ACTH分泌腫瘍 エーシーティーエイチブンピシュヨウ

初診に適した診療科目

ACTH分泌腫瘍はどんな病気?

ACTH分泌腫瘍とは、副腎皮質刺激ホルモンを産生する下垂体腺腫の一種です。
ACTHとは副腎皮質刺激ホルモンを指します。
下垂体腫瘍から分泌されるホルモンが過剰になるため、副腎が刺激され、血中のステロイドホルモンのひとつである副腎コルチゾールの分泌が過剰になる疾患で、副腎性クッシング病とも呼ばれています。
脂肪沈着による肥満、筋肉萎縮、出血斑、骨粗しょう症になりやすくなるなどの症状が現れるのが特徴です。
ACTH分泌腫瘍を発症すると、免疫抑制効果のあるステロイドホルモンが過剰になるため、感染症などに非常に弱い状態に陥ります。
その結果敗血症を引き起こし、死に至るケースもあります。

ACTH分泌腫瘍の治療は手術による切除が一般的です。小さな腫瘍まですべて取りきる必要があるため、術前の検査も重要と言えます。
治療後はホルモンを補充するなどの治療も行われ、経過が順調であれば術後1〜2年ほどで改善する場合もあります。

主な症状

ACTH分泌腫瘍を発症すると、その腫瘍の働きによって副腎皮質刺激ホルモンが過剰な状態になり、伴って副腎皮質ホルモンが増加します。
コルチゾールと呼ばれる副腎皮質ホルモンが増加すると、顔が丸くなる満月様顔貌、体幹部が太り手足は太らない中心性肥満、妊娠線のような筋である赤色皮膚線条などが典型的な症状として現れます。
これらは外見に現れる症状の一部ですが、体内にもさまざまな症状が現れます。代表的なものには高血圧、糖尿病、骨粗しょう症などが挙げられます。
これらの症状が現れるのは、コルチゾールの働きで血糖値が上がりすぎたり、血圧が上がりすぎることが原因です。
コルチゾールの値が常に高い状態をクッシング症候群と呼びます。

また、コルチゾールなどのステロイドホルモンには炎症を抑える働きや、免疫抑制効果があり、ステロイドホルモンが増加した状態は免疫が低下している状態とも言えます。
これによって普段であればかからない感染症などのリスクも高い状態と言えます。

主な原因

ACTH分泌腫瘍は、下垂体と呼ばれる内分泌器官にできる下垂体腺腫の一種です。
下垂体の一部の細胞が腫瘍化したものですが、腫瘍が生じる原因は現在のところ不明です。

下垂体は頭蓋骨の中にある器官のひとつで、さまざまなホルモンを分泌する役割を果たしています。
ACTH分泌腫瘍を発症すると、生じた腫瘍から副腎皮質刺激ホルモンが作られます。副腎皮質刺激ホルモンは名称の通り、副腎皮質の働きを促進させるため、副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されます。それによって副腎皮質ホルモンの一種であるステロイドホルモンが血液中に増加します。
中でもコルチゾールと呼ばれるホルモンが代表的で、これはストレスホルモンとも呼ばれるホルモンで、通常はストレスから身体や心を守る役割を果たしています。
ストレスがかかった状態になれば、血糖値が下がらないように上昇させる働きや、血圧が下がらないように上昇させる働きがあります。
ACTH分泌腫瘍は、このコルチゾールが過剰になることで働きが強く出てしまい、糖尿病、高血圧などのリスクを高めてしまうものです

主な検査と診断

ACTH分泌腫瘍は血液検査、尿検査、CT検査などの結果から診断されます。
血液検査では血液中に含まれるコルチゾール、アルドステロン、性ホルモン、副腎皮質刺激ホルモンなどの数値を確認します。
コルチゾールの数値は尿検査でも確認することができます。これらの結果からACTH分泌腫瘍が疑われる場合、腫瘍を確認するために頭部レントゲン検査、CT検査、MRI検査などの画像検査が行われます。
これらの検査によって腫瘍の大きさ、広がりなどを把握することができます。この治療は手術前の情報としても役立ちます。

また内分泌学的検査と呼ばれる検査も必要に応じて行われます。ホルモンを分泌刺激する物質を投与して、その変化を血液検査によって確認する検査です。
デキサメタゾンというコルチゾールよりも強力なステロイドの薬を量を変えて投与し、その変化を見ると最終的な原因が腫瘍にあることを確認できます。
副腎自体に異常があるという場合と判別するために有効な検査と言えます。

主な治療方法

ACTH分泌腫瘍は、下垂体腫瘍の外部的治療による摘出またはコルチゾールを合成を抑制する薬剤を服用するなどの治療が行われます。
基本的には手術による摘出が選択されます。鼻から内視鏡を挿入して摘出する方法が多いです。
他の下垂体腺腫とは異なり、小さな腫瘍もすべて摘出する必要があります。
そのため浸潤性の腫瘍の場合、腫瘍の接した正常な下垂体を一部含めて採取し、腫瘍が付着している硬膜組織なども採取します。
手術によってすべて摘出するのが困難なケースでは、薬物療法や放射線治療なども併せて治療が行われます。

ACTH分泌腫瘍は手術による切除を行った後、副腎皮質刺激ホルモンを産生する能力が低下している場合が多いです。
これは長い期間副腎皮質刺激ホルモンが過剰な状態にさらされていたためです。
副腎皮質刺激ホルモンが不足した状態になるため、ホルモンを補充する治療も行われます。
この状態は術後1〜2年で改善する場合もあれば、その後何年もホルモン補充が必要になる場合もあり、さまざまです。