本記事の監修医師
今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け!今回は『国内830万人が悩む「過活動膀胱」の症状や原因』をご紹介させて頂きます。
膀胱の活動が「過剰になる」病気
「過活動膀胱」は、文字どおり、膀胱の活動が過剰になる病気です。英語表記の「Overactive bladder」から「OAB」と表現されることもあります。腎臓で作られた尿は、尿管を通って膀胱に送られます。膀胱は送られてきた尿を一時的に溜めておく器官です。袋状になっており、大人では約300~500mlの量の尿を溜めることができます。
膀胱は、ある程度の量の尿が溜まると、収縮して排出する活動を開始します。ところが、「過活動膀胱」にかかると、膀胱の筋肉を締めたり弛めたりといった機能がうまく働かなくなります。すると、わずかな量の尿にも過剰に反応して、膀胱に少量の尿が送られてきただけでも尿を排出しようとします。つまり、膀胱に尿は溜まるまえに膀胱が活動をはじめてしまうのです。そのため、トイレが近くなる、トイレまで尿意を我慢できない、といった状態が起こります。
40歳以上の「8人に1人」が!
「過活動膀胱」は、急に尿意が襲ってくることがあり、場合によってはトイレまで我慢できずに、尿が漏れてしまう、など日常生活にも困るようなことがたびたび起こります。恥ずかしい、ストレスになるなど精神的な負担も抱えることになるでしょう。
しかし、けっして珍しい病気ではなく、国内では約830万人の患者がいると推定されています。特に中高年に多く、日本排尿機能学会の調査では、40歳以上の男女の8人に1人が「過活動膀胱」にかかっていると報告されています。ところが、近年では若年層に「過活動膀胱」が増える傾向があるといいます。
生活に支障をきたす「3つ」の症状
過活動膀胱では、
(1)尿意切迫感
(2)頻尿
(3)切迫性尿失禁
という大きく3つの症状がみられるのが特徴です。症状を3つとも抱える人もいれば、このうちに1つあるいは2つを持つという人もいます。
「尿意切迫感」は、突然に我慢できないほど強い尿意の高まりが起こる症状です。過活動膀胱の患者のうち、約50%(男性約41%、女性約64%)の人は「尿意切迫感」に悩むといいます。
「頻尿」は、日中に頻繁に(8回以上)トイレにいく状態です。就寝後もトイレに数回起きることがあります。1回の排尿量は少ないのが特徴です。「切迫性尿失禁」は、急に起こる強い尿意により、排尿がトイレにまで間に合わずに、尿が漏れてしまう状態が起こりやすい症状です。
膀胱と脳を結ぶ「神経」のトラブル
過活動膀胱を引き起こす原因には、「神経因性」と「非神経因性」に大きく分けることができます。「神経因性」は、膀胱と脳を結ぶ神経のトラブルがもとで発症し、「非神経因性」は神経トラブル以外の問題が挙げられます。
「神経因性」とは、脳卒中や脳梗塞などの脳血管障害、あるいはその他の病気やケガによって、脳や脊髄がダメージを受けると、膀胱と脳を結ぶ神経に障害が生じて、膀胱の筋肉の働きが過敏に反応する状態です。
一方「非神経因性」は、
(1)加齢による老化現象
(2)精神的ストレス
(3)出産による骨盤底筋の衰え
(4)前立腺肥大症に関連した症状
が原因として挙げられます。特に前立腺肥大症では、患者の約50~75%が過活動膀胱を発症しています。また、原因が特定されない「突発性」と診断されるケースも少なくありません。
早めに「泌尿器科」を受診
尿意切迫感が週に1回以上、排尿が1日に8回以上、夜間に1回以上トイレにいく、といった症状が見られるようなら、過活動膀胱の疑いがあります。早めに「泌尿器科」を受診し、専門医に相談しましょう。
診断は、症状の程度を調べる「過活動膀胱症状質問票(OABSS)」を使って行われるのが一般的です。さらに、超音波(腹部エコー)検査、血液検査、尿検査を実施したうえで診断が確定します。
治療には、薬物投与から進めることが多いでしょう。膀胱収縮を抑える「抗コリン薬」が処方されるのが主流です。年々、新しい治療薬が発売され、症状に合わせた処方がはじめられています。また、膀胱や骨盤底筋を鍛えるための体操(トレーニング)が効果的です。専門医などに教わり、日課にするとよいでしょう。
【この記事の監修・執筆医師】
吉祥寺まいにちクリニック
柳澤 薫 院長先生
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