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今回は『犬の鳴き声みたいな咳がでる「クループ症候群」』をご紹介させて頂きます。

「乳幼児」に出やすい喉の腫れ

クループ症候群は、特定の病気ではなく、急激に喉や声帯に炎症が起こり、発熱や咳などさまざまな症状があらわれる病気の総称です。喉やその周辺が腫れることで、気道(呼吸のための空気の通路)が狭くなり、空気の通りが悪くなります。すると、息を吸うのが苦しくなり、クループ症候群にみられる「特徴のある咳」が出ます。

生後3ヶ月〜5歳までの子どもに多く見られる症状で、特に「生まれて2年以内」が発症のピークといわれています。寒い冬場に発症する子どもが多く、風邪に似た症状から始まり、急激に喉の奥に炎症があらわれるのが特徴です。子どもは気道が狭いため、喉の炎症でも危険な病気に進展する心配があります。重症化すると、呼吸困難から窒息する恐れもあるため、十分な注意と早めの判断が必要です。

「犬が吠えるような咳」が出たら

クループ症候群の症状には、
(1)発熱
(2)喉の痛み
(3)咳
(4)声のかれ
(5)喘鳴(ぜんめい)
といった様子が挙げられます。「風邪かしら?」と思うような初期症状ですが、クループ症候群の可能性もあるため、乳幼児は早めに「小児科」を受診しましょう。

喉の腫れは、いきなりやって来ます。小さな子どもは気道が狭く、またその組織も弱いことを理解しましょう。大人が思っている以上に、喉の炎症は深刻な事態をもたらす心配があります。クループ症候群によって、喉が腫れて気道が狭くなると「ケンケン」といった聞き慣れない咳が出ます。

それは「犬が吠えるような」、あるいは「オットセイが鳴くような」乾いた咳です。これがクループ症候群のもっとも特徴的な症状です。医学的には「犬吠様咳嗽(けんばいようがいそう)」と呼ばれる症状です。子どもは、たいへんに息苦しい表情を見せるでしょう。また、呼吸をするたびに「ゼーゼー」、「ヒューヒュー」音がします。声はかすれて、泣き声には、「ヒーヒー」と息が漏れるような音が聞こえます。

夜間は悪化しやすい。「子どもの様子」に気をつけて!

クループ症候群の症状は、「夜間に悪化する」傾向があります。ケンケンといった咳が出て子どもが苦しそうであれば、夜間受付の病院を受診します。「朝まで様子を見よう」という自己判断は危険です。小さな子どもは容態が急変する可能性があります。過去には、クループ症候群によって、急な呼吸困難を起こし、窒息死した例もあります。

夜間の子どもの様子には細心の心配りが必要です。特に、呼吸がうまくできなくなり、血液中の酸素が欠乏してくると(1)くちびる、(2)爪、(3)顔色、(4)その他の皮膚が、青色や紫色になります。これは「チアノーゼ」と呼ばれる症状です。ためらわず、ただちに「救急車」を呼びます。

ひどくなると「窒息の恐れ」もある

喉の奥は、「喉頭」と呼ばれる器官で、空気の通り道であり、また声帯を中心に声に関する機能が集まっている場所です。大人でいうと、ちょうど「のど仏のあたり」です。クループ症候群は、喉頭の一部、あるいは全体が腫れる病気です。その症状から、4つに分類されます。
(1)喉頭炎
(2)喉頭気管炎
(3)喉頭気管気管支炎
(4)急性喉頭蓋炎

一般的なクループ症候群は、(1)〜(3)の症状のいずれかに該当します。しかし、症状が進むと、まれに「急性喉頭蓋炎」にかかることがあります。喉頭蓋とは、喉頭の入口にある気道と食道を分ける扉です。急性喉頭蓋炎は、気道へ続く扉が突然に腫れる病気です。喉頭蓋の炎症によって、ひどくなると気道がふさがれ、窒息から死に至る危険性があります。これは子どもに限らず、大人でも気をつけなければならない状態です。

「ウイルス」や「細菌」が原因

クループ症候群の原因のほとんどは、ウイルスや細菌による感染です。アレルギー的な要素によって発症する子どももいます。しかしなかでも、ウイルスによる感染がもっとも多いとされています。

ウイルスでは、約75%が「パラインフルエンザウイルス」が原因です。他にはアデノウイルス、RSウイルスなどが挙げられます。パラインフルエンザウイルスは、小さな子どもの体に、気管支炎や肺炎を引き起こすウイルスです。感染力が強く、冬以外の季節でも流行する可能性があるのが特徴です。

細菌では、インフルエンザ菌、溶連菌が原因です。なかでもインフルエンザ菌には注意が必要です。インフルエンザ菌によるクループ症候群は、急性喉頭蓋炎を発症する恐れがあり、呼吸困難を引き起こすなど、危険な状態が突然に襲ってくる心配があるでしょう。

他にも、「ジフテリア」がクループ症候群の原因となる可能性もあります。しかし、ジフテリアは四種混合ワクチンによって予防接種がなされているため、現在では、ジフテリアによるクループ症候群の発症はほとんど見られなくなっています。そのため、ワクチンの接種は早めにすませておくことが大事です。

原因が「細菌」であれば、抗生剤の治療

医師が子どもの発する咳を聞いて「クループ症候群」かどうかの診断がほぼ可能です。喉の腫れ具合などを確認するために、X線検査を使った画像診断を行うことがあります。治療方法は、原因によって異なります。

細菌が原因であれば、抗生剤を使った治療が一般的です。ウイルスが原因である場合は、特効薬が今のところありません。気道の炎症を抑える、咳や喉の腫れを鎮めるなどの対処療法が行われます。内服薬や注射を使うことになります。

喉の腫れがひどく食事がほとんどできずに、体力が著しく低下しているケースでは、栄養摂取のために点滴を行うことがあります。自宅では安静にして、加湿器などを使って湿度を上げる(つまり、部屋を乾燥させない)工夫が必要です。

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