今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『若者の禁煙治療・妊娠中の喫煙について』をご紹介させて頂きます。

若者の禁煙治療、保険適用の要件緩和で受けやすく

厚生労働省は2016年度診療報酬改定で、喫煙をやめたくてもやめられないニコチン依存症患者の禁煙治療に対する医療保険の適用要件を緩和することを決めました。

禁煙

現行の制度では、禁煙治療の保険適用には、1日の喫煙本数と喫煙年数を掛け合わせた数値が200以上となることが基準になっていますが、この条件を満たすには、1日1箱(20本)を吸う人だと10年以上かかってしまい、喫煙年数が短く数値が低くなる若年層は、治療を受けても保険適用の対象外となってしまうケースが少なくありません。
そこで同省は、この要件を満たす必要がある年齢を35歳以上に改定し、20代や30代前半の患者を免除することにしました。こうした要件緩和の背景には、自己負担が少ない保険適用による禁煙治療で若年層の喫煙を減らし、肺がんなどを予防して将来の医療費を抑制する狙いがあります。

若年者の喫煙による危険性/妊婦の喫煙による影響とは・・

喫煙を開始する年齢が若いと、喫煙期間の長期化や喫煙量の増加を招き、がんや虚血性心疾患などのリスクが高くなります。特に肺がんについては、20歳未満で喫煙を開始した場合の死亡率が非喫煙者に比べて5.5倍も高くなっています。
さらに、厚生労働省が発表した「平成10年度喫煙と健康問題に関する実態調査」によると、喫煙を開始する年齢が若いほどニコチンへの依存度が高くなるという報告も出ています。

また妊婦にとっても、喫煙は母体の健康を損なうだけでなく、胎児に対しても大きなリスク要因となります。妊婦の喫煙は、流産や早産、低出生体重児等などの発生率が上昇することも報告されており、胎児の発育に悪影響を及ぼすことが指摘されています。
環境省の大規模な全国調査によって、妊娠中に喫煙する母親から生まれた赤ちゃんは、喫煙しない母親の子に比べ出生時の体重が100グラム以上少ないことがわかりました。

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この調査では、2011年に生まれた9369人の新生児とその親のデータを元に分析されましたが、喫煙経験のない母親から生まれた男児の出生体重の平均は3096グラム、女児は3018グラムだったのに対し、妊娠中も喫煙していた母親から生まれた男児の平均は2960グラム、女児は2894グラムであることがわかりました。また妊娠初期に禁煙しても、新生児の出生体重は少なくなる傾向も見られています。

受動喫煙による健康被害リスク

しかし、妊婦自身の喫煙だけが問題ではありません。妊婦が家庭や職場などで受動喫煙にさらされると、主流煙よりもずっと多くの有害物質が含まれている副流煙を吸い込むことにより、喫煙者以上に健康に悪影響を及ぼすといわれています。

2014年3月、英医学誌ランセットに受動喫煙に関する興味深い論文が掲載されました。公共の場や職場での喫煙を規制したことにより、早産や小児ぜんそく発作の救急治療の割合が1割以上減ったという調査結果が出たのです。

この調査は、米国とカナダに加え欧州の4か国を対象に、地方自治体または国レベルでの喫煙規制の効果に関する11の公的調査から、200万人以上の子どもの記録を精査してまとめられました。これによると、喫煙規制が始まってから1年以内に、早産と小児ぜんそくの病院治療の割合が10分の1以上減ったといいます。

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喫煙規制の効果に関するこれまでの研究は、成人を対象にしたものがほとんどでしたが、今回の調査結果は、2008年~2013年の250万人の出生例と、ぜんそく発作により入院した子どもの
25万件の記録に基づいて得られた結果であり、受動喫煙の防止が妊婦や子どもの健康を守ることが初めて科学的に明らかになったといえます。

世界的に見て、先進国で屋内が全面禁煙でないのは日本ぐらいで、禁煙対策に関して日本は後進国といわれています。今回の医療保険の適用要件緩和をきっかけに、ニコチン依存症患者の禁煙治療が進み、子どもや未成年、妊婦など喫煙による健康被害を受けやすい人たちが生活しやすい環境になることが望まれます。