好酸球性中耳炎

初診に適した診療科目

好酸球性中耳炎はどんな病気?

好酸球性中耳炎とは、血液中の好酸球が中耳から中耳腔へ広がり慢性的な炎症を起こす難治性の中耳炎を指します。
気管支喘息や好酸球副鼻腔炎に合併して発症するケースが多く、さまざまな疾患を引き起こす原因にもなります。
鼓膜に穿孔と呼ばれる穴が開き、その状態が長く続くものを慢性穿孔性中耳炎型と呼び、肉芽の増殖が見られるものを肉芽性中耳炎型と呼びます。
主に鼓室粘膜に滲出した好酸球が起こすアレルギー反応が原因で発症すると考えられています。
好酸球性中耳炎は約7割が両側性と言われています。

症状としては、中耳腔に粘度のある滲出液が溜まったり、音を伝える機能が働かなくなる伝音声難聴が代表的です。
症状が悪化すると正しく音を捉えられなくなる感音性難聴、耳鳴り、めまいなどが現れます。

治療にはステロイド薬を用いた薬物療法が一般的です。好酸球の浸潤を抑制する効果が期待できます。
ただ再発のリスクが高いため、定期的に通院し中耳の洗浄を行う必要があります。

主な症状

好酸球性中耳炎を発症すると中耳に貯留した滲出液(耳漏)に好酸球の浸潤が見られます。
かたい貯留液が中耳腔に溜まるため、難聴、耳閉感、耳鳴りなどの症状を引き起こします。
このニカワ状の貯留液は好酸球性中耳炎の特徴的な症状とされています。
両耳に症状が現れるケースが約7割とされいます。特に40~60代での発症が多い傾向にあり、男女で比較すると女性にやや多いとされています。


鼓膜に穴があく鼓膜穿孔は全体の約5割に見られ、これを慢性穿孔性中耳炎型と呼びます。
粘膜の肉芽化は全体の約3割に見られ、肉芽性中耳炎型と呼びます。これらは細菌感染を生じた際に見られる症状です。

喘息の発作を生じた際に、症状が悪化するケースが多く発作がなくなると耳の症状も治まることが多いです。
発見や治療が遅れて症状が進行すると約半数で内耳傷害を生じ、感音難聴の症状が現れます。その中の約1割には高度難聴へ移行するリスクがあります。

合併症としては気管支喘息、副鼻腔炎が高い割合で見られます。

主な原因

好酸球性中耳炎は、原因の特定が難しいことでも知られていますが、喘息など全身で好酸球が活性化されやすい状態で細菌などが中耳腔に侵入したり、アレルギー反応を生じることが原因であることが多いとされています。
それらの刺激によって血液中の白血球の一つである好酸球が活性化して発症に至ります。
気管支喘息、好酸球性副鼻腔炎などに代表される全身性のアレルギーを持っている人は一般の人に比べて発症するリスクが高いとされています。
気管支喘息、好酸球副鼻腔炎などは特に多い合併症として挙げられます。強く鼻をかんだり、鼻をすする刺激によっても症状が悪化する場合があります。
耳が聞こえにくくなるなどの症状は、好酸球性中耳炎の典型的な症状とも言える粘り気のある貯留液が耳の中耳に留まることによって起こります。

好酸球に含まれる好酸球塩基性蛋白は、本来寄生虫を退治する役割を果たしています。
中耳に高度の浸潤が生じると組織障害を引き起こし、その働きが障害されます。

主な検査と診断

好酸球性中耳炎の診断には鼓膜の観察、細菌検査、聴力検査などが行われます。
特に好酸球性中耳炎の検査の中で、滲出液の一部を採取して顕微鏡で確認する検査は重要です。
好酸球性中耳炎であればこの検査で好酸球が陽性を示します。血中好酸球数が多く、好中球細胞質抗体が陰性であることも特徴と言えます。
より詳しい検査としてはCT検査などの画像検査が行われます。
好酸球がどこまで浸潤しているか、広がりの程度や状態を画像で確認することができます。
聴力検査は、難聴の症状が現れていないかを確認する目的で行われます。

基本的に診断をする際の基準が定められており、大項目としては中耳貯留液中に好酸球が存在する滲出性中耳炎または慢性中耳炎。
さらに小項目としてニカワ状の中耳貯留液、気管支喘息や鼻茸の合併、中耳炎に対する従来の治療に抵抗があるかなどが挙げられています。
原則として大項目+小項目2つ以上に該当する場合、好酸球性中耳炎と診断されます。
項目に当てはまっても除外される例としては好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、好酸球増多症候群などが挙げられます。

主な治療方法

好酸球性中耳炎の治療はステロイドの内服・局所注入を中心に行われます。
全身投与を持続することで症状の悪化を防ぎ、良好な状態を保つことができますが、副作用もある治療法のため可能であれば局所的な投与が検討されます。
病変が鼓室のみの場合にはステロイド鼓室内注入によって症状をある程度コントロールすることも可能です。
特に喘息の治療を行っている患者さんの場合にステロイドを用いる場合には、内科医と連携して治療を進めます。
また中耳の清潔を保つために定期的な洗浄も重要です。貯留物の除去には温ヘパリン生食を用いた耳浴、吸引が行われます。

細菌感染を併発している場合には手術による治療も方法の一つに挙げられます。
鼓膜切開、換気チューブ挿入、肉芽・耳茸の緩徐などが挙げられます。
高度の細菌感染を起こしている場合や頭蓋内合併症を伴っている場合など、特に症状が深刻な場合には鼓室形成術も検討されます。
しかし聴力の改善や耳漏の制御が難しく、耳が聞こえなくなるリスクも伴うため、その機会は限定的です。
両側聾の状態にある場合には、人工内耳手術なども検討されます。