているものの、その影響は限定的でその他の要因と組み合わさった発症すると考えられています。
見当識障害は記憶障害、実行機能障害などと並ぶ、認知症の症状の典型的な症状の一つと言えます。

また、環境の変化によって見当識障害の症状が強く現れるケースがあります。具体的には引っ越し、入院、部屋の模様替え、新たに同居を始めるなども症状に影響を与えるとされています。見当識障害の患者の周囲の人は、むやみに物を動かしたり捨てたりしないよう配慮する必要があります。見当識障害を発症すると、時間、場所、人間関係の順番で認識ができなくなる点が特徴です。

主な検査と診断

見当識障害は原因となる疾患の検査や診断を通して確認されるケースが多いです。
特に認知症の診断には認知機能検査、血液検査、画像検査、脳脊髄液検査などが行われます。見当識障害は脳機能の低下によって現れる症状とされています。
認知機能検査では、記憶、注意、計算、言語などに関連する認知機能を確認することができます。

画像検査では脳の状態を確認する目的でCT検査、MRI検査などが行われます。
脳の萎縮や脳梗塞、出血による可能性を探ります。
さらに詳しく脳の機能を調べるために脳の血流や脳の代謝異常などの検査も必要に応じて行われます。
脳脊髄液検査は脳脊髄液を採取して検査することで脳炎の有無を確認できる検査ですが、同時にアミロイドβ、タウなどの数値を確認することでアルツハイマー病の診断にも役立ちます。血液検査は主に認知症以外に脳の機能低下の原因となる疾患がないかを探る目的で行われ、ホルモン、栄養素、代謝の異常や感染症の有無を確認します

主な治療方法

見当識障害は原因となっている疾患の治療を行うことが優先されます。
例えば認知症なら、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、血管性認知症などいくつかの種類に分類されており、病型に適して治療が行われます。

見当識障害の症状に対しては、具体的な症状に併せて対策をとる方法が一般的です。
例えば時間に対する認識ができなくなっている場合なら、カレンダーを用いて何月何日何曜日なのかを分かりやすくしたり、1日のスケジュールを作成するなどの方法も効果的です。これから何をするのか、今はどんな時間なのかを周囲の人がこまめに声掛けすることも重要です。
また、家にこもりきりになり動かずにいると脳への刺激も減少します。散歩などの適度な運動を取り入れることで気分展開や心地よい疲労に繋がり、リハビリにも有効です。排泄の失敗に対しては、トイレの表示を分かりやすくしたり、定期的にトイレへ連れて行くなどのサポートも大切です。
またリアリティオリエンテーションと呼ばれる認知症の見当識障害に対する訓練なども現実への認識を深める効果が期待できます。