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今回は『胎児発育不全(FGR)、その原因とは?!』をご紹介させて頂きます。

お腹の赤ちゃんが育たない?

お腹のなかで赤ちゃんが十分に育たず、発育が遅れることを「胎児発育不全(FGR:Fetal Growth Restriction )」といいます。女性は妊娠すると、定期的に産婦人科や助産院に通って「妊婦健診」を受けます。妊婦健診は、妊娠が順調であるかを見るため、血圧・体重測定・尿検査・超音波を使って赤ちゃんの状態を確認します。

なかでも推定体重の算出は重要で、週数ごとに「胎児体重基準値」があります。赤ちゃんの推定体重が、妊娠週数ごとの基準値と比較して低いと「週数のわりに、赤ちゃんが育っていない」として、医師からは胎児発育不全の疑いが持たれます。

しかし、推定体重が基準値に満たなくても健康に育つ赤ちゃんはたくさんいます。ですから、医師は羊水の量、赤ちゃんの腹囲、胎盤・臍帯(さいたい:へその緒)の状態なども確認したうえで、総合的に判断します。

原因は「3つ」に分類される

胎児発育不全は、すべての妊娠の約8~10%の割合で起こるといわれています。胎児発育不全の赤ちゃんは、体が小さく臓器が未発達であることが多いため、正常に育っている赤ちゃんより、経過を注意深く観察することが必要です。お母さんの状態によっては、入院することがあります。

発育不全はさまざまな状態がありますが、胎児発育不全を引き起こす原因は、大きく次の3つに分けられます。原因を取り除くことで、胎児発育不全の改善につながることもあります。

(1)胎児に原因がある場合
妊娠初期から妊娠中期にかけて、胎児の臓器が形成されるときに、染色体の異常や感染症などによって、胎児が原因で発育不全が起こることがあります。胎児発育不全の約10~30%を占めます。

(2)母体に問題がある場合
妊娠中期以降、お母さんの病気や生活習慣などによって赤ちゃんの発育が遅れることがあります。お母さんが妊娠高血圧症候群や多胎妊娠などの病気にかかったり、喫煙、アルコールの過剰摂取によって、赤ちゃんへの栄養供給が妨げられる状態です。

(3)胎盤やへその緒に問題がある場合
胎盤になんらかの障害があり、胎児にうまく栄養がいかない状態です。胎盤機能不全、胎盤形態異常、胎盤付着異常などが引き金となって発症します。妊娠中期以降で発症し、胎児発育不全の約70%を占めます。

とにかく「心身ともに安静」に過ごす

胎児発育不全の赤ちゃんを、正常な大きさまで成長させる方法は見つかっていません。そして、胎児に原因がある場合は、明らかな治療法がないのが現状です。母体や胎盤に原因がある場合は、原因を取り除くことで胎児の発育に期待が持てます。

しっかりと赤ちゃんに栄養が供給できるよう、お母さんはとにかく心身ともに安静に過ごし、なるべくストレスのない生活を送ることが大切です。喫煙やアルコールの摂取はただちにやめましょう。母体や胎児が栄養不足に陥っているときは、食事の改善や点滴によって栄養補給をすすめられるでしょう。

基本的には、赤ちゃんが元気な状態でいるかぎりはお母さんのお腹のなかで育てます。しかし、赤ちゃんの成長があまり見られないときは、出産予定日前でも、赤ちゃんの状態が悪くなるまえに出産をすることがあります。そのため、産婦人科医は、最適な分娩のタイミングを見極めることが大事です。