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今回は『中学生に多い「起立性調節障害」とは?』をご紹介させて頂きます。

中学生の「約10%」に起こる病気

「起立性調節障害」は、
(1)朝起きられない
(2)食欲がない
(3)何となく全身がだるい
といった症状が、思春期の子どもに多く見られる病気です。英語表記である Orthostatic Dysregulation の頭文字をとって「OD」と呼ぶこともあります。

日本小児心身医学会の調査によると、小学校高学年全体の約5%、中学生は全体の約10%の子どもが発症するといわれています。思春期でもっとも起こりやすい病気の1つで、決してめずらしい病気ではありません。発症の男女比は「1:1.5〜2」で、女の子にやや多く発症する傾向があります。

春先に症状があらわれやすく、新学期のスタートに影響をおよぼすことがあります。そのためか、起立性調節障害の子どもの約30%は、「不登校」をくり返すケースが目立ちます。

この病気は「家族の理解」がとても大事

思春期に多い病気でありながらも、「起立性調節障害」という病名やその内容については、あまり知られていません。そして、一般的な症状は、次のとおり広い範囲におよびます。

・朝起きられない
・立ちくらみが起こる
・食欲がわかない
・疲れやすい
・気分が乗らない
・全身が重たくだるい
・日常的に顔色が悪い
・失神発作が見られる
・動悸やめまいがする
・長い時間、立っていられない
・少し歩くだけで、息切れがする
・頭痛、片頭痛、頭重感が数日続く
・腹痛、下痢、腹部の不快感がある
・女性は生理不順が起きやすい
・夜は、なかなか寝つけない
・イライラすることが多い
・集中力が続かない
・乗り物に酔いやすい

何となく元気がない様子ですが、発熱はほとんど見られません。また、症状は午前中に強く、午後には軽減するのが特徴です。夕方から夜になると症状が緩和し、体調は回復することがあり、すると健康な子どもと同じように会話をしたり、テレビを見たり、スマートフォンを操作したりして楽しむ様子が見られます。ところが、また朝になると体調が優れず、学校を休みがちになるのです。

このような状況から、起立性調節障害の子どもは、家族や教師から「甘えている」、「怠けている」、「がんばりが足りない」、「さぼり病」などいわれなき非難を受けことがあります。学校に行きたくないのではありません。病気のため、「行きたいけど行けない」という状態をぜひ周囲(特に、家族)の人たちは理解してあげましょう。

自律神経の「連携不足」が原因!

起立性調節障害は、思春期に起きやすい「自律神経失調症」の一種です。自律神経とは、自分の意志とは無関係に体の機能を調整する器官です。心臓を動かす、呼吸をする、食べ物を消化する、血圧の上げ下げ、などといった働きは自律神経が関わっています。

自律神経の働きは、
(1)昼間に体を活発に動かすための「交感神経」と
(2)夜に体を休めるための「副交感神経」の2つに分担されています。
起立性調節障害は、体の発育が急なスピードで伸びたことで、この2つの自律神経の働きがバランスを崩しているのが大きな原因と考えられています。つまり、「交感神経」と「副交感神経」の連携がうまく働いていない状態です。医学的には「代償機構の遅れ」という呼び方をします。

自分の意志では「コントロール」しづらい

起立性調節障害は、要するに、朝と夜を切り替える体の役割が不十分なため、朝に働くべき機能が働かない状況になっています。しかし、自律神経は自分の意志とは無関係に働く機能であるため、自分ではうまくコントロールできずに、苦しい症状に悩まされてしまうのです。そこに、学校や家庭でのストレス(批判や否定の言葉など)が加わると、症状はさらに重くなります。

また、自律神経の乱れは、立っていたり座っていたりすると症状が悪化します。したがって、ふとんやベッドで横になっていることが自然と多くなり、そこでまた「怠けている」などの批判を受けることは、本人はとても辛いことです。

症状が3つ以上あれば、「小児科」に相談

起立性調節障害は、先に挙げた症状が3つ以上見られるときは、その疑いが高いと考えてよいでしょう。特に、
(1)朝なかなか起きない
(2)めまい、立ちくらみが起こる
(3)疲れやすく、疲れがなかなか抜けない
という様子が見られたら、要注意です。

一度、「小児科」を受診し、医師に相談してみましょう。小児科医には、起立性調節障害について詳しい医師が多いといいます。できれば、症状が見られる「午前中の受診」が最適です。家庭内では、「いい加減に早く起きなさい」「また怠けている」などと叱るのは控えましょう。子どもが心の行き場所を失って、症状が悪化する恐れがあります。子どもは病気であることを理解し、家族が「動揺しない」ことが大事です。

治療は、医師のアドバイスに基づいて、生活のリズムを少しずつ取り戻すセルフケアと、血圧を上げる薬(昇圧剤)を服用する薬物療法が進められるでしょう。早めに治療をスタートすれば、数ヶ月以内での改善が期待できます。

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