今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『皮膚の病気の方、ウサギを飼っていませんか?』をご紹介させて頂きます。

ウサギやハリネズミを飼っている人に、これまで日本にいなかった白癬菌(はくせんきん)が見付かっているそうです。白癬菌は水虫の原因として知られていますが、この「新しい白癬菌」は、水虫の症状に加えて、抜け毛も引き起こします。
ペットとの付き合い方を見直す必要がありそうです。

ペットと一緒に輸入してしまった…

新しい白癬菌はアルトロデルマ・ヘンハミエといいます。長い名前なのでこの記事では「新しい白癬菌」と呼びます。新しい白癬菌は、国内では1990年代に確認されたばかりです。ペットを輸入する際に、白癬菌まで輸入してしまったのです。現在は特に、輸入ウサギと輸入ハリネズミに注意が必要です。
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手の平から顔面、頭部に拡大

9歳の女性患者の症例を紹介します。患者は2カ月ほど手の平の湿疹に悩まされて皮膚科を受診しました。抗菌薬やステロイドを処方しましたが効果がなく、湿疹は顔面や頭部にも広がりました。
そこで医師が症状が出ている皮膚を採取して調べたところ「新しい白癬菌」が見付かったのです。この患者はウサギにもハリネズミにも接触していることが分かりました。
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人を好く菌と動物を好く菌

白癬菌は、人間に感染するヒト好性菌と、動物に感染する動物好性菌があります。もちろん「新しい白癬菌」も動物好性菌です。その名の通り「人を好く性格の菌」「動物を好く性格の菌」ということですね。
動物好性菌は本来、滅多に人に感染するものではありません。また、感染しても症状が軽いため、無視されてきました。
しかし最近は、ペットとキスしたり一緒に寝たりと、ペットと濃厚接触する人が増えてきました。それで動物好性菌が人に感染することが多くなったのです。感染頻度が高くなると重い症状も目立つようになりました。
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誤診されやすい病気

現在、国内で見つかっている多くの白癬菌はヒト好性菌で、足にできる水虫として発症しています。通常の水虫は、足の指の間や股間にできます。
しかし「新しい白癬菌」などの動物好性菌による症状は、顔や首など、肌が露出する部分にできやすいのです。これは皮膚科医にとって、珍しい病気になります。
つまり「新しい白癬菌」について知らない皮膚科医も少なくなく、その場合、「とびひ(伝染性膿痂疹)」や「湿疹」と誤診してしまうことがあるのです。

小学2年生の女児は、うなじや頭部の皮膚に赤い点(発赤)ができたことから、皮膚科を受診しました。その皮膚科医は、アレルギー性皮膚炎と診断し、そのための治療に取り掛かりました。しかし一向に改善しません。
女児は医療機関を変えました。そこの皮膚科医は、女児の皮膚を採取して調べ、そして動物好性の白癬菌が見付かったのです。この女児は猫を飼っていました。
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触れ合いコーナーに注意を

ある皮膚科医は、最近動物園などで増えた、動物と実際に触れ合うコーナーに注意する必要があると指摘しています。ここが感染源となっている可能性があるのです。
ただ、過度に反応する必要はないそうです。動物好性菌であっても、白癬菌であることが特定できれば、治療はそれほど難しくないからです。
ただ、皮膚の症状が出たときに、医師にどんな動物とどこでどのように接触したかを説明できると、診断が早く付き適切な治療を受けることができます。

ペット対策は1~2万円

自宅のペット対策としては、ペットに白癬菌を除去する治療を受けさせることができます。動物病院で治療でき、費用は1~2万円ほどです。これで家庭内感染がある程度防げます。
ペットからの感染の場合、濃厚接触していなくても、ペットから抜け落ちた毛から感染することもあります。ペットの治療は早めに済ませましょう。
(資料:北里大学北里研究所病院皮膚科)

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