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今回は『厚労省も呼びかける、風邪の対処に「抗生物質は控えて」』をご紹介させて頂きます。

ようやく「厚生労働省」が動いた!

2017年6月、厚生労働省は全国の医療機関に「軽い風邪や下痢の患者に対する抗生物質(抗菌薬)の投与を控えるよう」手引書を作成し、呼びかけをはじめました。手引書には、風邪の原因であるウイルスには抗生物質が効かないため、「投与を行わないことを推奨する」と記されています。

医師や薬剤師からすれば当たり前のことで、厚生労働省の通達は「何を今さら」の感じがあるでしょう。厚生労働省が今さらの通達を出したのは、「ウイルスには抗生物質は効かない」という知識を不勉強な医師に教示するためではありません。医療の現場で起こっている困った患者さんへの対応のためだと思われます。

軽い症状でも「薬好き」な日本人…

日本人は薬好き、といわれています。たとえ軽い症状であっても病院にかかると、薬を欲しがる傾向が強くあります。本来であれば、できるだけ安静にして、自分の免疫機能を使って病気を治したほうが、本来は体にはよいはずですが、つい薬に頼ってしまう人が多いようです。

WHO(世界保健機関)から世界最高の評価を受けるほど、公的医療保険制度が充実しているのも「薬好き」の大きな理由かもしれません。

いずれにせよ「風邪には抗生物質がよく効く」と勘違いをしている患者さんが、「抗生物質を欲しがる」ことに医療の現場は困っているといいます。実際、風邪に抗生剤は効果がないので「処方できません」と伝えると、怒ってしまう患者さんもいるといいます。

なぜ、抗生物質は風邪に効かないのか?

風邪の原因は、ライノウイルスやコロナウイルスなど「ウイルス」によるものです。体がウイルスに感染したことで、咽の痛み、鼻水、くしゃみなど風邪の症状が起こっています。したがって風邪を治すにはウイルスを退治する薬が望ましいわけです。

ところが、抗生物質(抗生剤ともいいます)は、細菌を死滅させ、感染を押さえる薬です。ウイルスを殺す作用はないので、風邪には効きません。

細菌は自分の力で増殖するのが特徴です。そこで抗生物質は、細菌が作られる過程で「細胞壁」と呼ばれる物質を阻害することで、細菌は溶解して死滅させます。すると、人間の細胞は大丈夫なの? という疑問が生まれます。

細菌の「細胞だけ」を攻撃する

人間の細胞は細胞壁を持ちません。つまり抗生物質が投与されても、人間の細胞には影響がないのです。抗生物質は、人間と細菌の細胞の違いを利用した薬です。人間の体には影響を与えず、感染した細菌だけを退治しています。

さて、風邪などのウイルスは「細胞」を持っていません。自ら増殖することはなく、悪さするには、人間の細胞に入り込んで症状を引き起こします。ところが、先に述べたように、抗生物質は人間の細胞には影響を与えないように作られた薬です。そのため、風邪には抗生物質は効果がないのです。

やがて、抗生物質が効かなくなる?

風邪を治すためには、できるだけ安静にして、自分の免疫がウイルスを退治するのをゆっくり待つのがいちばんです。睡眠をよくとり、体を休め、消化のいいものを食べて、刺激物の摂取は控える、それがよいでしょう。

風邪症状で抗生剤を服用すると、激しい下痢を起こしたり、肝臓や腎臓の機能が低下する恐れがあります。また、わずかなことで抗生物質を服用していると、細菌が抗生物質に対して耐性能力を持つようになり、抗生物質が効かなくなることがあります。風邪の対処に抗生物質を飲まないようにしましょう。

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