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今回は『4万人に1人の難病「ウィルソン病」について…』をご紹介させて頂きます。

体から「銅」が排出されない

私たちは、日常生活において、カルシウムや鉄などのミネラルを食事から摂取しますが、そのなかには「銅」も含まれています。銅は1日に体に1mgほど必要なミネラルですが、臓器に蓄積すると障害をきたします。

本来、銅は体内に微量しか蓄積されない仕組みですが、ウィルソン病は、摂取した銅を生まれつき排出しずらい「代謝異常」の病気です。肝臓から胆汁中へ排泄されない銅は、肝臓・腎臓・脳・眼などに蓄積し、しゃべりづらさ、手足のふるえ、肝炎、歩行障害などさまざまな障害を起こします。

患者は「全国で約2000人」の難病

その病名は、1912年にイギリス・ロンドンの神経内科医であるサミュエル・ウィルソン博士がはじめて報告したことから名付けられました。欧米では比較的知られていますが、日本では認知度が低く、馴染みのない病気です。

日本での発症率は、約3~4万人に1人といわれ、現在全国に約2000~2500人のウィルソン病患者がいると推定されています。この病気は、厚生労働省によって指定難病に選定され、申請して認定されると、保険料の自己負担分の一部が公費負担として助成されます。

症状は「おもに3つ」の障害

ウィルソン病は、「常染色体劣性遺伝」という異常遺伝子が集まることによる「遺伝性」の病気です。そのため、患者の兄弟や姉妹にも、約25%の確立でウィルソン病を発症する可能性があるといわれています。一般的に、遺伝性の難病は、予防や治療が難しいことが多いのですが、ウィルソン病は治療でき、なおかつ発症予防ができる病気です。

発症すると、体に多量に蓄積した銅によって、肝障害・脳障害・眼障害 を引き起こすのが特徴です。
<肝障害>
多くの患者は、小児期に肝障害として発見されます。疲れやすい、血が止まりにくい、貧血が起こりやすい、皮膚や白目が黄ばむ、食欲が低下する、などの肝症状が見られます。治療が遅れると、肝障害は徐々に進行し、肝硬変となるでしょう。

<脳障害>
ウィルソン病の脳障害(神経障害)は、思春期からみられることが多く、初期は、呂律が回らない、手足がふるえる、などの症状がみられます。進行すると体が思うように動かなくなり、歩行障害があらわれることがあります。また、記憶力の低下、精神の不安定、無気力、うつ状態の症状を示すようになります。

<眼障害>
多量の銅が角膜の周囲に溜まることで、黒目の周りの色が「青緑色」や「黒緑褐色」に見えます。これは「カイザー・フライシャー角膜輪」というウィルソン病の特徴的な症状です。角膜輪が明確にあらわれるのは思春期を過ぎたあたりです。

治療は「薬の服用」と「食事制限」

治療は一般的に、D-ペニシラミン(商品名:メタルカプターゼ)、塩酸トリエンチン(商品名:メタライト)、亜鉛薬などの飲み薬を服用します。D-ペニシラミンと塩酸トリエンチンは、「Cu(銅)キレート剤」と呼ばれるもので、銅と結合し、体から銅の排泄を促す作用があります。亜鉛薬は、腸での銅吸収を抑える薬です。

また、銅を多く含む食品(貝類、甲殻類、豆類、レバー、穀物、チョコレート、ココアなど)を摂取しない食事制限(低銅食といいます)が必要になるでしょう。

遺伝性の病気のため、生涯にわたって薬の服用や食事の制限などを続けることになりますが、早期発見・早期治療を実現することで、一般の人と変わらない生活を送ることができます。

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