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今回は『世界で毎年10万人が亡くなる「アメーバ赤痢」を知る』をご紹介させて頂きます。

国内感染者は「年間750人」以上

「アメーバ赤痢」は、腸管寄生する原虫(顕微鏡でしか見えない単細胞生物)の「赤痢アメーバ」を病原体とする感染症です。消化管で感染が起こるため、血便や腹痛といった症状がみられます。

発展途上国への渡航者によくみられる感染症で、世界では年間に約7〜10万人がアメーバ赤痢によって死亡しています。日本では、福祉施設や介護施設での集団感染などが年々目立つようになり、患者数は年間750人以上と増加傾向を示しています。

感染者の「約10~20%」が発症

「アメーバ赤痢」は、原因となるアメーバの侵入が「腸管」もしくは「腸管外」によって、それぞれ、症状が異なります。感染しても症状があらわれるのは、感染者全体の約10~20%といわれています。

「腸管」の場合、下痢、イチゴゼリー状の粘血便、しぶり腹(便が出ないのに便意をもよおす症状)、排便時の下腹部の痛み・不快感などの症状があらわれます。症状が改善したり悪化したりをくり返すのが特徴です。発熱が起こることはほとんどありません。これらの症状は「腸管アメーバ症」と呼ばれます。

一方、「腸管外」の場合、多くの人は約38~40℃の発熱が起こります。下痢や腹痛など消化器官の症状がみられる人は、全体の約50%です。そのため、感染症にかかっているとの認識がなく、治療が遅れて体調が悪化することがあります。右の脇腹の痛み、肝臓の腫れは特徴的な症状です。他にも、吐き気、嘔吐、寝汗、全身の倦怠感、体重減少が見られます。これらの症状は「腸管外アメーバ症」と呼ばれます。

「生水」/「果物」などから感染

アメーバ赤痢の感染経路は、感染者の排泄物に汚染された水や、その水で作った氷をそのまま摂取したり、あるいは汚染水に浸された生野菜、果物、生肉を食べることで感染します。潜伏期間は、通常約2〜3週間とされています。

厚生労働省の施設等機関である国立感染症研究所によると、日本国内のアメーバ赤痢感染は、5年のあいだに、約57%も増加しています。10万人に対して0.59人の割合で感染しているといいます。そのなかで死亡例は、感染者の約0.65%であることが報告されています。死亡率はけっして高くはないですが、ゼロではないということは覚えておきましょう。

治療薬で「ほとんどが完治」する

アメーバ赤痢の治療には、「メトロニダゾール」薬剤が有効です。約90%以上のケースで完治するほど効果の高い薬剤です。容態が悪く服用が困難、あるいは激しい下痢のため、吸収が低下しているときは、「メトロニダゾール注射薬」が使用されるでしょう。

アメーバ赤痢を予防するワクチンは現在のところありません。そのため、海外での食事には十分な注意が必要です。特に発展途上国では、水や氷には細心の注意を払いましょう。ビン入りのミネラルウォーター、一度沸騰させた水を飲むようにします。

また、十分な加熱がされていない料理を口にすることは避けましょう。汚染された調理器具、食器から感染することもあります。衛生面に気を配るように注意してください。