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今回は『計画通りできないのは、「遂行機能障害」かも?』をご紹介させて頂きます。

「高次脳機能障害」の一種

「遂行機能」とは、日常生活での活動を手際よくこなしてゆくために、
(1)目標を決めて
(2)計画を立てて
(3)周囲とうまく調整しながら
(4)物事を順序立てて行動する機能です
「実行機能」と呼ばれることもあります。どんな段取りが必要なのか、どのタイミングで行動を起こすのか、などを計る能力がそれに該当します。

「遂行機能障害」は、こういった機能に障害があらわれ、目標設定、計画立案、効果的な行動ができなくなる病気です。医学的には「高次脳機能障害」の1つとして分類されています。「高次脳機能」とは、注意を払う、記憶する、思考する、判断を行う、といった人間特有の脳の働きをいいます。これらの機能が失われてしまうのが「高次脳機能障害」です。したがって、社会的、あるいは自立的な活動が難しくなり、学業・仕事・家事などを行う際にかなりの混乱が生じるようになるでしょう。

「目標」や「計画」が立てられない

遂行機能障害は、高次脳機能がある程度働いているにも関わらず、その高い機能を有効に活用できない状態です。
(1)目標
(2)計画
(3)段取り
(4)効率
(5)持続
といった項目に関する分野の働きが、著しく鈍くなるのが特徴です。

そのため、個人の作業はもとより、仲間で何事かをこなすことが困難になるでしょう。具体的には、次のような症状が見られます。

<目標が決められない>
未来について推測・予測することができないという症状が見られます。ゴールが設定できないため、いつも漠然とした行動が目立ちます。

<計画が立てられない>
目標をあっても、そのプロセスが計画できないという症状が見られます。計画に必要な材料を考えること、適した順序に並べること、など段取りを立てられない状態です。

<衝動的な行動をとる>
予測を立てられないため、ゴールを決めず、思いつきや目についたことなどの刺激で、手当たり次第に物事を進める傾向があります。衝動的な行動が多く、決められた作業を持続できないことが目立ちます。そのため、締め切りや約束を守ることができません。

<行動が始められない>
計画があっても、その順序に物事を始められないという症状が見られます。ふだんから受動的な行動が見られ、周囲からは活発性や自発性に欠ける人といった印象を持たられ、人間関係にも不安がつのることがあります。

<客観的に見ることができない>
自分の立場を離れて他の人の視点で物事をとらえることが難しいといった症状が見られます。そのため、自己の行動を見直す、状況に応じた行動をとる、融通を利かせる、必要に応じて改正・改善する、といったことが苦手になります。この症状を持つ人は、同じミスのくり返しが目立ちます。

<複数の作業が出来ない>
同時に2つ以上の作業ができないといった症状が見られます。複数の作業を受けた場合、自分で優先順位を決めることができず、作業がまったく進まない、あるいはパニックになるといった傾向があります。

「脳組織のダメージ」が原因

遂行機能障害は、脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)、頭部外傷、脳炎、脳腫瘍、低酸素脳症など、脳組織がダメージを受ける病気やケガが、おもな原因として挙げられます。なかでも、「前頭葉の損傷」が遂行機能障害を引き起こすといわれています。

前頭葉は、大脳のなかの前方にある組織です。視覚・聴覚などの外部から入る情報と自分が持つ過去の経験を照らし合わせ、全体を調整することで「遂行機能」を働かせています。そのため、前頭葉がダメージを受けると、遂行機能障害をはじめ「高次脳機能障害」が起こりやすくなります。

「脳外科」など専門医に相談

遂行機能障害は、本人や周囲の人たちが症状に気づくまでに時間がかかるケースが多いとされています。病気やケガから復帰して、しばらく経ってから、遂行機能に問題があることが判明することはめずらしくありません。

脳組織に関する病気やケガをしたあとで、効率的に仕事や家事ができない、物事の優先順位がつけられない、段取りが悪いといった状態が頻繁に見られるようなら、遂行機能障害の疑いが持たれるでしょう。

遂行機能障害の診断は難しく、「脳外科」、「リハビリテーション科」、「神経内科」など専門医による検査が必要です。BADS (遂行機能障害症候群の行動評価)、WCST(ウィスコンシンカード分類課題)といった心理検査方法を用いるのが一般的です。治療は、その人の症状に合わせたリハビリテーションが進められます。そこでは、計画の立案、作業の段取り、予定管理をいっしょに行う訓練を行いながら、症状の回復を待ちます。

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