今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『ハチに刺されたら…』をご紹介させて頂きます。

春、そして夏です。この季節、外に遊びに出る機会が多くなりますよね。近年のアウトドアブームは、人々を森の奥へ、山の奥へと誘います。
このとき気を付けたいのは、ハチです。ハチに刺されると、最悪、命を落とすことがあります。国内では毎年20人程度が、ハチに刺されて亡くなっているのです。

そこでハチに刺されたときの対処法を覚えておいてください。対処には2パターンあって、それほどの重大事でないときの「通常対処」と、生死にかかわるときの「命を救う対処」です。
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2パターン対処法

それではまず「通常対処」についてです。4ステップあります。次の①②③④の順番で行ってください。つまり、「②針を抜く」をやってから、「①その場から遠ざかる」といったように、順番抜かしをしないでください。

「通常対処」とは…

①その場から遠ざかる

「当たり前」って思いましたか? しかし、案外これができずに、状況を悪化させてしまう人がいるのです。なぜ「その場から遠ざかる」ことができないのでしょうか。それは、パニックに陥るからです。ハチに刺されると、冷静な対応が取れなくなるのです。

ハチに刺されたら落ち着く、これは大原則です。落ち着いて、ゆっくり安全な方に向かって静かに歩いていってください。このとき、大声を出したり、走ったりすると、仲間のハチがやってきます。
最も理想的な避難場所は屋内ですが、屋内が近くにない場合、最低でも20メートルは離れましょう。刺したハチがその場からいなくなっても、20メートルは離れてください。それは、ハチが仲間を呼んでくる可能性があるからです。
「ハチは仲間を呼ぶ能力がある」と覚えておいてください。
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②針を「慎重に」抜く

ミツバチの場合、刺した針が皮膚に突き刺さったままになっていることがあります。これを指でつまんだりして「雑に」抜くと、毒液がさらに体内に注入されてしまうことがあります。
毛抜きやピンセットといった道具を使って「慎重に」抜いてください。こうした道具がないときは、クレジットカードのような、「薄くて硬いモノ」で「慎重に」抜いてください。

③水で流す

ハチに刺されて痛みが走るのは、毒が注入されたからです。ですので、3ステップ目は、毒を絞り出します。患部に流水を当てて、毒を絞り出す要領で患部をつまみます。
口で吸うことはNGです。毒が歯茎から体内に入る恐れがあるからです。
毒を吸い出す専用器具もあります。「リムーバー」といい、アウトドアショップで売っています。この器具と、④で紹介する薬は、森の中に入る人には必須アイテムといえるでしょう。
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④薬を塗る

市販されている「虫刺され用の薬」は、アウトドアをする人は、ぜひ常備しておいてください。購入する際、「抗ヒスタミン系成分を含むステロイド軟こう」を探してください。
この薬はアトピーのアレルギーを抑えるときにも使われます。ハチに刺された痛みは、毒に対するアレルギー反応なので、同じ薬を使うのです。

薬を塗ったら、冷やしてください。流水では薬の成分が流れてしまうので、ハンカチなどに冷たい水を含ませて、それを患部に押当ててください。

これが4ステップです。ハチにさされたら、これら4つの行動を素早くとってください。
ちなみに、「おしっこをかける」は効果がないことがわかっていますので、やめてください。尿自体に毒素が含まれているので、そんなものをハチに刺された傷口にかけると、よけい症状が悪化してしまいます。
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「命を救う対処」とは…

次に、生死にかかわるときの「命を救う対処」を解説します。

ハチで死ぬケースとして、「スズメバチに2度刺されるとショック死する」ということを知っている方も多いと思います。このことは正しいのですが、この説があまりに有名になってしまったため、「このケース以外では死なない」と勘違いしている人がいるのです。
スズメバチに初めて刺されて亡くなる人もいますし、ミツバチに2回目に刺されても、ショック症状を引き起こす人もいるのです。

ハチに刺されて起きるショック症状を「アナフィラキシーショック」といいます。アナフィラキシーショックは、刺されてからわずか30分以内に起きます。この「30分」は重要です。

つまり、ハチに刺されたら30分以内に「通常対処4ステップ」を終えなければならないのです。そうしないと、アナフィラキシーショックが発生したときの対処が遅れてしまうのです。

アナフィラキシーショックによる症状

アナフィラキシーショックによる症状は、刺された本人が認識できる「自覚症状」と、周囲に人も観察できる「他覚症状」があります。

自覚症状は、全身の無力感、呼吸困難動悸、吐き気、めまい、全身の腫れです。
他覚症状は、冷や汗、くしゃみ、ぜいぜいする呼吸、血圧低下、顔面蒼白、嘔吐、尿失禁、けいれんです。

本人や周囲の人がこうした症状を認めたら、すぐに救急車を呼んでください。救急車が到着するまでにできることは、「通常対処4ステップ」以外には限られています。

もし本人が以前にもアナフィラキシーショックを起こしたことがある場合、「エピペン」という自己注射の薬を持っていることがあります。それを持っていたら、太ももに注射させてください。
ただし注射は医療行為となり、資格を持っていない人が行うと罰せられることがあります。しかし「本人の自己注射を補助する」形であれば、無資格者でもOKです。

「エピペン」を持っていなければ、あとは安静にさせることくらいしかありません。本人を寝かせます。その際、足を15~30センチほど高くしてください。意識を失っていることもありますので、顔を横に向けて、嘔吐物がのどに詰まらないように気を付けてください。

「アウトドアを楽しむ場所」は「ハチの場所」と思ってください。アウトドアにはリスクが伴うという理解は、ハチだけに限ったことではありません。山や森での事故は、この理解が足りないことで増加しているのです。リスク回避の準備をして、自然を満喫してください。

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