進行性核上性麻痺 シンコウセイカクジョウセイマヒ

初診に適した診療科目

進行性核上性麻痺はどんな病気?

進行性核上性麻痺とは、脳の基底核、脳幹、小脳の神経細胞が徐々に減少していく疾患です。
転びやすい、下の方が見にくい、しゃべりにくい、飲み込みにくいといった症状の他、認知症なども出現する点が特徴です。
症状が類似している疾患としてパーキンソン病が挙げられますが、パーキンソン病と比較して進行速度が速い傾向があり、より重度の筋強剛と身体障害を生じます。難病に指定されており、推計で人口10万人に対し約5人の発症がみられます。
パーキンソン病よりもまれな疾患と言えます。特に40歳以降によくみられ、平均すると60歳代での発症が多い傾向にあります。
また男女で比較した場合、男性に多いとされています。

発症の原因は解明されておらず、診断は症状に基づいて行われます。
効果的な治療は確立されていませんが、パーキンソン病の治療薬によって症状が緩和されるケースもあります。
進行が速い疾患であり、早期に嚥下障害を生じた場合生命予後が不良とされます。
平均罹病期間は5~9年で、死因は肺炎や喀痰による窒息が最も多いとされています。

主な症状

進行性核上性麻痺の代表的な症状として、転びやすさと運動障害、眼球運動障害、構音障害、嚥下障害、認知症などが挙げられます。
症状の多くは通常40歳以降に現れ、初期段階で現れる症状としては首を曲げないと上を見ることができなくなる、階段を昇り降りができなくなるなどが挙げられます。
視覚に関する症状では、眼を下に向けられなくなり、物を注視したり物を眼で追うことができなくなります。
視界がかすむ、ものが二重に見えるなども症状のひとつです。

また筋肉が固くなり、動作が遅くなったり歩行が不安定になります。
後ろ向きの転倒が増え、徐々に話したり飲み込む力が弱くなります。
これらの体の固さ、動きにくさの症状をパーキンソン症状と呼びます。進行すると、うつ病や認知症などを発症するケースも多くみられます。
不眠、興奮、易怒性、無関心、感情の急激な変動なども症状の一つです。発症後10年以内に死に至るケースが多いとされています。

主な原因

進行性核上性麻痺は大脳基底核と脳幹をはじめとする脳の多くの部位が侵され、神経細胞が徐々に減少していくことで症状が現れます。
具体的には脳内の黒質、中脳上丘、淡蒼球、視床下核、小脳歯状核などの神経細胞が減少し、神経原線維変化という異常構造が出現します。
また、グリア細胞内にも異常構造が出現し、これらはリン酸化したタウという構造物であることが明らかになっています。
異常タウ蛋白が脳内の神経細胞とグリア細胞の両方に蓄積し、神経細胞の変性や脱落が進行すると考えられています。
ただ現在のところ何故このような病変が生じるのかといった直接的な原因はわかっていません。
パーキンソン病のような発症の危険因子に関する研究もいまだ行われておらず、現在のところ遺伝性はないものとされています。

一般的には50歳以上で発症するケースが多く、10万人に対し約1人前後に発症するとされています。高齢になるほど発症率は高くなる傾向があります。

主な検査と診断

進行性核上性麻痺は一般的には医師による評価とMRI検査などの検査結果によって診断がくだされます。
進行性核上性麻痺は特徴的な症状が多く見られますが、中でも上下方向の眼球運動障害や転倒しやすさなどの症状がみられる場合には、進行性核上性麻痺の可能性が強く疑われます。
また、現れる症状から経過を分類し、I期~III期とします。厚生労働省による診断基準も用いられ、条件を満たすものを進行性核上性麻痺と診断します。
具体的な条件としては40歳以降の発症、緩徐進行性であることに加え、垂直性核上性眼球運動障害や姿勢の不安定さや易転倒性、筋強剛などの症状がみられ、かつパーキンソン病や脳炎、外傷など他の疾患を除外するものです。

また脳のMRI検査では、中脳被蓋の萎縮、第三脳室の拡大などが特徴的な症状が確認できます。
症状が特に類似するパーキンソン病との鑑別のために、パーキンソン病の治療薬を投与して効果を見ることもあります。

主な治療方法

進行性核上性麻痺は、現在のところ特効薬は存在せず効果的な治療法は確立していません。
症状に対応するための薬として、パーキンソン病の薬が用いられます。
パーキンソン病治療薬であるドパミン作用薬は、初期であれば筋肉の固縮に効果が現れる場合がありますが、その効果は一時的なものです。
その他には抑うつに効果がある三環系抗うつ剤、セロトニン代謝に作用する薬剤、ノルアドレナリン作動薬、コリン作動薬、塩酸アマンタジンなどが症状に併せて使用されます。

関節を柔軟に保つためのリハビリテーションなどの理学療法、作業療法も重要です。
頚部や体幹のストレッチ運動、バランス訓練、言語訓練、嚥下訓練などが代表的な例です。
特に日常動作の訓練をすることで転倒を予防するのが大きな目的です。
また進行性核上性麻痺は根治的治療方法がないため最終的に死に至ります。
終末期に希望する治療について事前指示書を作成して医師と認識を確認しておくことも大切です。