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今回は『忘年会を前に「自分はお酒に強い?弱い?」を調べよう!』をご紹介させて頂きます。

お酒の強い・弱いは「遺伝」で決まる

生まれつきの体質で、お酒については「飲める人」と「飲めない人」に分かれます。お酒に強い・弱いの違いが起こるのは、遺伝によるものです。アルコールを摂取したときに、肝臓はアルコールの分解処理を行います。

体内に入ったアルコールは、はじめに「アセトアルデヒド」という物質に分解されます。そして、酢酸、水と二酸化炭素に分解処理され、体外へ排出されていきます。アルコールを分解するには、いくつかの酵素が使われます。その酵素を作る「遺伝子の型」によって、アルコールの強い・弱いは決定されています。

アルコールを「分解する酵素」の遺伝子の違い?

もともと日本人は、欧米人にくらべてアルコールの分解酵素が不十分です。日本人の約40%の人が、アルコールにそれほど強くない体質だといわれています。そこには遺伝的な「分解酵素の型」が関係しています。

肝臓はアルコールの成分を無害化するために、2つの段階で分解処理を行います。1つめは、アルコール脱水素酵素(ADH)を使って「アセトアルデヒド」に分解します。2つめは、アセトアルデヒドに対し、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)を使って「酢酸」に分解することで無害化しています。

アセトアルデヒドは、有害物質で「悪酔い・二日酔いの原因物質」です。血液中にアセトアルデヒド濃度が高くなると、頭痛、吐き気、むかつきなどの症状が起こります。アセトアルデヒドを分解するALDHは、現在19種類存在しています。そのうちの「ALDH2」という酵素を作る遺伝子の型に個人差があり、型の違いがアルコールの分解処理の能力(お酒に強いか弱いか)に大きく関係しています。

あなたの「遺伝子」はどのタイプ?

ALDH2を作る遺伝子には、アセトアルデヒドを分解処理する能力の高い(お酒に強い)「N型」と、分解処理の能力が低い(お酒に弱い)「D型」があります。私たちは、遺伝子を両親から1つずつ受け継ぐため、ALDH2については、次の3つの型が存在します。

・NN型:分解処理が速く、わりとお酒に強いタイプ
・ND型:分解処理は中程度で、そこそこお酒が飲めるタイプ
・DD型:体がアルコールを受け付けない、お酒が苦手なタイプ

お酒に弱い遺伝子は「日本人や中国人」だけ?

ALDH2にD型の遺伝子を持っているのは、世界的にみても日本人や中国人などアジア東部を起源とする「モンゴロイド」だけといわれています。お酒に強い欧米人は、ほとんどの人がNN型です。もともとALDH2は、N型しか存在していませんでした。ところが今から約2〜3万年前、モンゴロイドのあいだに、遺伝子の突然変異が起こり、アセトアルデヒドの分解能力が低下した遺伝子の「D型」が発生したと考えられています。

日本各地を見てみると、NN型は北海道、東北地方の北部、九州地方の南部、沖縄に多く、お酒が強い人(いわゆる酒豪)が多いといわれる地域であることが遺伝子からも分かります。

お酒に強い・弱いは「パッチテスト」で分かる!

お酒に強いか弱いか(アセトアルデヒドの分解能力)を見極める方法は、「パッチテスト」が有効です。その精度は約90%以上といわれています。

アルコールのついた布を皮膚につけると、皮膚から吸収されたアルコールは、細胞内のカタラーゼという酵素によってアセトアルデヒドになります。

お酒に弱い人(ALDHの活性が低い人)は、生成したアセトアルデヒドをうまく分解できないため、アセトアルデヒドが蓄積して皮膚が赤くなります。一方、お酒に強い人(ALDHの活性が高い人)は、アセトアルデヒドの分解処理が速く、アセトアルデヒドはほとんど蓄積しません。そのため皮膚は赤くなりません。

パッチテストは次のような手順で行います。

(1)アルコールをガーゼなどに染み込ませる
(2)腕のやわらかい内側部分に、ガーゼを貼る
(3)そのまま、約7分間貼り続ける
(4)ガーゼをはがし、皮膚の色を確認する
(5)肌の色に変化がなければ、「NN型(お酒に強いタイプ)」と判断できる
(6)はがした直後に皮膚が赤くなれば「DD型(お酒に弱いタイプ)」と判断できる
(7)約10分後に、皮膚が赤くなれば「ND型(お酒はそこそこ飲めるタイプ)」と判断できる

忘年会や新年会など、お酒の席に顔を出す機会が増える季節です。お酒を飲むまえに、自分がどれほどアルコールを分解処理できるのか、知っておくことは大事でしょう。