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今回は『乳幼児の血便は「メッケル憩室」かも?』をご紹介させて頂きます。

小腸が「お餅のように」膨れる?

腸の壁から外側に突き出た風船状の袋を「憩室(けいしつ)」といいます。いわゆる消化管の奇形で、壁の一部が「焼き餅」のように膨れるのが特徴です。そうして「メッケル憩室」の場合は、憩室が先天的に小腸にできる特殊な憩室です。

19世紀にドイツで活躍した解剖学者ヨハン・フリードリヒ・メッケル医師にちなんで、メッケル憩室と呼ばれています。メッケル医師は、先天異常に関する研究に従事し、メッケル憩室の他にも、メッケル症候群やメッケル軟骨においても、最初の発見者として、医学界ではその名が知られています。

「5歳未満の子ども」に多い

メッケル憩室は、人口の約1~2%の割合で発症する病気といわれています。どの年代にも生じる可能性のある病気ですが、患者の多くは、5歳未満の子どもです。先天的に(生まれつき)メッケル憩室がある赤ちゃんは、全体の約3%にのぼります。男の子は、女の子にくらべて約2倍の頻度で発症しています。ですがこの病気によって、体に危険がおよぶ心配は極めて少ないでしょう。

憩室は、一般的に症状があらわれない場合がほとんどです。しかし、メッケル憩室の場合、患者の約20%は、血便や下血などの症状に見まわれます。無症状の人は、CT検査(コンピュータ断層撮影を使った検査)などで、偶然に「メッケル憩室」が発見されるケースが多いようです。

痛みのないが「大量の下血」が見られる

メッケル憩室の炎症による「出血」や「下血」は、痛みを伴わず、また前触れなく起こるのが特徴です。メッケル憩室は、腸にあらわれる症状ですが、まれに胃の組織(粘膜)が入り込んでいることがあります。メッケル憩室での出血は、胃粘膜から分泌された胃酸によって、小腸に「消化性潰瘍」が作られることで起こります。

出血は、一度に大量に出ることが多く、そのため下血が見られます。血便、タール便(黒い血液が混じったコールタール状の便)、粘血便(血液と粘液が混ざったイチゴゼリー状の便)が出ることがあります。

メッケル憩室に細菌などによる感染が起こると、憩室炎、腸重積、腸閉塞などの合併症を引き起こす恐れがあります。その場合、激しいお腹の痛み、嘔吐、下痢、発熱といった症状が起こることがあります。

残った管が「メッケル憩室」に変わる

人間は、胎児の初期(妊娠約5〜7週まで)において、臍帯(へその緒)と小腸とのあいだで一時的に「卵黄管」という管が発生します。卵黄管は、出生後は閉じてなくなる器官ですが、何らかの理由で腸に残ったときに「メッケル憩室」へと進展します。

なぜ、卵黄管が吸収されずに残り、そしてメッケル憩室となるかについては、現在のところ詳しいことは明らかになっていません。これまでの傾向として判明していることは、メッケル憩室が、小腸と大腸の境目付近から、約40~60cmのところに発症していることです。

下血や血便があったら「小児科」に相談

下血や血便が見られたときは、できるだけ早めに「小児科」、「小児外科」、「内科」、「消化器内科」、「消化器外科」のいずれかを受診し、専門医に相談しましょう。特に下血がくり返し見られたときは、「メッケル憩室」の疑いが持たれます。赤ちゃんは自分から申告することができないため、ママやパパなど家族が気づいてあげることが必要です。

「メッケル憩室」は、血液検査、X線検査、CT検査(コンピュータ断層撮影による検査)、下部消化管造影検査では診断は難しく、放射性元素テクネシウムによる「メッケルシンチ」と呼ばれる画像検査が適しているとされています。

症状が見られない場合は、特に治療の必要はありません。合併症も含めて症状がある場合は、メッケル憩室とその周囲の小腸の一部を切除する「腹腔鏡下手術」が検討されるでしょう。特に、憩室炎や腸閉塞など合併症を引き起こしているケースでは、早期の手術が必要とされます。

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