今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『「日射病」と「熱射病」と「熱中症」は、どう違う?』をご紹介させて頂きます。
年間約500人が、熱中症で亡くなっている
気象災害とまでいわれる「猛暑」が、日本列島各地で発生しています。熱中症によって健康を害する人が増え、農作物にも被害がおよんでいます。今年(2016年)7月、熱中症で救急搬送された人の数は、約1万6000人にのぼる、と総務省消防庁が発表しています。
そして8月に入ると、第1週目(8月1〜7日)だけで、約6600人が熱中症で医療機関に救急車で運ばれています。最近の20年では熱中症による死亡者は、年間約500人にのぼります。
総務省消防庁・気象庁・厚生労働省・環境省などの公的機関は、熱中症を警戒するよう、予防と対策の広報メッセージを夏場に限らず発表しています。在日外国人に向けた広報も、パンフレットやPDFを使って呼びかけています。そのため「熱中症の恐ろしさ」は周知されるようになっています。熱中症は、とにかく事前の予防が大事です。正しい知識を身につけ、できるだけ未然に防ぎましょう。
「熱中症」という病気はない?
ところが、世の中に「熱中症」という病気はありません。熱中症は、病気の名前ではなく、異常なほど高温・多湿の環境で、体が適応できない状態になったときの病気を、まとめて1つした呼び名です。つまり、日射病も熱射病も熱中症に含まれるというわけです。
熱中症は、1995年ごろから一般的に使われはじめた言葉といわれていますが、記録的な猛暑だった2010年、熱中症による死亡者が1745人にのぼったことをうけ、日本救急医学会が「熱中症診療ガイドライン」(日本救急医学会)において、病名を「熱中症」に統一し、総合的に診察するよう促しています。
具体的には、次の5つの病気をまとめてあわらした言葉です。
<熱失神>
気温が高い場所や直射日光を浴びることで、血管が広がり血圧が低下して、脳へ送られる血流が減少し、顔面蒼白・めまい・失神が起こります。
<日射病>
強い直射日光に長い時間当たることで発症します。大量の汗をかくことで脱水症状をひき起こし、体温調節の機能が低下し、倦怠・頭痛・めまい・意識障害などの症状があらわれます。
<熱けいれん>
大量の汗をかき、血液中の塩分やミネラルが不足し、電解質のバランスが崩れて、手足・腕・腹部などに痛みを伴った筋肉のけいれん・つりが起こります。
<熱疲労>
大量の発汗に水分補給が追いつかず、脱水状態になり、全身倦怠感・悪心・嘔吐・頭痛・判断力の低下などが起こります。
<熱射病>
体温の上昇によって、脳の中枢機能に異常をきたし、意識がうすれる・呼びかけに返事がにぶい・言動がおかしい・意識がないなどの意識障害、昏睡、全身けいれんがみられます。
熱中症は、重症度で3つに分類される
これら、5つの病気は「熱中症診療ガイドライン」によると、重症度に応じて、次の3つの段階に分類されます。つまり、日射病も熱射病も熱中症に含まれ、それらは重症度によって分かれているのです。
< I 度(軽症)>
「熱失神」、「日射病」、「熱けいれん」に相当します。いずれも発症した現場で対処できる病態です。発症したときは、涼しい場所に移し、冷たいタオルなどで体を冷却して、0.9%程度の生理食塩水を飲ませます。水分だけを補給すると血液中の塩分濃度が減少し、けいれんを起こすことがあります。

< II 度(中等症)>
「熱疲労」に相当します。すみやかに医療機関への受診が必要な病態です。発症したときは、「I 度」の応急処置を行い、すぐに病院に搬送しましょう。
< III 度(最重症)>
「熱射病」に相当します。医師の判断で入院が必要な病態です。症状によっては集中治療で治療にあたることがあります。発症したときは、すぐに救急車を要請します。救急車が到着するまでのあいだ、足を心臓より高くし、体に水をかけるなど、とにかく全身の冷却につとめます。
熱中症が起こりやすいのは、太陽が照りつける暑い日だけとはかぎりません。熱中症による死亡者の約30%は夜間に起こっています。熱さを甘くみないで、水分補給などの対策を早めにしっかり行いましょう。