多発動脈炎 タハツドウミャクエン

初診に適した診療科目

多発動脈炎はどんな病気?

結節性多発動脈炎は動脈に炎症が起こることで動脈の壁が破壊されたり、血流に障害が起こったり動脈瘤が生じる疾患です。症状が進行すると動脈に沿ってボコボコとした形に盛り上がることもあります。

動脈は血管径の大きさから、大型、中型、小型、毛細血管に分類されます。主に中型の血管の動脈壁に炎症を生じる疾患を結節性多発動脈炎、小型の血管の動脈壁に炎症を生じる疾患を顕微鏡的多発血管炎と呼びます。

原因は特定されていない疾患ですが、、血管炎の組織に免疫と関わる細胞が多いことや免疫抑制薬などが効果を示すことが確認されていることから免疫異常が関係していると言われています。まれにB型肝炎ウイルス感染後に発症するケースや有毛細胞白血病に関連するケースも確認されています。

発症年齢は55歳前後とされており、男女比はやや男性に多い傾向があります。結節性多発動脈炎は特定疾患にも指定されている難病で、結節性多発動脈炎と顕微鏡的多発血管炎を合計した推定患者数は約12,000人とされておいます。

主な症状

結節性多発動脈炎の症状は、動脈が全身の諸臓器に分布します事から、多彩な臓器症状を呈します。血管に炎症が起こることによる全身症状と、臓器の炎症・虚血・梗塞などによる臓器障害の症状が組み合わさって現れます。

具体的な全身症状としては高熱(38℃以上)、体重減少、筋・関節痛、四肢のしびれ、倦怠感などが挙げられます。また、臓器障害の結果として現れる症状には皮膚潰瘍、尿蛋白・潜血陽性、腎機能悪化、腹痛・下血、脳出血・脳梗塞、高血圧などがあります。眼症状や心症状、皮膚症状に至るまで幅広い範囲に症状が現れる可能性があります。

現れる症状の頻度としては、関節・筋症状が約8割、皮膚症状が約6割、神経症状が約5割とされていますが、中でも特に注意すべき症状は腎不全、腸出血、脳出血・脳梗塞、心筋梗塞、腸管動脈梗塞、消化管穿孔などです。これらは命に関わる可能性もある重い合併症とされています。

発症年齢は40~60歳に多く、平均年齢は55歳です。男女比は3:1となっており男性が多いです。

主な原因

結節性多発動脈炎のはっきりとした発症素因などは現状では解っておりません。可能性としてあげられているのが何らかのウィルスへの感染が原因ではないかというものです。現段階では、B型肝炎ウイルスや有毛細胞白血病に関連する結節性多発動脈炎があると報告されています。顕微鏡的多発血管炎では抗好中球細胞質抗体との関連が確認されていますが、結節性多発動脈炎においては関係性は確認できていません。


また、免疫に関わる細胞が多いことから免疫異常によるものではないかとする報告もあります。ステロイドや免疫抑制薬などを用いた免疫抑制療法でも、症状に対する効果が確認されています。

現時点では、結節性多発動脈炎に対する特異性の高い診断マーカーは存在しないため、原因を特定することは難しいと言えます。

フランスをはじめとする他の国々では、B型肝炎ウイルス感染に伴って発症する症例は数多く報告されていますが、国内においてはまれな症例となっています。治療の流れはB型肝炎ウイルスを起因とするものか、それ以外かで大きく分けられます。

主な検査と診断

結節性多発動脈炎の診断において重要なのが障害の血管の炎症を証明することと言えます。そのために神経や筋肉などの障害の出ている部位の一部を切り取って顕微鏡で詳しく調べる生検を行います。結節性多発動脈炎と顕微鏡的多発血管炎は区別がつきにくいのが難点ですが、結節性多発動脈炎では自己抗体の陽性率が低い点が大きな特徴と言えます。

また、生検が難しい場合には画像検査を行う場合が多いです。血管造影X線検査や造影CT、MRI検査を行うことで診断に必要な情報を補います。腹部大動脈分岐の腎,腸間膜および肝動脈領域に多い小動脈瘤や狭窄,閉塞については血管造影により確認できることが多いです。

診断基準としては発熱や高血圧などの主要症状、組織所見、血管造影所見を総合的に見て診断を行います。現段階で参考とされる診断基準では、主要症候2項目以上と組織所見が存在する例では「確実」となり、主要症候2項目以上と血管造影所見が存在する例や主要症候のうち発熱を含む6項目以上が存在する例では「疑い」と判断されます。

主な治療方法

結節性多発動脈炎は早期に診断し治療を開始しないと、非常に予後の悪い疾患と言われています。しかし、発症3か月程度以内の急性期に診断し治療を行なうことで、完全に治癒する症例も存在します。完全に治療ができれば再燃は稀な疾患です。ステロイドと免疫抑制剤を併用することで生存率が高くなったデータもあります。ただ治療後寛解した場合でも、2~3年間は薬を服用し続ける必要があります。

個々の患者さんの病態に応じて治療内容を調整する場合がほとんどですが、まず「寛解導入療法」で病気の勢いを抑え、再び病状が悪化しないよう維持する「寛解維持療法」を行う流れが一般的です。まれにあるB型肝炎ウイルス感染による発症の場合には抗ウイルス療法、血漿交換療法で治療を行います。

血管に負担をかける喫煙、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症などに注意して生活することも重要です。免疫を抑制する方法で治療を行っている場合には感染症への注意も必要です。