今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け!今回は『 冬の手荒れに嬉しい!「モイストヒーリング」とは? 』をご紹介させて頂きます。

傷ケアの「新しい」治療方法

擦り傷、切り傷、あかぎれ、ひび割れ、など傷のケアに、新しい治療方法「モイストヒーリング」が注目を集め、医療現場でも推奨され始めています。「閉鎖療法」または「湿潤療法」とも呼ばれている治療方法です。

これまで、皮膚にできた傷は、消毒して、乾かして、かさぶたを作って治すという考え方が主流でした。これは「ドライヒーリング(乾燥療法)」と呼ばれる治療方法です。この方法を使った傷ケアでは、自然に治すには、それなりの時間が必要です。

一方、「モイストヒーリング」は、従来通りの消毒して乾かす治療とまったく異なり、「湿ったまま密封させる」傷のケアです。消毒しない、乾燥させない、ガーゼをあてることもありません。とにかく、治りが早いのが特徴です。そして、「床ずれ」や「やけど」にも効果があります。

傷ケアは「ドライ」から「モイスト」へ

「モイストヒーリング」は、患部(傷口)を乾燥させずに、湿ったまま密封させることで、傷を治すために必要な体液(細胞の成長と再生を促す成分)を保持し、新しい皮膚の再生を促す治療です。

ケガをすると、傷口の組織や細胞から、透明(あるいは薄い黄色)の体液がジュクジュクとしみ出てきます。これは「滲出液(しんしゅつえき)」と呼ばれる成分です。「滲出液」は、白血球、炎症性メディエーター、タンパク分解酵素など、細胞を活性化させ、傷口を清潔に保つといった細胞成長因子が含まれています。

「モイストヒーリング」は、滲出液を保ったまま密封することで、細胞の自己治癒力を引き出し、さらに治す力を高める効果があります。
(1)傷の痛みが少ない
(2)治りが早い
(3)傷跡が残りにくい
といったメリットが確認されています。

なぜ、消毒液を使わないのか?

1962年、イギリスのジョージ・ウィンター博士は、「傷は滲出液を逃がさないようにした方が早く治る」という論文を発表しています。それ以来、モイストヒーリングは、多くの機関によってその研究が進められ、現在では形成外科を中心に医療現場で活用されています。そして近年では、「モイストヒーリング」を用いた絆創膏もトラッグストアなどで市販され、手軽に入手できるようになっています。

これまで常識とされてきた「ドライヒーリング」では、患部を消毒する、ガーゼで覆うという手当てが行われてきました。しかしそれは、返って治療を妨げていたことがすでに分かっています。消毒液は、ばい菌などを退治すると同時に、滲出液までやっつけてしまうからです。また、ガーゼはせっかくの滲出液を吸収してしまいます。どちらも、傷の治りを遅くする原因になっていることは明らかです。

モイストヒーリングを「家庭で」行うには

「モイストヒーリング」は、市販されているモイストヒーリングに適した絆創膏(パッド)を活用して、家庭で行うことができます。次のように、
(1)洗浄
(2)止血
(3)保護
(4)観察
の順に治療を進めます。

(1)洗浄:傷口に残っている砂やゴミなどの異物を、水道水できれいに洗い流す
(2)止血:出血していたら、傷口を清潔な布やティッシュペーパーで押さえて止血する
(3)保護:患部が乾かないように、傷口より大きめの絆創膏で、傷を覆うように皮膚にぴったりと貼る
(4)観察:絆創膏の表面を観察し、滲出液が漏れたり、絆創膏が汚れたりしたら交換をする

ただし、刺し傷など患部が深く裂傷しているケガ、あるいは重いヤケドなどの場合は、すみやかに病院で診察を受けましょう。

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