今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『接種した方がいいの? しない方がいいの?「日本脳炎ワクチン」』をご紹介させて頂きます。
日本脳炎ワクチンについては、情報が錯綜しています。ワクチンは、日本脳炎という恐い病気を予防する「特効薬」のような存在ですが、以前のワクチンに重大な副作用があることが分かりました。その後ワクチンが改良され、いまでは厚生労働省が接種を推奨しています。

しかし、一度「副作用がある」とされた注射を、自分の子供に打つことに抵抗がある親もいるでしょう。小児科では丁寧な説明をしてくれはずですので、注意事項をじっくり聞いた上で接種するかどうか決めてください。
ここでは、情報が錯綜した経緯の他に、「日本脳炎」と「ワクチン」の基本的な知識について紹介します。
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「本来の病気」と「薬の副作用」の重さ

日本脳炎ワクチンは、「かつてのワクチン」と「現在のワクチン」では別物である、と覚えてください。
重大な副作用である急性散在性脳脊髄炎を引き起こす可能性があるのは、「かつてのワクチン」です。
急性散在性脳脊髄炎は、中枢神経の細胞を壊す病気です。ワクチン接種後、数日から4週間の潜伏期間を経た後、頭痛やおう吐、発熱などを発症します。ステロイド投与などにより、完治することが期待できます。死亡する危険はほとんどありません。

一方、日本脳炎の死亡率は15%と、とても恐い病気です。つまり、「本来の病気」である日本脳炎と、「副作用」の急性散在性脳脊髄炎では、圧倒的に日本脳炎の方が重いのです。
しかし、急性散在性脳脊髄炎も、小さな病気ではありません。「日本脳炎のワクチンによって引き起こされる急性散在性脳脊髄炎」は死亡の危険はありませんが、「別の病気を経由して発症した急性散在性脳脊髄炎」は死亡する可能性があるのです。

そこで厚生労働省は2005年、医療機関などに対し「微妙な表現」の注意を発しました。「定期予防接種としての日本脳炎ワクチン接種の積極的な勧奨を差し控えるように」と勧告したのです。
ワクチンを禁止はしないが、定期予防接種としてはおすすめしないで、ということです。さらに「積極的な勧奨」はNGだが、「消極的な勧奨」はNGではないということです。
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ワクチンを改良し安全に!

その後、日本脳炎のワクチンは改良されました。どのように改良されたかを説明する前に、そもそもワクチンとは、について解説します。

ワクチンは、ウイルスそのものです。ウイルスを体内に入れれば、重大な病気が発症しそうなものですが、ワクチンとして注射するウイルスは、死んだウイルスです。人工的にウイルスを殺し、それを体内に入れるのです。
なぜ死んだウイルスを体内に入れるかというと、体に「こういう物質が体の中に入ってきたら攻撃するように」と覚え込ませるためです。体が1度、そのウイルスを攻撃する方法を身に付けると、次に本物の生きの良いウイルスが体内に入ってきたときに、確実に撃退してくれるのです。これを「抗体ができた」といいます。

日本脳炎ワクチンは、「ある細胞」を使って作ります。副作用を起こした「かつてのワクチン」は、ネズミの細胞を使っていました。そこで、人やネズミ以外の動物の細胞を使って日本脳炎ワクチンを作ったところ、副作用が起きないことが分かりました。「現在のワクチン」は急性散在性脳脊髄炎という副作用を起こさないワクチンなのです。

厚生労働省は2013年に、18歳の人に対して積極的に「現在の日本脳炎ワクチン」の接種をすすめ、さらに2014年には従来通り3歳児にも積極的な接種をすすめるようになりました。慎重には慎重を期して、体力のある18歳から先に解禁したんですね。
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日本脳炎とは

日本脳炎は、ウイルスに感染することで発症する病気です。ウイルスは豚の体内で増え、豚の血を吸った蚊が人を刺すことで人に感染します。人から人に感染することはありません。

日本脳炎の症状は、高熱、頭痛、嘔吐から始まります。その後、意識を失ったり、けいれんを引き起こしたりします。脳が炎症を起こし、体調のコントロールができなくなるのです。
日本脳炎の発症者の死亡率は15%ほどですが、脳の炎症まで進むと死亡率は40%まで跳ね上がるという研究結果もあります。さらに、亡くならなくても神経に後遺症が残ることがあります。
なので、ワクチンが重要なのです。

まとめ

日本脳炎ワクチンの問題は、「正しい情報とは」を考えるよいきっかけになると思います。病気に関する知識は、厚生労働省や大学病院などが発信する情報で確認するクセを付けてください。

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