今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『「若いママさん必読!赤ちゃんの突然死を防げ③飲み込みの恐怖」』をご紹介させて頂きます。

「シリーズ赤ちゃんの突然死を防げ」ではこれまで「乳幼児突然死症候群」と「窒息死」をみてきました。最終回は、「飲み込みの恐怖」と題しました。
もし赤ちゃんにも「仕事」があるとすれば、それは成長することです。そして成長には、食べ物を飲み込む動作が欠かせません。しかしその飲み込みが、赤ちゃんを命の危機に陥れることがあるのです。
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たった1粒のアーモンドで

関東のある県で2013年に起きた事故です。14歳と10歳の姉妹が、自宅でゲームをして遊んでいました。両親たち家族はそのとき留守でした。妹がゲームをしながら1粒のアーモンドを口に入れた瞬間、ものすごい勢いで咳き込みました。咳はやまず、しばらくすると妹はけいれんし始めました。姉はどうしてよいか分からず、近所の家に助けを求めました。
救急車が到着し救急隊員が妹に声をかけたところ、妹はあえぎながらも自分の名前を言えました。しかし病院に搬送されて間もなく脳死状態になり、3カ月後に亡くなってしまいました。
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「誤嚥するもの」と覚えておいて

妹は、普通にアーモンドを口の中に入れただけでした。つまり、わざと大量に食べたり、空中に放り投げて口の中に入れたりといった、ふざけた食べ方はしていませんでした。
ただ、口の中で細かく噛み砕く前に、丸ごと喉の中に入ってしまっただけなのです。また残念ながら、そのまま喉にとどまってしまい、胃の中に落ちることがなかったのです。

誤って飲み込むことを「誤嚥(ごえん)」といいます。飲み込む動作のことを「嚥下(えんげ)」といいます。
人は意識して早く嚥下することも、嚥下を遅らせることもできます。しかし食べなれたものを食べているときは、何も意識せずに食物を喉の奥に送り込んでいます。人は反射的に嚥下することができるのです。それは口の中に「センサー」があるからです。
食べ物を咀嚼して、安全に飲み込めるくらいに小さくなったとセンサーが感じ取ったら、自然に舌が動いて食べ物を喉に送り届け、嚥下していきます。

しかし小さい子供は、この「反射的な嚥下」や「自然な嚥下」をスムーズに行えません。「子どもは誤嚥するもの」と覚えておいてほしいのです。
この事故の場合、アーモンドの飲み込みから救急車の到着まで時間があったことや、救急車の到着時には意識があったことから、時間の経過とともに喉に詰まったアーモンドが水分を吸収して膨らみ気道をふさいだとみられています。
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2センチの団子…

2010年の事故で犠牲になったのは、小学1年生の男の子でした。給食の汁物に入っていた団子を喉に詰まらせました。教師がすばやく背中を叩きましたが、吐き出せませんでした。男の子を逆さにもしましたが団子は出てこず、心肺停止に陥りました。搬送先の病院で蘇生できたものの、意識は戻りませんでした。いわゆる植物状態のまま3年後に亡くなりました。
団子は直径2センチでした。両親は大きな団子をそのまま出した学校側に責任があるとして訴訟を起こしました。学校側は「予測困難だった」と争う姿勢を示し、裁判は継続中です。

教訓が生きず…

この事故は、栃木県で起きたのですが、この事故からわずか2年後に、同じ栃木県内の別の市の保育園で、2歳の女児がフルーツポンチに入っていた白玉を喉に詰まらせて死亡する事故が起きました。
事故を起こした保育園を管理運営する市は、同じ栃木県内の別の市で起きた小学1年生の事故を知らなかったそうです。事故の教訓が、まったく生かされなかったのです。
この事故を取材した朝日新聞は「保育園は『小学1年生の事故を知っていたら白玉は使わなかった』と述べている」と報じています。
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食物アレルギー、鶏卵、そば、ピーナッツ

食物に対するアレルギー反応は、大人ですら激しいショック症状を引き起こします。赤ちゃんのように弱い存在だと、すぐに命に関わる事態に進んでしまいます。
最も大きなショック症状を引き起こす食材は、鶏卵です。鶏卵はショックが大きいだけでなく、アレルギーを持つ人の数が最も多いのです。
また、そば、ピーナッツ、木の実もショックが大きい食べ物です。そのほか、小麦も牛乳も「危険食物」になりえます。

恐がるのはNG、迷わず検査を

ただ気を付けたいのは、アレルギーを持っていない子供には、食物アレルギーの危険性は「ゼロ」であるということです。また、1つの食物にだけアレルギー反応を示すのに、そのほかの食べ物も禁じてしまっては、子供の発育に大きな影を落とすことになります。

また、食物アレルギーを勉強しすぎた親の中には、「子どもに食べ物を与えるのが恐い」といって離乳食を遅らせることがあるそうです。これもダメな対応です。
医者がすすめるのは、「耳かき1すくい分を与えて観察する」という方法です。それで呼吸状態や、肌荒れなどを見るのです。
自宅でこのような観察をすることが恐い場合、小児科にかかってください。やはり医療機関によるアレルギーチェックが一番安心です。

まとめ

食べることは命のために欠かせない行為です。しかしそもそも食べ物は、人の体にとっては「異物」なのです。異物に慣れることが、成長の第一歩といっても過言ではないでしょう。ママとパパは、常に緊張感を持ちながら、わが子が異物に慣れる様子をしっかり見守ってください。
(参考資料:朝日新聞2016年8月29日の記事など)