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今回は『マーガリンなどに含まれる「トランス脂肪酸」ってなに?』をご紹介させて頂きます。

トランス脂肪酸とは、いったい?

食品の三大栄養素は
(1)タンパク質
(2)炭水化物
(3)脂肪です
脂肪はもっとも効率のよいエネルギー源といわれる大事な栄養素です。その脂質を構成しているのは「脂肪酸」と呼ばれる成分です。

トランス脂肪酸は脂肪酸の一種で、おもに植物性の油脂を加工・調理するときに、原子の結びつきが変化して発生する化学物質です。おもに加工食品に使用されます。
トランス脂肪酸を使うと、日持ちがするというのは大きな理由です。

多くの「加工食品」に含まれている

さらに、トランス脂肪酸を使って揚げ物を調理すると、カリッとした仕上がりになります。そのため、ファーストフードやファミリーレストラン、そしてお惣菜売り場では、便利に使われることが多くあります。

日本では他にも、サラダ油、マーガリン、ショートニング、ビスケット、スナック菓子、アイスクリーム、チョコレート、コーヒーフレッシュ、ケーキ、ドーナツ、食パン、菓子パン、マヨネーズ、ドレッシング、カレーやシチューのルー、カップスープ、インスタント麺、牛肉、チーズ、フライドポテト、冷凍食品などに含まれています。

心臓や血液の病気にかかる「リスクが高い」

トランス脂肪酸は、欧米では「狂った油」や「食べるプラスチック」などとあだ名されています。それは、健康への影響が大きい物質であることが分かっているからです。

トランス脂肪酸を長いあいだ摂取すると、血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増加し、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を減少させることが指摘されています。

その結果、心臓病のリスクは高まります。EFSA(欧州食品安全機構)では、トランス脂肪酸の摂取と心臓疾患の発症についての関係が高いことを唱えています。WHO(世界保健機関)では、「心臓血管系の健康増進のため、食事からのトランス脂肪酸の摂取を極めて低く抑えるべき」とのメッセージを発表しています。

他にも、脳梗塞、前立腺がん、乳がん、糖尿病、メタボリックシンドローム、不妊症、子宮内膜症、うつ病、認知症、発達障害に影響があると指摘する研究機関が多数あります。

アメリカは禁止、中国は表示義務、さて日本は?

食品メーカーなどは、過剰に摂取しなければ影響は少ない、との 見解を述べていますが、アメリカでは、FDA(食品医薬品局)がトランス脂肪酸を含む油脂の食品使用について、2018年6月から使用と販売の禁止が決定されています(とはいっても、一部の製法で作られるトランス脂肪酸は禁止されないようです)。そして、アメリカはトランス脂肪酸は「安全な物質でない」と認めたことになります。

その他、カナダ、スイス、デンマーク、シンガポールなどは、トランス脂肪酸が含まれる量を規制する措置を実施しています。また、中国、韓国、台湾などは、トランス脂肪酸がどれだけ含まれているかの表示を義務づけています。そしてイギリス、フランス、オーストラリアは、自主的にトランス脂肪酸を低減する措置をはじめています。

私たちが「もっと考える」こと

さて、日本はどうでしょう。アメリカやヨーロッパにくらべ、日本人はトランス脂肪酸の1日の摂取量は「7分の1程度と少ない」というデータを示し、特に取り締まりを行っていません。農林水産省も、日本人のWHOが勧告する基準値を下回っていると発言しています。

政府も企業も「日本人の食生活では健康への影響は小さい」と述べています。しかし、「影響は小さい = 摂取して大丈夫」という理屈にはならないでしょう。私たちは、化学物質をはじめとする添加物の摂取について、自らの判断が求められる時代といえそうです。そのためには、たくさんの情報を読み、そして健康についてもっと考えることが必要です。