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今回は『「エンテロウイルスD68」が子どもの麻痺を引き起こす?』をご紹介させて頂きます。

「100種類以上のタイプ」があるウイルス

エンテロウイルスは、手足口病やポリオの原因菌として知られているウイルスで、その種類は現在67種類が確認されていますが、細かく分類すると、100種類以上の型が存在します。「EV」と略されて表記されることがあります。

人から人へ感染し、口から侵入して腸管で増殖します。血中に入ったエンテロウイルスが全身をまわり、さまざまな臓器に影響をおよぼすウイルスです。

風邪の症状にあとで「体に麻痺」が残る

そして近年、エンテロウイルスの一種である「エンテロウイルスD68(EV-D68)」に心配の声が挙っています。2014年にアメリカで、子どもを中心に1100人以上の集団感染が発生し、風邪に似た症状を起こしたあとで、原因不明の「体の麻痺」が残ったからです。そこで、幼い子どもたち14人が亡くなっています。

エンテロウイルスD68による感染症は、これまで日本では、年間に数例報告される程度でしたが、2010年頃から発症例が増えています。2015年には、日本の全国各地で、原因不明の麻痺を訴える子どもの体から「エンテロウイルスD68」が検出されたことを、厚生労働省は発表しています。

エンテロウイルスD68は、免疫力の低い新生児や幼児に感染しやすいウイルスです。5月〜10月にかけて流行する傾向が高く、子どもがいるご家庭では、早めの警戒が必要です。

「気管支喘息がある子ども」は、特に注意して!

エンテロウイルスD68に感染すると、はじめに発熱、鼻みず、咳といった風邪に似た症状が起こります。「きっと風邪だろう」と判断して、病院を受診しなかったために、病状が悪化するケースが多々あります。

症状が進むと、喘息の発作、呼吸困難などを含む「肺炎」や「気管支炎」のような呼吸器疾患があらわれます。特に、気管支喘息がある子どもは、比較的早いスピードで重症化する恐れがあるため、十分な注意が必要です。

エンテロウイルスD68は、まだ解明されていない謎に包まれたウイルスです。日本では、感染した子どもの一部に、麻痺の症状があったことを国立感染症研究所や厚生労働省が確認しています。報告されている体の麻痺は、筋肉の緊張が弱くなり、自分の意志で手足や体を動かせなくなる「急性弛緩性麻痺」です。急性弛緩性麻痺との詳しい関係は調査段階とのことですが、原因がエンテロウイルスD68である可能性が高いとみています。

感染経路は「インフルエンザと同じ」

エンテロウイルスD68の感染経路は、「飛沫感染(咳、くしゃみ)」と「接触感染」です。インフルエンザと同じ経路で感染します。したがって、幼稚園、保育園、小学校などで集団感染しないよう予防が大事です。

エンテロウイルスD68は、大人がかかった場合は軽症で済むことがありますが、子どもが感染すると重症化することがあります。そのため、大人から子どもへの感染(おもに家庭内感染)にも十分な注意が必要です。

「手洗い」と「うがい」が、予防策の基本

エンテロウイルスD68の予防には、有効なワクチンは今のところありません。インフルエンザと同じで「手洗い」、「うがい」をきちんと習慣化することが最大の予防策です。赤ちゃんや子どもは、ママやパパがしっかり手を洗ってあげることが大事です。

そして、くしゃみや鼻水だけの症状でも、早めに「小児科」を受診しましょう。その際に、「体に麻痺がないか」子どもに確認するとともに、普段から子どもの様子を細かく観察しておきます。子供に風邪の症状と合わせて手足などの麻痺症状が見られたら、エンテロウイルスD68に感染している可能性があります。麻痺の症状を医師に伝え、適した対処を受けます。

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