今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『おたふく風邪の基礎知識』をご紹介させて頂きます。

おたふく風邪は、1~2週間で治る病気ですが、大人がかかると重症化することがあります。また「一度かかると二度とかからない」は、おたふく風邪には当てはまりません。ごくまれなケースですが、突然死を招くことも報告されています。

ウイルスに感染して発症

おたふく風邪の正式名は、流行性耳下腺炎といいます。患者の多くは小さい子供です。全患者の60%は3~6歳です。
原因は、ムンプスウイルスといいます。このウイルスに感染した人に接触したり、感染者のくしゃみなどを受けたりして感染が広がります。感染して2~3週間潜伏してから発症します。
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耳の下が腫れて発熱も

特徴的な症状は耳の下が膨れることで、これは唾液腺が膨張して生じます。膨れたところを指で押すと痛みが走ります。これを圧痛といいます。
またつばを飲み込もうとすると喉が痛む嚥下痛や、発熱も代表的な症状です。こうした症状は大抵は1~2週間でおさまります。
なのでおたふく風邪は、原則は恐くない病気ですが、例外的に猛威を振るってきます。
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ワクチンは2回打とう!!

国内では1989年まで3~4年周期で大流行が起きていました。しかし1991年にMMRワクチンという予防薬が開発され、発症数は激減しました。しかしこのワクチンには副作用が多かったため1993年に中止され、再び流行を繰り返すことになります。2001年には患者数が25万人を数え、過去10年間で最多となってしまいました。
現在のワクチンは副作用が少なく、医師は1歳のときに1回、3歳のときもう1回接種することを推奨しています。

治療法はない

おたふく風邪を発症してしまうと、治療法はありません。症状を弱めることで体力の回復を待ちます。発熱には鎮痛解熱剤が処方されます。脱水症状がみられると点滴が処方されます。
おたふく風邪にならないようにするには、ワクチンが唯一の手段といえるでしょう。ただこのワクチンも、接種者の1~3%は残念ながら発症してしまいます。
「おたふく風邪は1度かかると2度とかからない」というのは間違っています。正しくは「1度かかると2度目はかかりにくい」です。ですので、1度おたふく風邪を経験している人も、お住まいの地域で流行したときは注意する必要があります。
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恐い合併症

特に大人は、おたふく風邪の合併症に注意する必要があります。髄膜炎、睾丸炎、卵巣炎、難聴、膵炎が主な合併症です。

髄膜炎

髄膜は脳の表面を覆っている膜です。髄膜は細菌やウイルスが侵入すると炎症を起こします。けいれんや意識を失うこともあります。

睾丸炎

男性の生殖器である睾丸が腫れる病気です。睾丸が痛み、高熱もみられます。

卵巣炎

卵巣炎では、下腹部が激しく痛みます。吐き気、嘔吐、出血のほか、おりものが増えることもあります。高熱は卵巣炎でもみられます。

難聴

おたふく風邪は耳の近くに大きな症状が出るので、難聴が起きることがあります。おたふく風邪の患者の1%ほどが難聴を発症します。
治療法がほとんどなく、ステロイドを投与することもありますが、効果はそれほど高くないそうです。
また、おたふく風邪を発症しやすい小さい子供は、耳の不調を訴えることがうまくできません。それで親も、おたふく風邪が治るとそれで安心してしまいます。それで耳のケアができないまま悪化して、いつの間にか聴力を失っているという残酷なケースも報告されています。
ただ耳の治療に着手したとしても、おたふく風邪による難聴は治りが悪く、障害として残ってしまうことがあります。

膵炎

膵炎が発症すると、腹痛、悪心、嘔吐、下痢といった症状が出てきます。

突然死

大人のおたふく風邪では、ごくごくまれにですが、突然死を招くことがあります。おたふく風邪の症状ではあまりみられない、胸痛や頻脈が出て、次第に呼吸が困難になります。このような心臓の症状は、おたふく風邪発症の1~2週間後に出てきます。これを放置すると突然死することもあるのです。

まとめ

おたふく風邪の「治療」では、合併症への警戒がとても重要になります。特に大人で心臓に持病を抱えていたり糖尿病の人はリスクが高まるので注意してください。

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