今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『「若いママさん必読!赤ちゃんの突然死を防げ②窒息死のメカニズムを知って」』をご紹介させて頂きます。

赤ちゃんが突然死ぬ――これほどつらい悲劇はありません。赤ちゃんはとても弱い存在なので、ちょっとしたことで命を落とす危険が高いのです。しかし中には、死亡原因がまったく分からないケースや、細心の注意を払っても死を遠ざけることができなかった事例も多く存在します。
原因がまったく分からない突然死は「乳幼児突然死症候群」といい、前回の第1回でみてみました。
「赤ちゃんの突然死を防げ」の第2回目は、窒息死についてです。
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うつぶせ寝は危険

赤ちゃんの窒息死で気を付けなければならないのは、うつぶせ寝です。関西で実際に発生した事故を紹介します。
午前4時、母親がミルクを与えようと、当時生後4カ月だった男の子を抱き上げたとき、すでに冷たくなっていました。顔は紫色で、息もありません。脈も打っていません。母親は大声を上げ、パニック状態に陥りました。その騒ぎに夫が目覚め、すぐに救急車を呼びましたが既に亡くなっていました。
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2週間前にできるようになったばかり

男の子は2週間前から寝返りが打てるようになっていました。その日、母親は午後8時30分ごろに男の子を「あおむけ」で寝かしました。子供はリビングのベビーベッドに寝かせ、両親はその横に布団を敷いて寝ていました。
普段は母子が寝付いた後も、夫が2~3時間起きていて様子をうかがっていました。しかしその日夫は、自身の体調がすぐれないことから睡眠導入剤を飲んで、母子とほぼ同時刻の午後8時30分すぎに眠りました。
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「あおむけへ」が難しい…

母親が午前4時に赤ちゃんを抱きかかえようとしたとき、赤ちゃんは「うつぶせ」で、両手を握って万歳をする体勢になっていました。死亡解剖した医師は、窒息死と鑑別し、死亡時刻は午後9時と推定しました。
つまり、赤ちゃんは両親が眠りについてから間もなく、覚えたての寝返りを打ったのです。それで顔面を寝具に押し付けた形になり、息ができなくなってしまったのです。
赤ちゃんの場合、あおむけからうつぶせへの寝返りに比べて、うつぶせからあおむけへの寝返りはかなり難しいのです。
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寝相と睡眠の深さが原因で

こんな事例もありました。小学生の兄と弟の間で起きた事故です。寝付いたときは、兄と弟が並んでいたのですが、発見時、兄が弟の顔の上に寝ていたのです。弟は死亡していました。兄も弟も、その日の昼間、外で活発に遊んでいました。それで兄は、寝相が悪くなっても気が付きませんでした。弟も、息苦しさで目覚めることはありませんでした。

小さな子供の窒息では、意識を失ってもすぐに蘇生できれば死を免れます。しかし、意識が戻らず何年もいわゆる植物状態になることも数多く報告されています。
ある小児科医は「子どもの寝相の悪さは、親が想像する以上です。さらに2段ベッドの上から落ちても床で寝ていることがあるほど、子供の睡眠は深いです。複数の子供を近くで寝かせるときは十分注意してください」と話しています。

NGは「やわらかい布団」「添い寝」「顔が挟まれる」

東京慈恵医大が窒息死をした0歳児44人を調べたところ、死亡時に大人用のやわらかい布団に寝かされていた赤ちゃんは7割に達しました。赤ちゃんにとってやわらかい寝具は「泥」のようなもので、一度もぐりこんだらなかなか抜け出せないのです。
またきょうだいだけでなく、親の添い寝でも窒息事故が起きています。亡くなった44人のうち、実に3割が添い寝による事故でした。
また、ベビーベッドの柵とマットレスの間に顔を挟み、窒息死した事例もあります。

1分で意識を喪失

44人中、9割が生後6カ月以内の赤ちゃんだったことも分かりました。寝返りを覚えたあたりが最も危険なのです。
また、子供が小さければ小さいほど、短時間で酸欠状態に陥ります。「赤ちゃんは1分呼吸をしないだけで意識を失う」ということを覚えておいてください。
また、うつぶせ寝の状態だと手足を自由に動かしにくくなるため、「むずがる」という、赤ちゃんにとって唯一の情報発信ができなくなります。それで発見が遅れるのです。

まとめ

赤ちゃんの窒息死をゼロにすることは難しいでしょう。両親がどんなに注意をしていても、避けられない場合があります。しかし、窒息死のメカニズムを知っておけば、事故を起こす確率が格段に減ります。ここまで読んでいただいた方には、ぜひこの記事を赤ちゃんがいる親に紹介してあげてください。
(参考資料:朝日新聞2016年8月30日記事)